2007/5/14

  2007年5月14日(月)

(一)強気の世界。弱気の日本。

チャート1。主要国の株価(週足)。

chart01

(1)チャート1で、主要国の株価(週足)をご覧頂きたい。
(2)2月末に中国上海A株の急落を受けて世界中の株価が急落した。日本の弱気論者が一斉にすわ天井かとあわてたが、上海は即座に最高値を更新し、かえって騰勢を強めている。欧米市場も短期間に切り返し、その後は何事もなかったかのように、連日高値を更新している。
(3)しかし主要国の中で日本だけは2月高値を回復していない。
(4)先週の木曜日に欧米市場は久々に押し目を入れた。このときも東京市場は過剰に反応したが、欧米市場は一夜にして下げ幅の大半を回復した。
(5)弱気論に汚染された日本は、海外の株式市場の小さな押し目にも「水鳥の羽音に驚く平家」のごとく狼狽する。
(6)そこで先週に続いて、日本の株式市場の特異性を考えてみたい。

(二)空前の成長期を迎えた世界経済。

(1)21世紀に入って中国が2ケタの超高度成長期に入った。インドが追随し、世界人口の40%以上を占める2大人口超大国の高度成長期入りですべての鉱物、農産物、工業用資材が高騰した。
(2)資源高騰の恩恵を受けてロシアとブラジルが台頭し、2ヶ国に追随した。4ヶ国を合わせると世界人口の50%を占めるから、商品相場はさらに高騰した。
(3)4ヶ国の超高度成長は破綻するどころか、中東、中南米、アジア、アフリカの低開発国の成長を誘発した。経済成長は地球規模に拡大した。
(4)顧みれば、日本も60年代から80年代までの30年間に、世界経済の奇跡と呼ばれる高度成長を遂げた成功体験を持っている。第2次世界大戦の敗戦によって国土が焦土と化した日本が、無一物から世界第2位の経済大国に躍進したのである。
(5)しかし日本の高度成長を牽引した戦士たちは老齢化し、竹中大臣のデフレ政策に追いつめられて、第1線を去った。
(6)代わって台頭した新しいリーダーは輝かしい成功体験を知らず、90年以降のデフレ社会で頭角を表したから、竹中平蔵氏のデフレ政策を支持した。
(7)竹中氏は借金で不動産や株式を買った企業と、その企業に融資した銀行、すなわち高度成長時代に主役を演じた企業と銀行の経営手法を、不遜にも、国家権力を振るって断罪したのである。
(8)しかし、このときすでに竹中氏は欧米で進行していた資産インフレの大勢を見誤っていた。日本が長期不況に落ち込んでいた間にも、欧米では株式と不動産が一貫して、大幅に高騰していた。
(9)それゆえ竹中大臣が企業と銀行にたたき売りさせた不動産と株式を、ユダヤ資本がタダ同然で買い占めたばかりか、あっという間に日本の株式市場と不動産市場の支配権を奪取したのである。
(10)私は終始一貫「竹中氏はユダヤ資本の手先」と論じたが、奇怪にも日本の政界、実業界、言論界はみな竹中氏の暴力的なデフレ政策を支持した。
(11)21世紀に入ると世界経済は爆発的に拡大成長し、すべての物価が史上最高値を更新する大インフレ時代を迎えた。竹中氏のデフレ不可避論と苛酷なデフレ政策は完全に裏目に出た。中でも株式市場は挽回不能の深手を受けた。ユダヤ資本に主導権を奪われた日本の証券界には敗者の無力感が漂っている。
(12)日本のマスコミもアメリカとイギリスのイラク戦争の失敗ばかりを報道して、ブッシュとブレアの政権下で両国が史上空前の経済的繁栄を実現した事実を過小評価している。
(13)証券界は竹中氏の失政を徹底的に検証する必要がある。そうしなければ竹中氏のデフレ不可避論の呪縛を断ち切ることができず、インフレ景気に沸き返る世界の株式市場の活況に参加することもできない。

(三)私の相場観。

(1)私は強気であるが、相場が一直線で上がるとは思わない。短期的にも中期的にもどきりとするような調整局面に遭遇するだろうが、それでも上昇基調は簡単には崩れないと思う。
(2)日経と弱気論者は海外で押し目が入る度にすわ暴落かと色めくが、私は押し目を歓迎する。強気市場であればあるほど押し目は緊張感のガス抜きとなり、冷静さを取り戻すきっかけとなるからである。
(3)チャートを見れば日本株の相対的な割安が目立つ。しかし幸か不幸か日本の株式市場の主導権を完全に外国人が握った。日本人が弱気でも、外国人投資家は割安となった日本株を見逃さないだろう。日本再評価の時期は近いと思う。
(4)外国人投資家は世界の株式市場を一望に見渡し、チャンスを見逃さない。国内の弱気論も、遅まきながら外国人主導で払拭されるだろう。
(5)割安となった中小型株、材料株の人気も復活すると思う。

(四)住友金属鉱山(別子)の水準訂正が続く。

(1)チャート2で、別子の主力3商品の週足をご覧頂きたい。
(2)別子自身は今期の経常利益を2,000億円弱と予想しているが、上の商品相場から私は3,000億円と予想している。
(3)表1では、主力3商品の年間上昇率を試算した。

<表1>
 
06/3末
07/3末
上昇率
ニューヨーク金
581
663
114
ロンドン銅
5521
6932
125
ロンドンニッケル
15260
46125
302
単位:金はドル/トロイオンス。銅とニッケルはドル/トン。上昇率は%。

(4)主力3品目の上昇率から、私は07年3月末現在の別子の保有鉱山の含み益を5〜6兆円と推定したが、三菱UFJ証券は直近のレポートで10兆円と試算した。
(5)別子の業績予想は常に極端に保守的だから、埋蔵量についても三菱UFJ証券の試算が事実に近いだろう。含み益を10兆円、採掘コ ストを30%とすれば正味の含み資産は7兆円となる。
(6)別子は鉱石の大半を自山鉱から採掘しているから、含み益は絵に描いた餅ではなく期間利益に直結する。経営者が本気で商品相場が下がると思えば、先物市場で売りつなぎ、将来の利益を確定することもできる。それゆえ含み益7兆円に対する時価総額1.4兆円は過小評価である。
(7)株価が現在の水準に止まれば、外資による買収が起こり得る。海外の非鉄大手ばかりか、ロシア、中国も戦略的な資源確保を狙っている。
(8)それゆえ私は長期投資に分があると思う。

(五)富山化学。

(1)昨年4月に、アメリカで米シェリングプラウ社が申請していた新型抗生物質ガレノキサシンの製造認可が下りたとき、富山化学は1,400円に暴騰した。しかし間もなくシェ社が申請を取り下げたために、株価は暴落した。
(2)クラブ9が問い合わせたところ、シェ社はヨーロッパでガレノキサシンの製造申請を維持しており、今年6月に認可が下りる予定だという。日本でも前後して認可が下りる可能性が高い。
(3)現在発売中の抗生物質が耐性菌の発生で軒並みに薬効を失っており、ガレノキサシンを発売すれば日欧で短期間にトップシェアを握るという予想が有力である。
(4)すでにフェーズ1を終了したアルツハイマー治療薬とリュウマチ治療薬もライセンスの導出交渉が進行中である。
(5)鳥インフルエンザ特効薬T-705は日本と米国のフェーズ1終了が近い。日米の情報開示に注目したい。
(6)以上4品目は7月までに成否の情報が開示される可能性が高い。
(7)強気の投資家には買い出動の好機だろう。