2007/5/21

  2007年5月21日(月)
  それでも底入れは近い。
  日銀の優柔不断を叱る。

(一)弱気の日経が驚く弱気論。

(1)日経編集委員の前田昌孝氏は私には弱気論の代表格と見えるが、その前田氏が5月15日付「一目均衡」で日本の証券界は弱気に傾き過ぎていると次のように述べている。
(2)「株価の暴落懸念があちこちで語られ始めた。マネックス証券は先週、投資家向けメールの表題に『暴落懸念も強く買い上がりにくい展開』と書いた。懸念の対象は米国や中国株だが、よその国の心配までして株式を買わないのが、今の東京市場のムードだ。」
(3)前田氏はさらにいくつかの弱気論を紹介しているが、前田氏にさえ日本の証券界が弱気すぎると見えるところに、病根の深さがある。
(4)それならば史上空前の繁栄を謳歌する世界の証券界で、日本だけが、なぜ、いつから、いかにして、異常な弱気論に支配されたのだろうか。
(5)以下に日本の弱気論の原点を探り、私の解決策を提示したい。

(二)デフレの泥沼に陥れた三重野総裁と竹中大臣。

(1)1990年に不動産の世界同時暴落が発生した。過剰流動性がピークに達していた日本の不動産は世界で最も激しい暴落を演じたが、このとき日銀総裁に就任した三重野氏は「バブルの息の根を止めて見せる」と宣言して銀行の窓口規制、総量規制を強行した。糧道を断たれた不動産はさらに大暴落し、日本経済は長期デフレの泥沼に落ち込んでいったのである。
(2)しかし日本とは対照的に米国は官民協力して不動産不況を2年で克服し、英国が追随した。それから現在まで15年間、米英両国の不動産相場は一貫して上昇し、世界的な資産インフレ時代の突破口を開いた。
(3)奇怪にも日本のマスコミは三重野総裁を「平成の鬼平」と賞賛したが、米国のグリーンスパンFRB議長は明快に「失政」と断定した。
(4)グリーンスパンは3年前に米国の政策金利の連続的引き上げに踏み切るに際して三重野総裁の金融引き締め政策を徹底的に分析し、「オーバーキル(殺しすぎ)」と断定した。その上で、米国は日銀の失敗を繰り返さないために早期利上げでインフレを未然に防ぎ、将来のデフレに備えるのだ、と言明した。後任のバーナンキ議長もグリーンスパンの金融政策を踏襲した。
(5)ところが2001年に金融担当大臣に就任した竹中平蔵は三重野総裁に輪をかけたデフレ政策を断行した。すなわち借金の多い企業を過剰債務、その企業に融資する銀行を過剰融資と断定して倒産に追い込み、土地を担保とする伝統的な金融システムを徹底的に破壊した。同時に金融機関と企業が持ち合っていた株式の全面的売却を強制したから、長期不況で気息えんえんとしていた地価と株価はダメ押しの暴落を演じたのである。
(6)しかし大暴落した不動産と株式をユダヤ資本が一手に買い占めたから、私は「竹中大臣はユダヤ人の手先か」と批判したが、奇怪にも日本のエコノミストとマスコミは又しても竹中大臣の恐怖政治を支持した。
(7)アメリカ人は誰もが成功者を賞賛し、誰もが成金を夢見るが、日本のインテリは成金を憎み、成功者に嫉妬する傾向が強い。江戸時代に最下層の町人階級から成金、大金持ちが続出する一方、インテリで支配階級の武士が生活苦にあえいだが、「武士は食わねど高楊枝(ようじ)」とやせがまんを張った。私はやせ我慢の遺伝子をインテリが受け継いだのだと思う。日本のインテリは成功者に嫉妬して狂気のデフレ政策を支持したのである。
(8)21世紀に入ると世界経済は竹中大臣のデフレ政策をあざ笑うように爆発的な拡大成長期に突入し、株式、不動産、物価が一斉に高騰した。しかし日本人と日本企業は高度成長時代に築き上げた不動産や株式やゴルフ会員権等をタダ同然でユダヤ資本に奪い取られた。日本の証券界は相場の主導権をユダヤ資本に奪われて悲観論と無気力に覆われている。

(三)米国住宅不況論と中国経済破綻論。

(1)弱気論者の弱気は先天的だから、世界中でいくら空前の大インフレが進行しても弱気論を捨てない。昨年はエコノミストとマスコミの間でアメリカの不動産ローン破綻論による住宅不況論が流行した。
(2)しかしFRBはこのような事態に備えてすでに公定歩合を大幅に引き上げているから、いつでも金融緩和政策を打ち出す準備ができている。バーナンキ議長は混乱があっても局地で封じ込めると胸を張っている。
(3)アメリカの住宅不況論が沈静すると、弱気論者はいま中国株暴落説、中国経済破綻説を持ち出している。
(4)私も中国株は騰勢のピッチが強すぎるから暴落のリスクがあると思う。しかし上海市場の外国人買いの主役は日本人である。日本の個人投資家が弱気の日本株に見切りをつけて強気の中国株に群がっているのである。
(5)中国株が暴落するリスクはあるが、中国経済は波乱を乗り越えて成長力を持続すると私は思う。
(6)顧みれば、世界経済の奇跡といわれた日本の高度成長時代は30年間も続き、その間に日本は世界第2位の経済大国に躍進した。証券界は1960年代初めに証券ブームに沸いたが、65年に証券不況に遭遇し、山一証券が破綻して日銀特融を受けた。しかし証券不況は他の産業に波及せず、短期間に終息し、高度成長時代は1990年まで続いた。
(7)眠れる中国は今目覚めたばかりである。私は中国が30年後の2030年代に世界一の経済大国に躍進している可能性があると思う。
(8)私は米国の住宅不況や中国の経済の破綻よりも日銀の金融政策を心配している。グリーンスパンが「日銀は後手に回った」と批判した通り、現在も日銀だけが世界で唯一、ゼロ金利政策を続けている。ゼロ金利のままではデフレが深刻化した時に金融緩和のカードが切れない。

(四)福井日銀総裁の責任を問う。

(1)三重野総裁も竹中大臣も過去の人である。私はいま、日本株不振の最大の責任は公定歩合引き上げを決断しない日銀の福井総裁にあると思う。
(2)日本の景気は欧米と比較して決して悪くない。景気が好調な今、日本の金利を世界水準に整合させずして、いつやるのだろう。
(3)ゼロ金利こそ円安の原因であり、円安こそ株安の原因である。現に日本人自身が50兆円の円を売ってキャリートレードに走り、或いは中国株やインド株に投資している。日銀の優柔不断が円安を誘発し、ゼロ金利に愛想を尽かした投資家を海外のリスク市場へ駆り立てているのである。
(4)もし日本の預金金利が欧米並みの3〜5%であれば、日本人は700兆円の預貯金に対して30兆円の金利を受け取ることができる。海外に流出した円は国内に回帰し、消費や株式投資や住宅購入に向かうから、景気は好転して税収入が増え、政府は国債利払いの負担を軽減することができる。
(5)円安が株安を、円高が株高を誘発することは歴史を検証すれば一目瞭然である。ユーロが暴騰したヨーロッパでは海外資金が流入して株価と地価が高騰した。市民が資産インフを謳歌する風景は日本とは対照的である。
(6)円高が輸出競争力を阻害すると主張する日本のマスコミは事実を誤認している。日本の輸出企業は円高時代に成長し、いま欧州と中国は通貨の高騰をはね返して輸出を伸ばしている。
(7)日銀総裁は先週、物価が低迷しても公定歩合の引き上げはあり得ると発言した。遅きに失したが、ようやく現れた小さな変化の徴候を歓迎したい。

(五)それでも株価は上がる。

(1)株価が陰の極を示す徴候は騰落指数やチャートに現れている。
(2)弱気の前田昌孝氏にさえ、日本の証券界が弱気過ぎると見える。
(3)弱気論者は米国株5月暴落説を主張したが、NYダウを筆頭に世界の株価は連日のように高値を更新している。
(4)世界の株式、不動産、物価の連鎖的上昇は揺らいでいない。日本を除く世界中の市民がインフレがもたらす繁栄を謳歌している。
(5)外国人の間に、日本株出遅れ論が台頭してきた。
(6)クラブ9が厳選した銘柄も下落したが、チャートでは底値圏特有の下ひげが点灯している。

(六)アジア・メディア(2149)。

(1)新規上場株の中で例外的に株価が堅調である。
(2)中国企業ながら、審査が甘い中国よりもあえて審査が厳しい東証へ上場した。野村證券が80%の主幹事、電通が第5位の株主である。
(3)国営テレビの民営化を受けて中国でもテレビコマーシャルが始まったが、今のところ当社が独占企業である。
(4)中国のテレビコマーシャルは世界最大の潜在市場である。北京オリンピックを迎えて急成長時代が始まる可能性が高い。
(5)しかし政治的な背景など、不明な点も多いから、リスクが取れる投資家に奨めたい。