2007/9/25

  2007年9月25日(火)
  圧倒的な弱気論の中の強気指標に注目。
  高値更新続出の商品市場。
  NYダウも高値更新目前。

(一)史上最高値目前のニューヨークダウ。

(1)「知ったらしまい」という格言がある。すなわちどんな強気論、どんな弱気論でも、みんなが知ってしまえば株価は織り込み済みとなる。
(2)「弱気論者は理路整然と相場を間違う」という格言がある。すなわち弱気論者が理路整然と弱気論を述べる頃には、株価は弱気論を織り込んでしまっている。
(3)上記の格言に従ってマスコミ報道を見渡すと、株価に最もうといNHKでさえ「理路整然と」サブプライム問題を解説するようになった。
(4)アメリカの大統領は日本の総理大臣と違って国民の財産を守る責任がある。FRBは金融政策で、財務省は財政政策で、サブプライムローンの救済に乗り出したから、最終的な赤字が来年にも大幅に拡大し、景気を悪化させるといった悲観論はあまりにも非現実的過ぎると私は思う。
(5)ちなみに現在の破綻ローンは16万件である。一件当たりのローンを全米平均の住宅価格よりも多めの3,000万円としても、総額5兆円である。
(6)5兆円の破綻金額をアメリカの株式時価総額2,000兆円に比べると、わずか0.25%にすぎない。現に先週、ニューヨークダウは急騰して史上最高値まであと144ドルに迫っている。

(二)価格は需要と供給の接点で決まる。

(1)価格が「需要と供給の接点で決まる」ことは、近代経済学の大原則である。
(2)石油も金も株式も不動産も、すべての価格は需要と供給の接点で決まる。
(3)21世紀に入って人口超大国が超高度成長時代に突入し、石油の需給関係が逼迫して石油相場が暴騰した。大膨張したオイルマネーが株式市場に流入した結果株式の需給関係が逼迫し、日本を除く世界中の株価が史上最高値を更新した。
(4)かくして21世紀は商品、株式、不動産が連鎖して高騰する資産インフレの時代となった。
(5)私は先週、石油相場の史上最高値更新を見てニューヨークダウの史上最高値更新が近いと述べた。果たしてNY市場はその翌日から急騰して週末には最高値まで144ドルの水準に迫った。
(6)次項に私の相場観の根幹となる歴史観を述べておきたい。

(三)需給関係重視の歴史観、相場観。

(1)17〜20世紀は欧米先進国が全世界を植民地化し、植民地を収奪して富を独占した時代であった。
(2)しかし21世紀初頭のわずか数年間に世界の経済的勢力図は革命的に変化した。
  第1に、植民地支配を脱したアジアの人口超大国が世界経済の拡大成長を牽引する時代となった。
  第2に、その結果すべての商品の需給関係が逼迫し、軒並みに史上最高値を更新する時代となった。
  第3に、植民地支配を脱した新興国は埋蔵資源を国有化し、欧米に奪われていた富を奪還する時代となった。
  第4に、中でも石油相場が大暴騰した。石油は電力や自動車や飛行機や船舶のエネルギー源となるだけではない。プラスチックや繊維などに加工されて日常生活の隅々に行き当たり、その用途は拡大一途である。
  第5に、石油相場が高騰した結果、大膨張したオイルマネーが金融市場に流入して株価や地価を高騰させた。
(3)かくして21世紀は商品、株式、不動産が連鎖して高騰する資産インフレの時代となった。
(4)資産インフレの時代には、中央銀行はインフレを抑制するために金融引き締め政策を継続しなくてはならない。
(5)ところがサブプライム問題のような金融破綻が発生すると、中央銀行は一時的に金融を緩和するから、金融市場の資金量が増えて新たな資産インフレを誘発する。
(6)サブプライム問題は株価にとって悪材料であるが、各国の中央銀行が一斉に資金を放出してテコ入れするから、需給関係が逆転して株価が上昇するのである。

(四)エコノミストの理論構成の欠陥。

(1)エコノミストは経済学の優等生で、景気観測のプロである。
(2)エコノミストは統計データを分析して未来を予測する。
(3)しかしデータは過去の記録である。
(4)エコノミストは「未来は過去の延長線上にある」と思っているが、私は「未来は不確実性と意外性に満ちている」と思う。
(5)投資家はリスクに挑戦し、意外性に賭けるから、相場は100人100様の歴史観が集積して形成される。
(6)日銀の政策委員はエコノミストの中の優等生である。日銀が結果論を盾にゼロ金利を維持している間に、欧米の中央銀行は金利を連続して大幅に引き上げた。内外の金利差が拡大して円は国際的な投機の目標となり、過剰流動性の供給源となった。過剰流動性こそ相場変動の大きな要因である。
(7)歴史観を欠いたエコノミストが結果論に明け暮れている間に、日本は資産インフレの時代から脱落した。

(五)米、4大投資銀行の好決算。

(1)先週、サブプライムローンの証券化に最も深く関わっている米国の4大銀行が6〜8月期決算を発表した。
(2)4行は合計でサブプライム関係の赤字を償却した上で増益を達成したが、中でも最大手のゴールドマンサックスは63%増収、79%増益の好決算であった。
(3)しかし日経は見出しで「米銀、サブプライム響く」「大手投資銀、相次ぎ減益」などと報じて、ゴールドマンの絶好調の決算を完全に無視した。
(4)米国の投資銀行はサブプライム破綻に屈せず、すでに破綻を乗り越えるノウハウを構築していると私は感じた。
(5)アメリカの経済学部は文化系ではなく名実ともに理数系である。日本の大学はいまだにマルクス経済学が幅を利かせているが、近代経済学のテキストを開けば一目瞭然、数学そのものである。
(6)財務省の秀才官僚でも、数学が苦手なために、欧米の大学院に留学して学位が取れない人がいる。理数系で固めたアメリカの投資銀行は最先端の理論に基づいて最先端のノウハウを開発するが、日本の大証券は追随できない。
(7)ノルマ営業に汚染された日本の大証券と投資銀行業務に特化したアメリカの大証券の間で、収益力に大差が生まれた。銀行、保険の競争力にも大差が生まれた。
(8)東京市場が外国証券に支配されて、日本株が世界で最も割安となったのは偶然ではない。

(六)株式投資を積極化する郵政公社。

(1)23日付日経によれば、郵政公社は7月までの4ヶ月間に、民営化に備えて1.1兆円の保有株式を売却した。
(2)しかし民営化後は株式投資を積極化する。国債中心の運用では、日銀が公定歩合引き上げたとき巨額の評価損が発生するから、株式投資でヘッジする必要がある。
(3)郵政公社の資金量は郵貯部門が180兆円、簡保部門が110兆円。日本人の個人金融資産の20%に達する巨額である。
(4)このうち郵貯部門は8月以降に9,000億円の日本株買いが見込める。
(5)簡保部門は3種類のファンドを設定して運用委託を始めた。内訳は割安株に投資する「バリュー型」、成長性に重点を置く「グロース型」、新興企業株に投資する「中小型」である。
(6)このうち「中小型」は当初1,000億円で、少額ながら暴落した新興市場の需給関係を好転させる可能性がある。
(7)公社時代は財務省の圧力を受けて国債投資一辺倒であったが、収益力に責任を持つ民営化後は、株式による運用が不可欠となる。

(七)中国が国際優良株に大規模投資か。

(1)中国政府は国内の過剰流動性を吸収するために、28兆円の国債発行を予定しており、すでに12兆円を発行した。
(2)中国は28兆円の運用機関を新設し、全額を国際優良株に投資する可能性がある。
(3)ロシアがオイルマネーをアルミやレアメタル分野に投資しているように、中国が投資先企業を戦略的に選択する可能性もある。

(八)急浮上した強気の条件。

(1)サブプライム関連の余震が簡単に終結するとは思わないが、基調の逆転を示す指標が鮮明となった。第1に、商品市場で石油と金が高値を更新し、銅、ニッケルも急騰している。第2に、ニューヨークダウも新値更新が目前である。
(2)株式市場を覆い尽くしていた弱気論に代わって、需給面で強気論有利の条件が浮上している。第1に、信用取引の買い残が減少し、空売りが取り残された。第2に、増加したオイルマネーが株式市場に流入する可能性が高い。第3に、サブプライム対策で放出した資金が金融市場に滞留している。
(3)「ウリからカイに転じる郵政公社」と「中国による大型の新規投資」は意外性があり、将来大きな強気要因となりうる。