2007/7/17

  2007年7月17日(火)
  史上最高値を更新したNYダウ。
  円高・株高へ、日本の時代が到来か。

(一)弱気論者は理路整然と相場を間違う。

(1)株式市場には「弱気論者は理路整然と相場を間違う」という格言がある。強気のアメリカでもサブプライム問題(信用度の低い住宅ローンの破綻)が過大に悪材料視され、住宅ローンや 住宅産業の不振が消費に悪影響を及ぼすという弱気論が説得力を持ち始めていた。しかし、同時に弱気論が空売りを誘発し、史上最大の空売りがNYダウ最高値更新のエネルギーを蓄積していたのである。
(2)ニューヨークダウは先週、一気に史上最高値を更新し、弱気論者は窮地に追い込まれた。不発を予想された夏相場が十分期待できる。
(3)特に日本は世界で最も弱気論が盛んな国で、エコノミストやマスコミを初め証券会社までがことあるごとに弱気に傾きやすい。弱気論者の欠陥は国際感覚の欠落にある。商品相場が大暴騰し、新興経済大国が台頭する時代に、景気や株価を国内データばかりで分析し、巨大資本を擁した新興アウトサイダーが世界の金融市場の一大勢力に浮上した現実を見落としている。例えば、
(4)第1に、中国が日本を圧倒する世界最大の貿易黒字となり、黒字幅は増勢一途である。中国は外貨の投資先をこれまでの米国国債一辺倒からユーロや株式や商品に多様化し始めている。
(5)第2に、ロシアは今や世界最大の産油国となり、巨額のオイルマネーを石油以外の資源や資源株に投入しており、アルミではスイスのアルミ会社を買収して世界1にのし上がった。
(6)第3に、ブラジルも石油の輸入国から輸出国に大転換し、歴史的なインフレ体質を克服した。豊富な農産物や鉱物資源は財政を一気に改善するだろう。
(7)中東産油国は膨張一途のオイルマネーを世界の株式に投資し、世界の株価を水面下で支配する巨大なアウトサイダーとなった。
(8)しかし日本では日銀ばかりか、財務省やエコノミストの議論もちまちました国内データに偏り、国際的視点が欠落しているから、金利や為替が、国際水準からかい離する一方となった。
(9)日銀は先週、金融政策の決定会合を開いて、7月利上げを見送った。利上げを主張した委員は6人中1人だけであったが、日銀総裁は談話で8月利上げの意思を明快にした。8月には参議院選挙が終わり、政治的圧力も後退する。日銀はついに金融政策を国際水準に整合させることを決断したと私は感じた。

(二)円安は株安、円高は株高。

(1)日本の株価や地価の上昇スピードは世界のいかなる国と比べても劣っている。諸悪の根元は円安にある。
(2)円高即輸出株売りと報道するマスコミ報道もまた世論をミスリードしている。ユーロが大暴騰したヨーロッパは輸出が絶好調である。通貨が急騰したアジア諸国も輸出が急増している。日本自身も円が大暴騰した時代に経済が成長し、輸出企業が大成長した。
(3)金利差がある限り円が限りなく下がるという論理も不可解である。円の一方的な暴落を国際社会と日本人自身がいつまでも受け入れるはずがない。
(4)円の歴史を振り返れば一目瞭然、円高は株高であり、円安は株安である。
(5)それならば円が上昇する可能性があるかといえば、先週にもその時期は近いと述べた。
(6)果たして先週、円は突然1日で2円以上も急騰した。これは重要な変化の徴候で、8月に転機ありと予想した私見を勇気づける現象であった。
(7)日銀は先週、7月の公定歩合据え置きを発表したが、福井総裁は談話の中で8月利上げを明快に打ち出した。私は連続的利上げへの決意を表明したと感じた。
(8)もし円が底入れすれば、外国人投資家は強い円を目指して日本の株式や不動産に対する投資を積極化するだろう。その場合、8月相場は大いに期待できる。

(三)住友金属鉱山に迫る巨大資本の外圧。

(1)カナダのアルミ大手アルキャンを金属資源のリオ・ティントが買収した。米国のアルコアがアルキャンに買収を仕掛けていたところへ、リオ・ティントが30%を上回る巨額の買収金額を提示してかっさらった。
(2)アルキャンの買収戦に敗れたアルコアを資源大手ピリトンが買収するという噂が高い。
(3)ロシアと2大資源保有企業が世界のアルミ市場を3分割する動きは、資源パワーが世界市場の囲い込みに踏み出したことを示す大事件である。世界的な資源寡占化の大波が日本に及ぶのは時間の問題だろう。
(4)住友金属鉱山は日本最大の資源株で、その去就に世界の巨大資本の注目が集まるだろう。
(5)住友金属鉱山の主力3品目をチャートで見ると、NY金は700ドル台を目指す上昇期に入った。昨年買収したアラスカの金鉱山がフル操業となり、菱刈を上回る主力金鉱山にのし上がった。金のETFが間もなく東証、大証に上場されることも産金株としての人気を刺激するだろう。
(6)銅は再度史上最高値を伺う水準に近づいた。
(7)ニッケルは2年で3倍に大暴騰した後、押し目を形成している。反騰に転じれば3部門そろい踏みで、鬼に金棒となる。
(8)業績はもちろん、国際的な資源大手とロシア、中国の資源囲い込み戦略にも注目を怠れない。