2007/9/18

  2007年9月18日(火)
  ニューヨークダウは史上最高値更新が近い。
  先行するシカゴ商品指数はすでに最高値に。

(一)NYダウに先行するシカゴ商品指数(CRB)。

(1)チャートを見れば一目瞭然、ニューヨークダウとCRB(シカゴ商品指数)の相関関係はきわめて高い。
(2)5月以降、両者はほぼ同じ経過をたどって最高値を形成し、サブプライム問題に遭遇すると同じ経過をたどって急落した。しかし底入れした後、CRBはニューヨークダウを尻目に急騰し、早くも最高値に肩を並べた。
(3)商品相場の指標性を重視すれば、NYダウは10月にも史上最高値を更新する可能性がある。
(4)CRBを構成する商品の中でも、17日現在石油は史上最高値を連続して更新している。金は引け値で昨年5月高値を更新、銅は史上最高値に接近、急落していたニッケルも急反騰に転じた。
(5)CRBを構成する石油、貴金属、非鉄、穀物、繊維等は、株価の暴落なんてどこ吹く風かと言わんばかりに堅調である。
(6)私は、21世紀は相株式相場を読む上で歴史観が重要だと思う。以下に私の歴史観を要約してご参考に供したい。

(二)21世紀は中国が世界経済の拡大成長を牽引する時代。

(1)21世紀に入って、世界第1位の経済大国アメリカにとっても、世界第2位の経済大国日本にとっても、中国がダントツの貿易相手国となった。
(2)中国は21世紀初頭のわずか数年間に日本を抜いて世界最大の貿易黒字国、外貨保有国に急成長した。
(3)中でも中国が世界最大の13億人を擁する人口超大国である点が重要で、年率10%の超高度成長が世界経済に与えるインパクトは歴史上の常識をことごとく破壊した。
(4)その中国に追随して人口10億人のインドが10%の超高度成長時代を迎えた。中国とインドのたった2ヶ国で、世界180ヶ国、60億人の地球人口の40%を占める。
(5)2大人口超大国の超高度成長期入りで、すべてのモノの需給関係が逼迫した。
(6)直近のシカゴ商品指数の急反騰は、中国が主導する世界経済の拡大成長が少しも衰えていないことを証明している。

(三)21世紀は資源保有国が世界の富を握る時代。

(1)商品相場の中でも、石油が生み出す資金量は桁違いにでかい。その石油が早くも史上最高値を更新した。
(2)40年前の1バーレル8ドル時代も現在の80ドル時代も、産油国の原価はタダである。採掘コストを10ドルとすれば、時価80ドルのうち70ドルが全部産油国の利益となる。
(3)石油や天然ガスは単に燃料として消費されるだけではない。プラスチックや合成繊維やカーボンファイバーや各種パイプに加工されて、今日では日常生活に不可欠の資材となっている。
(4)それゆえ、人口超大国の10%成長が衰えない限り、石油の数量ブーム、価格ブームは衰えない。
(5)中でも中東産油国は最大の埋蔵資源を持つ上に人口が少ないから、石油相場がもたらす利益は100兆円単位で増加する。産油国は有り余る財政黒字を「次世代のための基金」に計上し、先進国の金融市場で運用する。これらがオイルマネーである。
(6)オイルマネーは現在も増勢一途をたどっているから、金融市場の資金量は増勢一途をたどり、ニューヨークダウの史上最高値更新は単に時間の問題である。
(7)それゆえ、私が弱気に転換するときがあるとすれば、商品相場が大天井を形成したときである。

(四)続、21世紀は資源保有国が富を握る時代。

(1)ロシアはOPEC(石油輸出国機構)に加盟していないから、産油国の減産を好機として石油の大増産を続け、今やサウジアラビアと並ぶ大産油国となった。ロシアはヨーロッパ全域にパイプラインを架設して天然ガスを供給しているから、市場支配力がきわめて強い。
(2)ロシアはまた、有り余るオイルマネーをレアメタルや金鉱山の開発に投資し、アルミ大手を買収するなど、石油以外の資源に対する投資活動を活発にしている。
(3)ブラジルは非鉄、石油等の埋蔵資源を保有し、穀物の生産大国である。砂糖を原材料としてガソリンの代燃料の生産に進出すると砂糖やトウモロコシの相場が急騰し、その投資活動が商品相場に影響を与えている。
(4)中国、インドに資源大国ロシア、ブラジルを加えた4ヶ国の頭文字を並べてBRICsと呼ぶ。
(5)ロシアとブラジルも人口大国で、BRICs4ヶ国の人口を合わせると世界人口60億人の半分を超えるから、モノの需給関係はますます逼迫する。
(6)ロシア、ブラジルに続いて、中南米、アフリカの旧植民地諸国は埋蔵資源を国有化し、経済的自立を目指している。これも又地球規模で世界経済が拡大し、商品相場の上昇を刺激する要因である。

(五)人類は経済恐慌を克服するノウハウを確立した。

(1)1936年にケインズが「貨幣の一斑理論」を発表して以来、人類は金融、財政政策を積極的に発動して恐慌を克服するノウハウを確立した。
(2)資本主義社会が経済恐慌を克服した結果、共産主義社会、社会主義社会が雪崩を打って崩壊した。
(3)中国とロシアは資本主義を導入して貧困を克服した。残された社会主義国はキューバと北朝鮮のみで、極貧状態に取り残された。

(六)資金運用の栄光と挫折。

(1)1980年代以降、欧米の金融機関は資金効率を数十倍に高める資金運用のノウハウを開発した。その結果、大手金融機関の年間利益は1兆円単位に激増した。
(2)しかし繁栄の影で、周期的に資金運用の破綻が表面化した。その間に、政府、中央銀行は金融市場の破綻を早期に解決するノウハウを積みあげた。
(3)今回のサブプライム関連の不良債権は最大12兆円で、担保不動産を処分すれば最終赤字は半分以下となる。金融機関の収益力から見れば、この程度の赤字の償却は大した負担とならない。
(4)株式市場から見れば、世界の株式の時価総額は直近の2年間だけで1,000兆円以上も激増したから、サブプライム破綻の相対的なインパクトは知れている。
(5)エコノミストとマスコミはサブプライム問題がアメリカの景気を後退させると騒いでいるが、政府と中央銀行がこれまでに蓄積したノウハウをもってすれば早期解決は困難ではない。
(6)米欧の中央銀行はですでに100兆円以上の流動性を放出した。
(7)資金の需給関係から見て、私は株価のさらなる暴落よりも株価急反騰の可能性の方がはるかに高いと思う。

(七)結び。
20世紀は欧米先進国が植民地を収奪して富を独占した時代であった。
(2)しかし21世紀はすべての植民地が独立し、欧米に奪われた富を奪還する時代である。
(3)すでにBRICsは世界経済の拡大成長の主役となった。
(4)BRICsは地球人口の半分以上を占めるから、すべてのモノの需給関係が逼迫し、商品相場が高騰した。
(5)中でも産油国は巨大なオイルマネーを金融市場で運用するから、世界の物価と株価と地価は連鎖して高騰する時代となった。
(6)一方、欧米先進国は巨大化する金融市場に成長の活路を見いだし、今や金融業は産業構造の中核を占める巨大産業に発展した。
(7)世界経済は拡大し、商品相場が高騰し、金融市場が膨張するから、世界中の中央銀行は構造的な資産インフレに対応する必要に迫られている。
(8)このような資産インフレの時代には、株価の下落は異常であり、上昇が正常である。投資家は短期的な波乱に幻惑されて、大勢観を見失うべきではない。
(八)悲観は短期、楽観は長期。

(1)私は短期的な波乱を軽視して楽観論を述べているわけではない。
(2)サブプライム破綻が金融市場の信用収縮を誘発し、投資業務が停滞した結果、大手投資銀行の増益幅は主縮小するだろう。
(3)4大投資銀行のモルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、ベアスターンズ、リーマンブラザーズは今週の決算発表で、業績を下方修正する。減額幅が大きければ失望売りが出るだろう。しかし不良債権の実態が明らかになるにつれて信用不安もまた収縮するだろう。
(4)週明けの18日にFRBが金融緩和の具体策を打ち出す。米財務長官も20日の議会証言でサブプライムローンの救済策を述べる。
(5)シカゴ商品指数のチャートで見たとおり、商品相場の再騰がもたらすインフレが鮮明となっているだけに、FRBは大幅な金融緩和には慎重にならざるを得ない。利下げが小幅となって一時的に失望売りを誘うかも知れない。
(6)しかし金融市場の資金量は増勢一途だから、株式相場と商品相場が連鎖して上昇する構造は変わらないだろう。
(7)私は、株価はすでに最悪期を過ぎたと思う。悲観は短期、楽観は長期である。