2007/7/30

  2007年7月30日(月)
  サブプライム問題は最終局面へ。
  円相場は底入れ、反騰へ。

(一)サブプライムが火をつけた世界同時株安。

(1)先週、ニューヨークダウはサブプライム(信用度の低い住宅ローン)問題の悪化を嫌気して急落した。
(2)サブプライム問題はヨーロッパにも飛び火してヨーロッパ市場も全面安となった。しかしヨーロッパの金融機関はサブプライムに殆ど関与していない。
(3)日本では野村證券の米国子会社がサブプライムローンの赤字750億円を6月までに償却した。しかし野村證券以外に日本で損失が広がる可能性は殆どない。
(4)すなわち株価急落の背景には2つの要因がある。第1に、サブプライムを証券化した証券会社やこれを購入したヘッジファンド等の赤字が急拡大した。
(5)第2に、サブプライム問題を契機に、長期、大幅上昇を謳歌していた世界の株価が調整期に入った。
(6)しかし、野村證券がすでに750億円の赤字を処理したように、サブプライムに関与した金融機関の赤字処理が急速に進みつつある。株式市場への影響は最終段階に入ったのではないか。

(二)サブプライム問題の虚実。

(1)信用度の低いサブプライムローンは住宅ローン全体から見れば16%に過ぎない。84%は健全なローンである。元々サブプライムローンの延滞率は10%と高かったが、直近では住宅市場の悪化で16%に上昇した。
(2)延滞した債権がすべて不良債権化するわけではない。担保の住宅を処分して回収できる部分もある。
(3)しかしサブプライムローンを証券化したファンドはテコを聞かせて利回りをかさ上げしていたから、不良債権をかぶる比率も高くなる。直近では関連ファンドの相場が60%安まで急落した。
(4)相場の急落はファンドを保有していたヘッジファンド等が不良債権の処理を急ぎ、一方で暴落したファンドを下げすぎと見て買いあさっている金融機関があることを示している。
(5)すなわち、野村證券と同様に関与した金融機関の赤字処理が進展し、サブプライム問題がピークを過ぎつつあることを示している。
(6)マスコミは事件の後を追って大騒ぎするが、投資家はマスコミ報道の虚実を冷静に見極める必要がある。

(三)アメリカ人にとって住宅ローンは貯蓄である。

(1)日本では「アメリカ人は借金まみれで貯金しない」という論評がまかり通っているが、大いなる誤解である。
(2)アメリカでは住宅ローンの金利は全額税額控除となる。例えば年収1,000万円で300万円の税金を払っているサラリーマンは、住宅ローンの利息が年間300万円まで税金がタダになる。それゆえアメリカ人は年収が増えると節税のためにより大きな家に引っ越して、住宅ローンを増やす。アメリカでは2軒目の家まで節税の対象となるから、住宅のローンを完済すると、次ぎに別荘を買う。
(3)そして引退すると住宅を売って老人ホームに入り、豊かな老後を楽しむ。かくして住宅ローンは老後に備えた最善の貯蓄、財産作りとなるのである。
(4)それゆえアメリカでは、好景気で年俸が増える時には住宅価格が上昇しやすい。サブプライム問題は局地的で、住宅価格が暴落する可能性は低い。
(5)ところが所得が低くて節税効果が期待できない人が、値上がりを期待して高金利の住宅ローンを組んだ。これがサブプライムローンの問題点である。サブプライムローン延滞率は通常は10%程度であるが、直近では金利が上昇して、支払い利息が増えたために16%に拡大した。次項で問題点を整理しておきたい。

(四)サブプライムローンの問題点。

(1)サブプライムローンは住宅ローン全体の14%に過ぎない。
(2)そのサブプライムローンの延滞率が、金利上昇のため通常の10%から16%に増えた。
(3)延滞債権が破綻しても、担保の住宅を処分すれば半分は回収できる。
(4)サブプライムローンを証券化したファンドを最も多く保有しているのはヘッジファンドである。野村證券等の証券会社もある。
(5)それらの金融機関が、含み損の償却に踏み切ったために関連ファンドの相場が60%も暴落した。
(6)一方で、暴落したファンドを下げ過ぎと見て買いあさっている金融機関がある。
(7)これらの経過から、サブプライム問題はピークを過ぎつつあると私は思う。
(8)バーナンキFRB議長は問題が深刻化すれば政策金利(公定歩合)を引き下げる用意があると言明している。
(9)今暴落したファンドを買い集めている金融機関は大もうけするだろう。
(10)投資家は問題の虚実を冷静に見極める必要がある。

(五)円反騰の衝撃を軽視するな。

(1)日本にとってはサブプライム問題よりも円反騰のインパクトの方が断然大きい、と私は思う。
(2)27日付日経金融新聞は円キャリートレードの残高が23日現在で過去最高の6兆円に達したと報じている。
(3)円キャリートレードは担保の40倍まで相場を張ることができるのだから、極端に投機的な先物市場である。担保力40倍の投機市場では、1円の円安で売り手は40円の利益を得るが、逆目が出れば40円の損失となる。少ない資金で大もうけができる代わりに、簡単に担保が飛ぶ。
(4)テレビに出演するプロの為替ディーラーはみな、円と外国通貨の間に金利差がある限り円は値下がりし続けると解説しているが、冗談ではない。日本は世界第2位の輸出大国、世界第2位の貿易黒字大国である。その日本の円がいつまでも独歩安を続けることを世界中が容認するはずがないことは、常識があればわかる。プロの為替ディーラーが常識を忘れたほど、円は長期にわたり独歩安を演じたのである。
(5)最近では円キャリートレードで成金が続出し、各地で脱税事件が発生しているとマスコミが報じた。しかし円が反騰に転じれば、喜劇は一夜にして悲劇となる。
(6)1人の人間が下げ相場と上げ相場の両方を泳ぎ切ることは至難の業である。私は売りが下手だから、常に強気の視点で相場を読む。そのために今回の円の反騰を的確に予測することができた。
(7)果たして円は1週間あまりでドルに対して5円、ユーロに対して6円も値上がりした。先物で円を目いっぱい売った投資家はドルで200円、ユーロで240円の大損害を受けたのだから、いくら追い証を入れても追いつかない。
(8)短期的には、円高は踏み上げが一巡すれば沈静するだろう。
(9)しかし数ヶ月後に2段上げに入るだろう。サブプライムローン問題と同様に、外貨建て投信の大量解約が起こると思うのである。その経過を次項で述べたい。

(六)円の2段上げを予想。

(1)現在では日本の銀行ばかりか証券会社までが外国証券が組成した外貨建て投資信託を売りまくっている。年率30%を超える超高利回りが人気を集めているが、円安から円高に転じれば、長所は短所に一変する。
(2)例えば野村證券は2000年に戦略ファンドを設定して当時最大の1兆円を集めたが、ITブームが終わると暴落して浮上できなくなった。野村證券は数々の優良ファンドを売り出しているが、パンフレットに記載した運用方針を変更することができないから、相場の局面によってファンドごとに明暗が分かれる。
(3)サブプライム債権は延滞利息が6%増えただけで60%も大暴落した。テコを利かせて利回りをかさ上げしていたから、一旦下落に転じるとテコが逆作用を起こし、下げが下げを増幅したのである。
(4)外貨建て投資信託も、サブプライムファンドと同様にテコを利かせて資金を膨らませているから、一旦裏目が出ると利回りがマイナスとなり、解約が集中するとさらに値下がりを加速する。
(5)特に外貨建て投信は円相場と連動するが、私は日銀の金融政策も円高方向へ修正されると思う。
(6)第1に、日銀には日本の金利水準を世界水準と整合させる責任がある。第2に、平時に公定歩合を適正な水準に引き上げておかなければ、不況に遭遇したとき金融緩和によって景気をテコ入れすることができない。第3に、孤立した金融政策が円相場に投機筋の介入を招いている。
(7)これからは、内外の金利差は縮小に向かい、異常な円安トレンドは正常な円高トレンドに変わるだろう。

(七)相場観。

(1)サブプライム問題解決の方向が見えれば、世界の株価は反騰に転じる。その時期は近いと私は思う。
(2)円高は、一旦は沈静するが、日銀の金融政策の基調変化を受けて、本格的な上昇局面を迎える。
(3)円高は株高、円安は株安である。次の上昇局面では出遅れていた日本株が人気を集める可能性が高い。
(4)マスコミの円安肯定論、円高不況論は事実に反する。現にユーロの大暴騰を受けてヨーロッパの景気は好調となり、株価と地価が高騰し、ドイツの輸出は史上最高を大幅に更新した。日本でも、1ドル360円から80円に大暴騰した課程で、日本経済は超高度成長を実現し、日本の輸出産業は世界1に躍進し、日経平均は39,000円に暴騰した。
(5)少なくとも今日現在、世界の株価の暴落が商品市況に飛び火する気配は見えない。商品、特に石油相場が65ドル以上の高値を維持する限り、産油国から株式市場への資金流入が続く。
(6)株価は70%以上、値幅調整を終えたと思うが、日柄整理が尾を引く可能性がある。
(7)その場合は中小型株、材料株が人気をつなぐのではないか。