2007/10/29

  2007年10月29日(月)
  続・それでも株価は上がる。



(一)NYダウは2番底形成、最高値更新へ。

  参照「チャート1、ニューヨークダウの日足」。
(1)チャート1を見れば、予想したとおり先週に2番底を入れた可能性が高い。経過は次の如くである。
   <A点・7月17日>14,021ドル。史上最高値を記録。
   <B点・8月16日>12,517ドル。1番底を形成。
   <C点・10月11日>14,198ドル。史上最高値を更新。
   <D点・10月22日>13,566ドル。2番底を形成。
(2)D点を2番底と見た理由は長い下ひげである。底入れを示す下ひげは24日、25日にも点灯した。1週間のうちに3度も下ひげが出て、週末は高値引けとなったから2番底を形成した可能性が高い。
(3)嵐のような弱気論をはね返した背景には、圧倒的な強気の条件が台頭したと考えるべきだろう。
(4)私はその強気の条件こそ、ジャブジャブの過剰流動性だと思う。すなわち、金融政策と財政政策がサブプライム不安に打ち勝ったのである。
(5)私の2番底説が正しければ、ニューヨークダウは本格的な上昇軌道を回復し、史上最高値を短期間に、大幅に更新するだろう。
(6)アメリカの金融市場は世界で飛び抜けてでかい。人材のスケールも飛び抜けてでかい。よって私は、ニューヨークダウは世界の株価の圧倒的な指標だと思う。

(二)私の強気の根拠。

(1)証券界はサブプライム問題の分析に熱心であるが、私はバーナンキFRB議長の金融政策とポールソン財務長官の財政政策に注目していた。
(2)サブプライム破綻が深刻になればなるほど、FRBの金融政策も積極化する。第1に、資金をジャブジャブに放出した。第2に、政策金利の第2次引き下げを辞さない構えを示している。第3に、欧州、英国の中央銀行がFRBを全面的に支援している。
(3)ポールソン財務長官の財政支援策も具体化した。第1に、金利の高いサブプライムローンから金利に低い住宅ローンに乗り換えを促し、破綻の拡大を防いでいる。第2に、大手銀行を集めて1,000億ドル(11兆円)の資金を準備し、買い手不在のサブプライム関連ファンドをピンポイントで買い向かう体制を固めた。
(4)これまでポールソンの支援策が慎重であったのは、個人や銀行の投機の失敗をなぜ税金で尻ぬぐいするのかと言う批判に配慮したからである。
(5)マスコミはサブプライムローン報道に明け暮れていたが、私は政策の成功を確信していたから、問題点をサブプライム不安にいつ政策が打ち勝つかというタイミングに絞り込んでいた。
(6)今日では財政政策、金融政策が発達し、恐慌でさえも防止できる。私には10兆円に満たないサブプライム破綻の解決に長い時間が必要だと思えなかった。
(7)特に私は、ポールソン財務長官の手腕に注目している。ポールソンはゴールドマンサックスを世界1の投資銀行に躍進させた。ブッシュ政権は世界1の才能を財務長官にスカウトしたのである。派閥順送りの日本の財務大臣とは比較にならない。
(8)私は先週、「それでも株価は上がる」という大見出しを掲げた。今週の「続・それでも株価は上がる」と併せて批判を賜りたい。

(三)日本株の人気復活へ、条件が成熟。

(1)欧米の金融市場がサブプライム不安を克服すれば、資金は欧米に向かう。
(2)急騰を演じた中国、インド等の新興市場が調整期を迎える可能性がある。
(3)そのとき日本株の独歩安、超出遅れが鮮明となる。
(4)日本株復活の鍵を握るのは日銀の公定歩合引き上げのスピードである。

(四)日本の公定歩合と為替相場。

  参照「チャート2・日米の政策金利」。
  参照「チャート3・円対ドル、円対ユーロの為替相場」。
(1)チャート2「日米の政策金利」をご覧頂きたい。日米の金利差は2004年半ばには1%に過ぎなかったが、その後の3年間に5%へ急拡大した。
(2)チャート3「円対ドル、円対ユーロの為替相場」をご覧頂きたい。同じ2004年半ば以降に、円相場はすべての通貨に対して大暴落を演じた。
(3)国際感覚が欠落した日銀が世界の金利上昇に追随しなかったために、円と日本株の独歩安を招いた。その責任は重大である。
(4)金利差に着目した内外の投機筋が、円を売って他の通貨に乗り換えるキャリートレードを仕掛けた。
(5)円安を見て日本の金融機関は争って外貨建て投信を販売した。為替差損を嫌って、外国人投資家が日本株を売った。これがさらに円安と日本株安を加速した。
(6)それゆえ、私は一貫して日銀の優柔不断と国際感覚の欠落を批判している。今日では金融市場に国境がない。孤立した金融政策は必ず投機筋の介入を招く。
(7)しかし1ドル120円台乗せをもって、5%の金利差をめぐるスペキュレーションはひとまず目標を達した。
(8)為替相場を決定する基本はあくまでも日本企業の国際競争力である。私は7月に毎週連続して円は底値に達したと主張し、投機的キャリートレードに警告を発した。
(9)果たして円は反騰に転じ、投機筋を凄惨な破綻に追い込んだ。
(10)私は今、円は大底を叩いたと思っている。曲折があっても円ドル相場は100円割れを目指し、その他の通貨に対しても失地を回復するだろう。
(11)円が反騰に転じれば、日本株も反騰に転じる。
(12)この機を捕らえて、もし日銀が公定歩合の連続的引き上げに踏み切れば、内外の金利差が縮小して円は本格的に上昇するだろう。
   この点については次回に補足したい。

(五)相場観。

(1)私は先週、ニューヨークダウが2番底を叩いたと思う。
(2)その場合、相場は長期の上昇軌道に回帰する。
(3)日銀が早期に公定歩合引き上げを決断すれば、日本株の上昇に弾みがつく。
(4)クラブ9注目の新興市場株、材料株はおおむね1段上げを終えて、2段上げ突入を目指している。