2007/8/27

  2007年8月27日(月)
  サブプライム問題は最終局面へ。
  新興市場底入れか。
  東芝プラントと加ト吉。

(一)住宅問題は米大統領選挙最大の争点。

(1)住宅はアメリカ人の最大の財産である。大統領はアメリカ人の財産を守る責任がある。それゆえ来年の大統領選挙を控えて民主党の大統領候補はサブプライムローン問題の解決を競っている。
(2)サブプライムローンはリスクの高い特殊な住宅ローンで、一般の住宅ローンとは内容が違う。税制が根本的に異なる日本では、アメリカの住宅ローンや住宅相場が危機に陥っていると誤解しがちだから、改めて以下に実情を指摘しておきたい。
(3)アメリカでは住宅ローンの金利が全額、税額から控除されるから、大半のアメリカ人は節税のために住宅ローンを組んで住宅を買う。そして定年でリタイアした時には償却を終えた住宅を売却して老人ホームに入り、豊かな老後を楽しむのである。
(4)アメリカの住宅は過去30年間、所得水準の上昇にスライドして年率2〜3%で上昇し、アメリカ人の財産形成を支えてきた。直近の2〜3年間は価格上昇が急であったから短期的な調整はやむを得ないとしても、住宅ローンが破綻する可能性は殆どない。アメリカの住宅相場は日本のマスコミが騒ぎ立てるよりもはるかに回復が早いだろう。
(5)これに対してサブプライムは税金を払わず、本来ローンを組む資格がない低所得者が値上がりを見込んで購入したローンだから、住宅相場が下落すれば破綻するのは当然である。金融市場が金余りで貸し出し競争が過熱していたから、プロの金融機関がリスクを忘れて貸し込んだとがめが出た。それゆえ金融機関が損失をかぶるのは当然である。
(6)しかしFRBはサブプライムローンが住宅相場全体に悪影響を及ぼすことを放置できないから、金融緩和と金利引き下げによって早期解決に乗り出した。

(二)サブプライムローン問題は最終段階へ。

(1)サブプライムローンで金融機関がかぶる損失は最大でも13兆円程度と見込まれており、ここ数年、高収益を謳歌した金融機関にとってはたいした負担にならない。
(2)サブプライムに最も深く関与したと見られていたリーマン・ブラザーズは関与した子会社を清算してこの分野から撤退すると表明した。損失を早期に確定するための決断を評価して、株価は即日反騰に転じた。
(3)しかし信用不安が拡大して正常な住宅ローンを扱う金融機関にも資金が回らない状況が派生した。
(4)この点でもバンクオブアメリカは住宅ローン最大手のカントリーワイド・ファイナンシャルに20億ドルを融資して危機を凌いだ。
(5)ウォーレンバフェットも住宅ローン大手の買収に乗り出した。
(6)これらの状況から、金融不安は最終段階に入ったと見てシティーバンクを筆頭に銀行株、証券株が一斉に反騰に転じた。日本の銀行株も追随して上昇した。
(7)値幅整理は終わった。後は日柄整理だろう。

(三)中国の国債25兆円発行に注目。

(1)中国は9月に25兆円の国債を発行する予定である。国内の過剰流動性を吸収し、過剰投機を抑制するためである。
(2)その25兆円を、中国政府は全額世界の優良株に投資する可能性がある。事実となれば世界の株価は急騰するだろう。中国は世界一の貿易大国に躍進したが、金融市場でも圧倒的な存在感を示すことになる。
(3)前回に、私はアメリカのポールソン財務大臣がゴールドマンサックス時代から通算100回中国を訪問し、要人と会談を重ねていると指摘した。
(4)中国は何よりも人間関係、人脈を重視する国である。かつて日中国交回復を断行した田中角栄に対して中国政府は終生敬意を払い、信頼は田中真紀子に及んだ。
(5)ポールソンに対する中国政府の信任の厚さから見て、25兆円の国債発行とその使途について、中国はポールソンの助言を受けていると私は思う。
(6)日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国であるが、政治的な存在感は中国に比べると無いに等しい。政府日銀は貯め込んだ外貨を米国に迎合してひたすら米国国債に投資しており、その一部を株式に投資するという発想なんて聞いたことがない。日銀は8月も公定歩合引き上げを決断せず、円を国際的投機にさらして、世界の金融不安を増幅している。
(7)そんなときだけに、中国政府の国債発行と資金の行方に注目したい。

(四)新興市場、ついに底入れか。

(1)私はこれまでも度々新興市場株にチャンスがあると述べてきたが、チャンスどころか徹底的に暴落して読者に迷惑をかけた。大暴落した理由は次の通りだろう。
(2)第1に、ライブドア事件をきっかけとして新興市場に対する会計監査が異常に厳格となり、買収した企業や投資した資産に対して大幅な償却を強制したから、減額修正や赤字転落が続出した。
(3)第2に、その結果、新興市場株を組み入れていた成長株投信が破綻し、問答無用のたたき売りに追い込まれた。第3に、外国人投資家が「借り株」を用いて売り崩しの追い打ちをかけた。
(4)しかし悪材料もいつかは好材料に変わる。第1に、売るべき機関投資家はほぼ売り尽くした。トレンドが変われば成長株投信も復活するだろう。第2に、9月決算の接近で楽天などに「借り株」の返済らしき買いが見える。
(5)第3に、過大な償却を強制された新興企業の中には、資産売却によって予想外の大幅黒字を計上する企業が続出する可能性がある。
(6)その結果、先週には売り込まれていた新興市場株の中から急騰する株が続出した。例えば、GCAの渡辺社長は25日付日経で手数料1億円以上の大型買収案件が15〜20件進行中だと語っている。表面化すればさらに株価を刺激するだろう。例えば、スパークスやNIF-SMBCも業績底入れが見えれば、高騰する可能性がある。
(7)さらに、新興市場では時価総額が10分の1以下に激減する企業が続出したから、海外の投資ファンドが買収の機会をうかがっている。
(8)ただし、新興市場の魅力はあくまでも旺盛な利益成長力にある。例えば、前期、今期とも利益倍増のネクストに注目。

(五)利益急増のライブドア。

(1)ライブドア事件が発生したとき、私は上場廃止に強く反対した。現金700億円と優良子会社群を抱えたライブドアは破綻するはずがないのだから、上場廃止は投資家の利益を損なうと主張し、合わせてホリエモンを弁護した。
(2)しかし上場廃止が決定し、個人投資家は1株100円で投げ売りし、外国人投資家が全面的に買い向かった。
(3)日経は先週、そのライブドアが子会社の弥生を売却して500億円以上の利益を得たと報じた。
(4)ライブドアが上場廃止後に売却した子会社は皆黒字であったから、再上場すれば驚くべき高値が付く可能性がある。マスコミが袋だたきにしたホリエモンは名誉を回復するだろう。その時たたき売りを強制された投資家の怒りが再燃するだろう。
(5)私がここであえてライブドアにふれたのは、新興市場には苛酷で不公平な償却を強いられた企業が多く、利益の揺り戻しが期待できると思うからである。
(6)それらの企業はライブドアと同様に資産売却や合併で思いがけない再生、復活を果たす可能性がある。

(六)材料株その1。受注激増予想の東芝プラント。

(1)暴落直後だけに、大型株は一気に全値戻しというわけにいかない。
(2)私は経験則からこういう局面では材料株に出番が来ると思うが、平時よりも大型の材料が必要である。
(3)その意味で私は東芝プラントを最右翼に推したい。
(4)昨年米ウエスティングハウスを買収した東芝はあっという間に23基の原発を受注し、さらに増加する見込みである。
(5)東芝グループで原発の設計、施工を担当する東芝プラントは今後10年以上、受注の切れ目がないだろう。
(6)3年前に石油相場が暴騰し始めた時、石油化学プラントの千代建と日揮が短期間に10倍に暴騰した。原発の新設需要のスケールはこれに匹敵する。

(七)材料株その2。JTによる買収必至の加ト吉。

(1)売上高3,400億円。利益剰余金390億円。冷凍食品世界1。予想株価収益率12倍。という内容に比べて、現在の時価総額850億円はべらぼうに安い。
(2)加ト吉の金森社長はJTの元食品担当専務である。専務もJTの元食品部門常務である。
(3)オーナーの加藤会長以下、旧役員は1人を残して全員退任した。加藤氏は加ト吉の経営危機を救済したJTによる買収,再建を待望しているだろう。
(4)JTは英国のガラハー買収で利益が急増し、意気盛んである。
(5)そのJTは、かねてから斜陽のたばこに代わる活路を薬品、食品、農業に求め、食品では加ト吉に的を絞って最高の人材を送り込んだ。
(6)私は、JTが加ト吉を買収しない理由を見つけることができない。買収実行の時期を特定することはできないが、遠いとも思わない。
(7)万が一、買収が遅延したとしても、理論的株価の割安は歴然としている。
(8)加ト吉が真空パックした「炊きたてご飯」をぜひ試食されたい。誰でもその美味に驚き、即座に技術力の高さを理解するだろう。ハイテクはITの専売特許ではない。