2007/10/1

  2007年10月1日(月)
  未来は過去の延長ではない。
  未来は意外性に満ちている。
  新興市場、材料株に出番。富山化学に動意。

(一)サブプライム問題の虚実。

(1)FRBのバーナンキ議長がサブプライム破綻に伴う不良債権は最大11兆円に達する可能性があると発言した日から株価の急落が始まった。
(2)先週、IMFは22兆円というこれまでで最大の不良債権予測を発表して弱気論者を勢いづかせた。
(3)しかしこれらの数字は破綻が他の証券化商品にも拡散するという前提に基づいた予測である。予測だから、予測値はいくらでも膨張する。
(4)現在までに報じられたサブプライムローンの具体的な破綻件数は16万件である。米国の平均住宅価格は2,800万円だから、1件当たりのサブプライムローンを3,000万円と見積もっても破綻金額は5兆円に満たない。5兆円が来年には2倍、3倍に拡大する可能性はあるが、早期に終息する可能性もある。
(5)現実にはサブプライム破綻ばかりか、2次破綻、3次破綻を同時に防ぐ国際的な救済策が進行している。第1に、FRBはすでに2度にわたり金融緩和に踏み切り、さらに追加政策を投入する構えである。第2に、欧州と英国の中央銀行も公定歩合引き上げを止めて大規模な流動性を供給している。第3に、ブッシュ大統領が サブプライムローン救済のための財政支援を具体化している。
(6)一方、エコノミストの燃えさかる悲観論を尻目に、好機到来と見て「火中の栗を拾う」資本家が現れた。バンクオブアメリカはサブプライムローン最大手のカントリーワイド・ファイナンスに2,200億円を出資した。
(7)先週、投資銀行大手4社が6〜8月期決算を発表し、日経は「不良債権は今後さらに拡大する」と分析したが、その翌日、ウォーレン・バフェット氏は4社の中でも決算内容最悪のベアー・スターンズを買収すると表明した。バフェット氏はコカコーラを初めとする多数の企業を株価のボトムで買収し、再建した実績を持つ。
(8)私は過去3週間、悪材料をほぼ株価が織り込んだと見てニューヨークダウの史上最高値更新が近いと述べてきた。果たして先週、NYダウは高値にツラ合わせし、ナスダックは年初来高値を更新した。株価の全値戻りは多数の投資家が最悪期を脱出したと判断した結果である。
(9)情報には常に虚実が入り乱れている。私はリスクを負わないエコノミストやマスコミの悲観論よりも、リスクに立ち向かうバフェット氏の先見性を信頼し、共感する。

(二)資産インフレ時代の不動産。

(1)私は、現在は商品相場と株式相場と不動産相場が連鎖して上昇する資産インフレの時代だと主張している。
(2)石油相場が暴騰すれば、膨張したオイルマネーが株式市場に向かい、株式市場で増幅したマネーは不動産市場に向かう。
(3)メキシコからの不法移民が集中しているカリフォルニア州やフロリダ州で住宅に対する投機が発生し、投機が破綻して住宅価格が下落した。株式市場ではアメリカの住宅価格が暴落して景気が悪化すると騒いでいるが、同じアメリカでもアイダホ州では住宅価格が上昇し、中西部の農地が上昇するなど、強気の情報も少なくない。
(4)3ヶ月前に、私はヘッジファンドの創始者であるジョージ・ソロス氏がブラジルで農地の買収に乗り出したと述べた。ブラジルでは砂糖を ガソリンの代替燃料に用いるプロジェクトが軌道に乗り、砂糖相場が高騰し、農地の価値が上昇した。
(5)アメリカではトウモロコシをガソリンの代替燃料に用いているから、トウモロコシ農地の価値が上昇した。
(6)トウモロコシ相場の高騰を見て小麦農家や大豆農家がトウモロコシ農家に転換し、今度は小麦と大豆が高値を更新するという穀物相場高騰の連鎖が進行した。そして高騰の連鎖がブラジルの農地からアメリカの農地へ飛び火したのである。
(7)東京市場では、サブプライム破綻の余波を受けて日本の地価が下落するという情報が乱れ飛んで不動産株が急落した。しかし先週、東京都心で帝国ホテルを初め超大型の不動産買収が相次いで具体化し、不動産関連株は一斉に急騰した。
(8)日本では人口が東京に集中し、地方の農家が疲弊して、安倍内閣が崩壊した。地方の地価は下落が止まらないが、世界的に食料の安全が求められる時代が来たから、日本の農業が復活し、農地が再評価される可能性は十二分にある。
(9)資産インフレの時代には、株価は上がるが地価は上がらないといった先入観を捨てる必要がある。

(三)新興市場、小型材料株が底入れ。

(1)かねてから私は新興市場、材料株の復活が近いと主張し、銘柄を絞り込んでお勧めしたが、下げ相場は止まらず、読者に迷惑をかけた。
(2)相場が低迷し、調整局面を迎えた時に小型株、仕手系株が浮上するのは相場の常道である。現にアメリカではナスダック市場の反発力が強いが、 日本の新興市場株は過去2年間、味噌も糞も無差別に暴落した。
(3)外資が運用する小型株ファンドの中には保有株を売り切ったところもあり、借り株を用いて暴落に追い打ちをかけた投機的な動きもあったという。
(4)これではベンチャー企業もベンチャー資本も育たない。日本は新興国群の熱気から取り残されてしまう、と私は感じていた。
(5)しかし先週はついに強気が勝った。味噌も糞も底値圏を脱出し、出来高も日を追って増えた。異常が正常に戻るトレンドが始まった、と私は思う。
(6)ネクストのように前期、今期とも利益が倍増する銘柄は高値更新が期待できる。
(7)NIF-SMBCのように投資先の評価損を大胆に償却した銘柄は半値戻りが期待できる。
(8)サイバードのように株価が10分の1、20分の1に大暴落していた銘柄は、業績の黒字転換を受けて3分の1戻りが期待できる。
(9)東芝プラント、加ト吉、富山化学等の材料株は、株価が好材料に反応しやすい相場環境となった。

(四)富山化学が動意。

(1)富山化学が中間期の経常利益を1億円から27億円に上方修正した。
(2)スイスのロッシュ社に抗リュウマチ剤T-5224のライセンスを供与し、その一部が上期に入金したためである。
(3)通期の利益予想を据え置いたが、下期も次の3点で増額修正の可能性がある。
(4)第1に、9月に厚生省から製造認可を受けたキノロン系傾向合成抗菌剤ジェニナック(一般名ガレノキサシン)を、アステラス製薬、大正製薬と共に11月から発売する。富山化学自身はジェニナックについて「既存のニューキノロン剤とは異なる構造を有し、特に呼吸器感染症の多剤耐性菌を含む起炎菌に強い抗菌力を示した。また、安全性では関節毒性が弱いことから、小児への効能拡大を予定している」とコメントしている。先に米シェリング・プラウ社が米、欧での製造認可申請を取り下げて株価が暴落したが、再申請の可能性もある。
(5)第2に、鳥インフルエンザ特効薬T-705のライセンス導出交渉が進行中である。
(6)第3に、アルツハイマー型認知症治療剤T-817MAのライセンス導出交渉が進行中である。
(7)特にT-705は鳥インフルエンザの特効薬としてロッシュ社のタミフルを凌ぐという評判があり、日米同時フェーズ I 終了を受けて臨床データの公表が注目される。ライセンス導出の条件次第では人気再燃の可能性がある。

(五)中国政府が23兆円の資金運用会社を設立。

(1)クラブ9が再三報じた通り、中国政府が2,000億ドル(23兆円)の資金運用会社を設立した。
(2)国内の過剰流動性を吸い上げるために23兆円の国債を発行し、外貨準備のドルと交換した。
(3)資本金がドル建てだから、資金はすべて海外の株式、不動産、債権等に投資するだろう。
(4)世界の金融市場の資金量が増えて資産インフレを刺激する要因となる。
(5)日本の財務省は貯め込んだドルを全額アメリカ国債で運用しているが、中国に見習ってアメリカ一辺倒の思想を切り捨てないと世界的な資産インフレの時代に追随できなくなってしまう。