2007/8/6

  2007年8月6日(月)
  サブプライム問題の現状と行方。
  逆行高する東芝プラント。

(一)サブプライム問題。

(1)上海を除く世界の株式市場が急落し、先週は安値引けとなった。現実の株価を見る限り、底入れの指標は乏しい。
(2)経済指標や業績は順調で、悪材料はサブプライムローン一点である。
(3)リスクの高いサブプライムローンを組み入れていたヘッジファンドが含み損の清算に踏み切り、閉鎖や縮小に追い込まれて保有株式を売却する動きが表面化した。日本でも外国人の売り越しが続いたが、サブプライムローンに関与したヘッジファンドの売りと推定される。
(4)サブプライムは元々リスクの高い特殊な住宅ローンであって、取り扱うローン会社も、そのローンを証券化した証券会社も、証券化したファンドを買ったヘッジファンドも限定的である。サブプライムローン問題が米国の、そして世界の金融市場を揺るがす問題に発展する可能性は少ない。
(5)米FRBのバーナンキ議長は、1.政策金利を引き下げる用意がある、2.しかしサブプライムローンに関与した金融機関は限定的で、自力で赤字を処理するだろう、として事態を静観している。
(6)野村證券は、米国野村證券が抱えたサブプライムローンの含み損750億円を6月までに清算した。
(7)米国の金融機関は超高収益を謳歌してきたから、野村證券同様にサブプライムローンに関与した傘下のヘッジファンドの含み損の清算に乗り出した。
(8)一方で、たたき売りされたサブプライムローンを売られすぎと見て買い向かっている金融機関がある。
(9)買い手があればこそ清算が進み、清算が進んだからこそ問題が表面化した。サブプライムローン問題は終結したわけではないが、株価は悪材料を織り込みつつある。

(二)相場観。

(1)中国経済は順調である。
(2)石油を初め、商品相場は高値圏を維持している。
(3)世界経済の拡大を牽引する中国と、株式市場に新規資金を投入しているオイルマネーが変調を来している気配はない。それゆえ私は世界の株式市場の上昇基調が壊れたとは思わない。
(4)今週末のSQを乗り切れば、前途に明るさが見えるのではないだろうか。
(5)円が反騰に転じた。円高は株高を誘発する。
(6)日本の株価は世界でもっとも出遅れていたが、次の上昇波動では反騰をリードする可能性がある。

(三)東芝プラント。

(1)中間期の業績予想を減益から大幅増益に修正した。
(2)下期予想は据え置いたが、次の理由で上期よりも下期、下期よりも来期の増益幅が拡大する、と私は思う。
(3)第1に、新潟の原発プラントのトラブルを契機に日本中の原発プラントの見直しが要求されているから、メンテナンス関連の工事量が急増する。
(4)第2に、米ウエスティングハウスを買収した東芝は原発の新規受注が激増した。アメリカの22基を初め、中国でも受注を確定した。それらの原発プラントの設計施工は東芝プラントに集中する。
(5)安全を絶対重視する原発は設計施工から部品調達に至るまで実績を最優先し、新規参入企業は殆どない。
(6)東芝にとって東芝プラントは不可欠の子会社だから、買収を避けるために絶対多数の60%の株式を保有している。同様に日立もまた日立プラントの70%を保有している。
(7)先に石油相場の急騰を受けて石油化学プラントの受注が激増し、千代建と日揮の株価が短期間に10倍以上に暴騰した。原発は地球温暖化を防ぐ最大の手段に浮上したから、東芝プラントの受注が急増し、増勢は長期にわたる可能性がある。
(8)東芝プラントは急落相場に逆行して新値を伺う位置を固めている。取り組みも接近している。あえて注目銘柄に推したい。

(四)円の実効為替レート(大暴落した円)。

為替レート

(1)チャートの上段は円対ドルの為替レートである。2004年以降、円はドルに対して下落した。
(2)下段のチャートは日銀が発表している「円の実効為替レート」である。2004年以降、円が世界中の通貨に対して大暴落した状況が鮮明である。
(3)2004年以降、世界中の中央銀行は一斉に公定歩合を大幅に引き上げたから、ゼロ金利を据え置いた円との金利差が急拡大した。その結果、円は特にポンドやユーロやニュージーランドドルに対して大暴落を演じたのである。
(4)例えば、ウォンが高騰したために韓国から観光客が大挙して九州に押しかけて、ゴルフを楽しんでいる。逆にヨーロッパに出かけた日本人はユーロが暴騰したためにホテル代の高騰に驚き、土産も買えずに帰国した人が多い。
(5)例えば、通貨が急騰したヨーロッパでは、市民が株価と地価の高騰で金持ちになり、好景気を謳歌している。逆に円が急落した日本では、株価と地価の上昇率が世界最低で、消費に勢いがない。
(6)日銀が金融政策を誤ったために、日本だけがわきかえるような世界の好景気から取り残されたのである。
(7)エコノミストやマスコミは日銀を支持して円高になると輸出が減って、企業業績が悪化し、不景気になると論じているが、大嘘である。ドイツはユーロの急騰をはね返して、輸出が史上最高を大幅に更新し、輸出企業の業績は絶好調である。

(五)反騰に転じた円。

(1)円の暴落は、2004年以降に日銀が世界の金利上昇に追随しなかったために起こった。チャートを見ればその経過は一目瞭然である。
(2)通貨を強くすれば景気が好転することは、90年代に米国の財務長官に就任したルービンが明快に証明している。すなわちゴールドマンサックスの会長から米国の財務長官にスカウトされたルービンは、ことあるごとに「アメリカはドル高を望んでいる」と公言した。自動車を初めとする輸出産業は国際競争力を失うとルービンに抗議したが、ルービンはひるまずドル高政策を進めた。
(3)ルービンが本気でドル高を望んでいると知って世界中のホットマネーがドルに向かい、ドル相場は高騰した。ドル高の結果、アメリカの株価と地価は力強い上昇に転じ、景気が好転して自動車の販売が急増した。ドル高政策に反対した輸出産業はルービンの魔術に驚き、沈黙した。
(4)日銀はなぜ日本を貧乏にするゼロ金利政策にこだわるのだろう。日本のエコノミストとマスコミは、なぜルービンの成功体験に学ばないのだろう。
(5)円安は百害あって一利もない、と私は思う。それゆえ私は終始一貫、日銀のゼロ金利政策を批判して来た。
(6)しかし日銀の金融政策に変化の兆しが現れた。売られすぎた円が反騰に転じる条件が成熟したと私は思った。私は6月以降、毎週円の反騰が近いと主張し、円高はついに現実となった。その結果、円売りのキャリートレードで大もうけした人は一夜にして、財産を失った。
(7)円高は目先一服しても、数ヶ月後に再騰を再開するだろう。それゆえ外貨建て投信をお持ちの投資家に利食いを奨めたい。
(8)くわしくは次回以降に述べたい。