2007/9/3

  2007年9月3日(月)

(一)矢面に立つブッシュ大統領。

(1)ブッシュ大統領は31日、政策を総動員してサブプライムローン問題の解決に当たると表明した。
(2)発表の席にバーナンキFRB議長ではなく、ポールソン財務大臣が同席した点に注目されたい。これまではFRBが金融機関の救済策を講じていたが、大統領自らがサブプライムローンの借り手の救済に乗り出したのである。私が力説してきたとおり、大統領はアメリカ人の財産に責任を持つことを明快に示した。
(3)バーナンキFRB議長は同日の講演で政策金利、公定歩合の引き下げを含む金融緩和で対応すると示唆した。大統領と事前に協議しただけに、発言は重い。
(4)私は一貫して「アメリカの大統領は国民の生命と財産に責任を持つ」と述べているが、日本のエコノミストとマスコミで事前に大統領が自ら問題解決の矢面に立つと予想した人はいなかった。
(5)私は、小泉首相と竹中大臣が銀行と企業に保有資産の即時売却を強制して株価と地価を大暴落させたときにも、国民の財産を平然と破壊する改革を「狂気だ」と批判し、終始一貫、徹底的に反対論を掲げた。阿部首相も今回の株価暴落の対策をまるで他人事のように日銀に任せて、責任を持たない。日米政治指導者の国民の財産に対する責任感には天地の相違がある。
(6)今や日本の金融市場は欧米資本の草刈り場に転落したが、無責任政治の当然の帰結である。

(二)アメリカ人の財産に責任を持つブッシュ大統領。

(1)ブッシュ大統領は「アメリカ人の生命と財産」に責任を持つ。もちろんヨーロッパの大統領、首相も「国民の生命と財産」に責任を持つ。日本の政治指導者だけが国民の財産に対する責任感を喪失したのである。
(2)大統領は「アメリカ人の生命を守る」ために、アフガニスタンで、イラクで、テロリストと戦う。
(3)大統領は「アメリカ人の財産を守る」ために金融、財政政策を発動する。アメリカ人の財産とは、第1に住宅、第2に株式である。
(4)アメリカでは住宅ローンの金利が全額税額控除となる。税金を払っているアメリカ人はみな節税をテコとした財産作りのために住宅を買い、リタイアしたときに住宅を売って、その資金で老人ホームを買い、老後の生活費に引き当てている。
(5)さらにアメリカ人は年金を株式中心で運用している。株式をわずかしか組み入れていない日本の公的年金とは、自国の資本主義に対する信頼感が根本的に違う。
(6)住宅と年金はアメリカ人のライフスタイルの根幹である。大統領が株価と住宅価格に責任を負うことは自明の大原則で、野党の次期大統領候補もサブプライム問題の解決を競い合っている。
(7)しかし日本のエコノミストとマスコミは誰も大統領の決断を予想しなかった。国民の財産を平然と破壊する小泉政治を異常と思わなかった人がブッシュ大統領の登場を予想できなかったのは当然である。
(8)日本の政治家でタダ1人竹中政治に反旗をひるがえした与謝野氏が官房長官に就任した。竹中氏は早くも「小泉改革が挫折する」と批判している。その論争の行方に注目されたい。
(9)私はアメリカのポールソン財務大臣にも注目している。ポールソンの中国訪問はゴールドマンサックス時代以来100回に及び、中国政府の信頼が厚い。中国政府は8〜10月に合計24兆円の国債を発行するが、国債の発行と運用についてポールソンの助言を受けているとすれば、サウジアラビアやクエートやシンガポールのように政府機関を設けて24兆円を国際優良株に投資する可能性がある。

(三)サブプライムローン後遺症で株価高騰も。

(1)サブプライムローンは税金を払っていない、それゆえ節税効果が期待できない低所得者向けのローンである。
(2)貸し手は金利を高くしてリスクをヘッジし、借り手は値上がりを待って短期の転売益を狙うから、双方とも投機覚悟である。
(3)ところが急騰していた住宅価格が反落し、借り手の中から思惑が外れて破綻する人が出た。
(4)ウォールストリートジャーナル紙は、社説でリスクを忘れて貸し込んだ金融機関が責任を取るべきだという正論を掲げている。
(5)しかし金融不安が住宅市場と株式市場に飛び火するとアメリカ人全体の財産を破壊するから、FRBが救済に乗り出し、ついに大統領の出番となったのである。
(6)こうなれば金融不安の解消は時間の問題である。しかし私は資産インフレ再燃という後遺症が残ると思う。くわしくは次項で。

(四)NYダウは史上最高値更新へ。

(1)第1に、アメリカ経済は健全そのもので、雇用は増加傾向をたどり、成長率は直近でも4%を維持している。第2に、新興経済大国であるBRICs4ヶ国の成長力は衰えていない。第3に、商品市況や海運市況は堅調を維持している。
(2)中でもBRICsの高度成長と潤沢なオイルマネーこそ、これまで世界の金融市場に巨大な過剰流動性を供給し、株価や地価を暴騰させた主犯である。
(3)元を正せば、サブプライムローンの急増は過剰流動性が生み出した鬼子である。その鬼子を救済するために欧米の中央銀行が新たな過剰流動性をばらまいたから、資産インフレの再燃は必至だと私は思う。
(4)1987年にブラックマンデーと呼ばれた金融危機が発生し、日銀は金融緩和でアメリカに協力した。当時日本経済は高度成長時代のピークを迎えて金融引き締めを必要としていたにもかかわらず、逆に緩和したから資産大インフレを招き、その反動で90年以降の資産大暴落を招いた苦い経験がある。
(5)今回もサブプライム問題が解消した後に、資産インフレが再燃する可能性がきわめて高い。
(6)よって私は、ニューヨークダウが早ければ10月に史上最高値を更新すると思う。

(五)相場感と銘柄感。

(1)先週、私は新興市場の底入れとGCA、ネクスト等の人気化を予想し、いずれも順調に値上がりした。
(2)材料株としてクリーンエネルギー関連の最右翼東芝プラント、JTが買収する可能性の高い加ト吉を上げたが、共に順調であった。
(3)これまで予想が外れていた私が久々に流れを読めたのは、基調が強気局面に変わったからだろう。
(4)住友金属鉱山が主力とする金、銅、ニッケルも反騰に転じた。先週末に中間決算予想を増額修正したが、通期も増額修正する可能性が高い。
(5)これまでクラブ9で取り上げたその他の銘柄も反騰に転じるだろう。
(6)暴落の後遺症で日柄整理は残るが、すでに押し目買いの好機を迎えたと思う。