2007/11/12

  2007年11月12日(月)
  それでも株価は上がる。
  円は独歩安から独歩高へ。
  日本株は独歩安から独歩高へ。

(一)ヘッジファンドのヘッジ売り。

(1)ニューヨークダウは、D点(10月22日の安値13,407ドル)を下回った。しかし史上最高値を記録したC点(10月11日14,198ドル)からの下げ幅は8%に過ぎず、一番底のB点(8月16日12,517ドル)を500ドル上回っている。現在は依然として2番底を探る課程だろう。
(2)しかし2番底を確認すれば本格的上昇を開始する可能性が強い。今回は本格的反騰の条件を探りたい。
(3)先週末の急落局面では、下げの主役が金融関連株からグーグル、アップル等のハイテク株やダウ構成の大型株に変化した。
(4)ヘッジファンドの決算は12月に集中している。解約の受付は45日以前だから、先週末に解約に備えた大口売りがピークに達し、高値圏を維持していた大型株に利食い売りが集中したと思われる。
(5)先週末には全面高のアジア市場で東京市場が独歩安を演じた。アジア株で運用するヘッジファンドが解約に備えたヘッジ売りを東京市場に集中した可能性がある。
(6)東京はニューヨークに次ぐ世界第2位の巨大市場である。流動性の低いアジア市場では大口売りがこなせないから、最近ではヘッジファンドのヘッジ売りが東京市場に集中する傾向が常態化し、その結果として先物市場に外国人売りが積み上がっている。
(7)もし先週末の急落の主役がヘッジファンドであったとすれば、大口売りは今週の前半で終わる。その後は新年度に向けて買い越しに転じる可能性がある。

(二)核心に迫る米欧の金融政策。

(1)サブプライムローン問題はサブプライム関連ファンドを保有する金融機関が売却してしまえば赤字額が確定し、決着がつく。
(2)しかしサブプライム関連ファンドに買い手かつかないために、気配値が実態価値を下回って値下がりし、評価損が拡大一途をたどっている。
(3)米欧の中央銀行は協力して過剰流動性を放出しているが、その資金はサブプライム関連ファンドを避けて石油や金に向かい、商品相場を暴騰させた。
(4)しかし米政府の対策もまたサブプライム問題の核心に迫りつつある。
(5)第1に、ポールソン財務長官は金利の高いサブプライムローンを金利の低い住宅ローンに借り換えさせるための財政支援に乗り出した。
(6)第2に、財務長官の肝いりで大手銀行は11兆円の資金を組成し、サブプライム関連ファンドを直接買い取る体制を構築し、その稼働時期が近い。
(7)第3に、バーナンキFRB議長は政府直轄の住宅ローン会社(ファニーメイ)に民間金融機関の住宅ローンを買い取らせる方針を固めた。これで住宅ローン市場に潤沢な資金が行き渡り、住宅価格が安定する。
(8)株価急落の主役であった金融株が抵抗力を強めている。メリルリンチやシティバンクはサブプライム関連の評価損拡大を発表して株価が急落したが、モルガンスタンレーは悪材料出つくしで株価が上がった。
(9)サブプライム問題の解消にはなお時間が必要であるが、株価は解決を先見して年内にも底入れする可能性がある。

(三)円高、日本株高へ、逆転が近い。

(1)世界中の株式市場で日本が独歩安を続けている。
(2)全面高のアジア市場でも、東京市場が独歩安を演じている。
(3)日本株独歩安の最大の原因は円安である。円安の原因は金利安である。過去2年間に日本と欧米の金利差は1%から5%に拡大した。
(4)日本人は高利回りを求めて円を売って外国株を買った。外国人は円安による資産の目減りを防ぐために日本株を売った。これが日本独歩安の背景である。
(5)しかし直近の為替市場で明らかな変化が現れた。ドルが急落したが、円はドル安に逆行したばかりか、すべての通貨に対して上昇した。円売りのキャリートレードは窮地に追い込まれた。
(6)欧米は当面、金利を引き上げるわけにはいかないが、日銀総裁は公定歩合早期引き上げの意欲を鮮明にしている。内外の金利差が縮小すれば、円は本格反騰に転じる。円の独歩安が終われば、日本株の独歩安も終る。
(7)円相場の歴史を見れば「円安は株安」「円高は株高」をもたらす。
(8)円高になれば輸出企業の利益が減るという論評は間違っている。日本企業は円高時代に超高度成長を達成し、多国籍化を進めた。今日では中小企業でもアジアに生産拠点を持っている。多国籍化時代の企業にとって、為替はリスクとならない。

(四)金融相場は理想買い。

(1)金融不安が続く限り、欧米の中央銀行は過剰流動性を供給するから、世界の株価は下がりそうで下がらない。現在の株式相場は過剰流動性が支える「金融相場」である。
(2)金融相場では業績よりも理想を買い、個別材料に人気が集中しやすい。
(3)端的な例が石油であり、金である。今日では商品や不動産も金融市場で価格が決まる。
(4)それゆえクラブ9は中小型材料株と新興市場の成長株に目標を絞って来たが、残念ながら先週はそろって深押しした。それでも調整が一巡すれば再騰に転じると思う。

(五)日本株は独歩安から独歩高へ。

(1)アメリカはサブプライム問題を発生させた張本人であるが、株価は8%しか値下がりしていない。これに対してサブプライム問題の打撃が最も少ない日本の株価が世界で最も値下がりした。
(2)この不条理の原因は円安にある。円安を招いた責任は日銀のゼロ金利政策にある。
(3)それでも私は、日本株の独歩安は最終局面に達したと思う。
 第1に、内外の金利差が拡大から縮小に転じ始めた。
 第2に、これを先見して独歩安を演じていた円は独歩高に転じている。
 第3に、日銀は公定歩合引き上げの意欲を鮮明にして来たから、円高は一時的な現象ではない。
(4)株式市場を取り巻く環境は世界的に見れば悪くない。
 第1に、アジア経済が好調を維持している。
 第2に、金融市場の資金量は増勢一途である。
 第3に、円高傾向が進むにつれて、外国人投資家は日本株の投資比率を上げる。
 第4に、ヘッジファンドは今週を境にウリからカイに転換する可能性が強い。