2007/9/10

  2007年9月10日(月)
  サブプライム問題に決着つくか。
  ブッシュ大統領の救済案に注目。

(一)焦点は財政出動の規模。

(1)サブプライムローン問題はアメリカで発生し、世界の金融市場を揺るがす大問題に発展した。しかしサブプライム関連の不良債権は総額でも10〜15兆円に過ぎず、1,000兆円単位の金融市場から見ればかすり傷程度の損失である。
(2)問題は、不良債権が様々なファンドに組み込まれて拡散し、どの金融機関がどの程度のババをつかんだかがわからないために、金融市場が疑心暗鬼に陥った所にある。
(3)その疑心暗鬼がもたらした2次災害の被害は甚大である。例えば、日本の金融機関の損失はきわめて軽微であるが、東京株式市場が失った時価総額は瞬間風速で100兆円に達した。個人投資家の損失も大きい。円の急騰によって被った為替先物取引の損失は2,000億円と推定される。銀行や郵便局の窓口で販売した外貨建て投信の評価損も1兆円を超えるだろう。
(4)サブプライムの2次災害がアメリカ人の財産である住宅相場や株式相場に波及したために、ブッシュ大統領は8月28日、問題解決に乗り出すと表明した。日本の総理大臣のリップサービスと違って米国大統領は国民の生命と財産に責任がある。主たる具体策は次の2点である。
(5)第1に、借り手を救済するために高金利のサブプライムローンから低金利の住宅ローンへ、借り換えを可能にする。これには政府系住宅ローン機関であるファニーメイとフレディマックの協力と法改正が必要であるが、民主党の次期大統領候補も抜本的救済を要求しており、ポールソン財務長官も前向きである。第2に、大統領は貸し手の銀行に対して違法な資金回収の禁止と担保住宅の処分繰り延べを求めている。
(6)焦点は財政出動の規模である。小出しにすれば沈静化は長引くが、10兆円規模となれば不良債権が解消し、金融不安は即座に沈静化するだろう。20日に議会喚問が予定されているポールソン財務長官の証言に注目したい。
(7)FRBも金融面の協力を表明しており、9月18日の政策決定会合では政策金利を0.5%以上引き下げる可能性が高い。

(二)欧州と英国の中央銀行も協調。

(1)欧州中央銀行も7日の政策決定会合でこれまでの公定歩合引き上げ予想をくつがえし、4%を据え置いた。また同日、短期金利の上昇を抑制するために6.7兆円の資金を供出した。
(2)FRBも欧州中央銀行に呼応して同日3.6兆円を供出し、上昇気配を見せていた短期金利は沈静した。
(3)英国の中央銀行も同日、政策金利を5.75%に据え置くと発表した。
(4)かくして米欧英の中央銀行はすでに100兆円以上の過剰流動性を供給し、インフレ抑制からデフレ防止へ、金融政策を転換した。

(三)何もしない、何もできない日銀。

(1)優柔不断の日銀は9月も公定歩合引き上げを見送りそうである。
(2)実質ゼロの金利水準では米欧に協力して金利を引き下げることができない。かといって引き上げる決断もできない。
(3)過去2年間に内外の金利差が急拡大した結果、円が為替投機の主役となり、世界中に過剰流動性を拡散した。
(4)政策委員の中でタダ1人、7月にも8月にも公定歩合の引き上げを主張した水野審議委員は、日銀は過剰流動性の拡散に責任があり、サブプライム問題は日銀の公定歩合引き上げを妨げるほど大きな要因にならないと述べている。私も全く同意見である。
(5)6月以来一貫して私が警告したとおり、円は一気に大反騰に転じた。円の先物売りで大もうけした投機筋は一夜にして破綻した。
(6)郵便局、銀行、証券が有頂天になって販売した外貨建て投信も軒並みに急落した。
(7)私は、為替投機が残した傷跡は日銀の優柔不断が招いた人災だと思う。
(8)日経はいまだに円高となれば輸出企業の利益が減ると主張するが、事実の一面しか見ない空論である。ユーロが暴騰したドイツでは輸出産業の業績が絶好調である。イギリスへ旅行した日本人はたばこ1,000円、地下鉄1,000円に驚くが、イギリス人は所得も消費もポンドだから、日常生活に為替の影響はない。
(9)通貨が暴騰した国の企業と国民は、みな通貨高がもたらす資産インフレを謳歌している。歴代アメリカの財務長官は例外なく「ドル高を望む」と述べている。なぜ日経は円高のマイナス面だけをクローズアップするのだろう。

(四)株価反騰の条件が成熟している。

(1)そもそも今回の株価暴落は、特に過去2年間にアウトサイダーの巨大資金が金融市場に流入し、金融機関がサブプライムのリスクを忘れてしまうほど大もうけした所に発している。
(2)欧米の金融機関やヘッジファンドの決算は9〜11月に一巡し、その課程で個別の不良債権の規模が明らかになるが、収益力から見ればたいした負担にならないだろう。
(3)問題はアウトサイダーの巨大資金の向背であるが、大勢は変わっていない。
(4)第1に、中国、インド、ロシア、ブラジル等の人口超大国が超高度成長期を迎え、世界経済の拡大膨張を牽引している構図は現在も不変である。中でも中国は日本を追い抜いて世界最大の輸出国、外貨保有国となり、その成長力は衰えを知らない。
(5)第2に、その結果すべての商品の需給関係が逼迫し、商品相場は次々に史上最高値を更新した。中でも石油が大暴騰し、オイルマネーが巨大資金の出し手となった。その石油は小康状態を経て再度高値に迫っている。金も再騰を開始し、早くも昨年5月高値の725ドルに迫っている。
(6)すなわち、世界の金融機関を舞い上がらせたアウトサイダーの資金量は、2つとも健在である。
(7)そんなときに、わずか10〜15兆円のサブプライムローンを救済するために米欧の中央銀行はすでに100兆円以上の資金を金融市場に投入し、さらに必要なだけ投入する構えである。ブッシュ大統領も財政資金を投入する。資金の需給関係を見れば、バブルが崩壊する可能性よりもバブルが再燃する可能性の方がはるかに高い。
(8)私は、株価のさらなる暴落よりも株価反騰の条件が成熟しつつある点に目を向ける時ではないかと思う。

(五)銘柄観。

前回、前々回と同じ。