2007/10/22

  2007年10月22日(月)
  それでも株価は上がる。
  2番底形成、反騰の条件が成熟。
  新興市場株、小型材料株が復調。

(一)2番底形成。

(1)米国はサブプライムローン破綻、住宅不況深刻化、景況悪化の観測で下落。欧州、英国、日本も安い。株式相場は2番底を形成しつつある。
(2)世界同時株安論は過去のものとなった。日本を除くアジアの株式と為替は米欧の下落に逆行して、高騰した。
(3)インドと中国が急増する過剰流動性の抑制に乗り出せば押し目を形成する可能性がある。しかし欧米では反騰の条件が成熟しつつある。
(4)ニューヨークダウはすでにサブプライム不安を押し返して史上最高値を更新し、ナスダックも年初来高値を更新した。現在は2番底の形成課程で、2番底を確認すれば再度最高値を更新するだろう。
(5)弱気論者は勢い込んで弱気の条件を並べ立てているが、株価にとって最も重要な「需給関係の好転」を見落としている。すべての価格が「需要と供給の接点で決まる」ことは経済学の不滅の原則である。

(二)需給好転。反騰の条件が成熟。

(1)米国、欧州、英国の中央銀行はサブプライム不安の拡大を防ぐために、協調してジャブジャブにマネーを放出している。
(2)先週には、米国のポールソン財務長官が大手銀行を組織して1,000億ドル(11兆円)に及ぶ資金を創設し、サブプライム関連ファンドにピンポイントで資金を供給する体制を固めた。
(3)ポールソンはまた、金利が高いサブプライムローンから金利が低い住宅ローンへ、借り換えを促すための救済策を進めている。
(4)(1)〜(3)は政府主導の金融、財政政策であるが、需給好転を示す指標は民間サイドでも目白押しである。
 第1に、商品市況、中でも石油相場が暴騰した。急増したオイルマネーが株価の押し目を待ち受けている。
 第2に、中国政府は2,000億ドル(23兆円)の政府系ファンドを設立し、世界の優良株に投資する体制を固めた。中国政府はすでにアメリカの企業買収ファンド・ブラックストーンにも出資している。
 第3に、株式や不動産に投資する世界の政府系ファンドはオイルマネーを筆頭に300兆円を突破しており、10年後には7倍に激増するという観測がある。
 第4に、ロシアと中国は巨額の政府資金を戦略的に投資するという観測が有力で、先週末のG7で主要な議題となった。
 第5に、日本国内に限ってみても、民営化した郵貯は300兆円の資金の大半を日本国債に投資しているが、日銀が公定歩合を引き上げれば国債相場は暴落する。民営化した郵貯銀行は黒字経営の責任があり、早期に30兆円程度の国債を株式に乗り換えてリスクをヘッジする必要がある。
 第6に、日本の財務省は世界第2位の外貨を全部米国の国債に投資しているが、一部を中国やロシアと同様に株式や資源等の戦略的投資に振り向けるべきだという批判が台頭している。
(5)世界の金融市場は史上空前のカネ余りの状況下にある。そんな時に株価が下げ続けるとは、私には思えない。

(三)財政政策、金融政策の威力。

(1)1936年にケインズは「貨幣の一斑理論」を発表し、財政政策と金融政策を発動すれば恐慌を克服できると述べた。
(2)資本主義社会はこれを実践して恐慌を克服し、対照的に共産主義社会は貧困と独裁の弊害が深刻化して崩壊した。
(3)以後、ケインズ経済学は経済学を学ぶ学生のテキストとなった。
(4)日本の株式市場には「不景気の株高」という格言がある。不景気になればなるほど日銀は金融を大幅に緩和する。金融を緩和すれば需給関係が好転する。需給関係が好転すれば不景気でも株価は上がる。株価が上がれば景気は好転する。
(5)エコノミストや日経はなぜ金融政策、財政政策の効果を軽視するのだろう。
(6)もしサブプライム不安がさらに拡大すれば、FRBはさらに金融緩和政策を進め、米財務省はさらに財政支援を強化するだろう。
(7)今日ではサブプライム程度の局地的問題を解決することは困難ではない。

(四)日経に連載中の青木昌彦スタンフォード大名誉教授「私の履歴書」から。

(1)私は青木教授よりもやや年上だが、ほぼ同時代を生きた。バリバリのマルクスボーイがゼンガクレンのリーダーを経て、数理経済学に活路を見いだすまでのドラマチックな変身が、私自身の青春期と重なって興味深い。
(2)青木教授が東大に入学したとき、東大はマルクス経済学の全盛期であった。当時は京大や大阪市大や横浜国大もマル経が支配していた。余談ながら、今だにマルクス経済学の講座が存在するのは日本の大学だけだから、欧米でマルクスを学びたい学生は日本に留学するほかない。
(3)東大でマルクシズムに洗脳された青木教授はゼンガクレンのリーダーとなり、国会に突入し、安保条約締結のために渡米する岸首相を羽田で阻止しようとして逮捕された。
(4)その後青木氏は東大の大学院に進み、ハーウイッツの論文に出会い、学生運動に決別して渡米を果たした。
(5)岸首相の渡米阻止に青春の情熱を傾けた羽田に、ゼンガクレンの仲間である唐牛健太郎や西部邁など30人が青木の渡米を見送りに来た。私には反米闘争の挫折と終焉(しゅうえん)を告げる象徴的な風景と見えた。
(6)ミネソタ大学で、ハーウイッツ教授から1年間は数学をやれと言われた。数学は近代経済学の基本であるが、論理的な思考方法の訓練になったという。
(7)しばしば私は、アメリカの投資銀行は理数系の学生しか採用しないと指摘しているが、アメリカでは経済学部そのものが理数系である。日本の証券界に数学が欠落しているために、東京の先物市場が外国資本に蹂躙(じゅうりん)されているのである。
(8)50年以上昔に私は神戸大学の家本ゼミで計量経済学をかじったが、英文のテキストは始めから終わりまで数学で、見たことがない行列式の羅列であった。欧米では50年前にすでに数理経済学の時代となっていたのである。
(9)往年のマルクスボーイ・青木教授は来年「世界経済学会連合」の会長に就任される。日本でノーベル経済学賞に最も近い人物だろう。

(五)相場観。

(1)先週、日経平均は急落したが、新興市場株、小型材料株が予想通り逆行高した。私は日本の株式市場が正常な上昇過程に回帰する徴候だと思う。
(2)好調なアジアの株式市場はみな新興企業を集めた新興市場である。
(3)私は成長株投資こそ株式投資の王道だと思っている。