2007/5/7

  2007年5月7日(月)
  史上最大のインフレを謳歌する世界。
  デフレにうちひしがれた哀れな日本。

(一)小泉首相、竹中大臣による独裁政治の後遺症。

(1)19世紀にドイツの哲学者マルクスが発信した「共産党宣言」を受けて、20世紀に共産主義国家が誕生した。革命を遂行する過程でスターリンは2,000万人を、毛沢東は5,000万人の同胞を虐殺した。しかし、自由平等の理想を掲げて誕生した共産主義国家は例外なく、共産党独裁の階級社会を 生み、貧困に陥った。
(2)20世紀にヒットラーがナチスを率いてドイツで独裁国家を建国し、ヨーロッパ大陸を席巻。500万人のユダヤ人を虐殺した。
(3)人類は共産主義体制と独裁政治体制を崩壊させるために大きな犠牲を払い、自由主義、民主主義、資本主義に勝る政治体制が存在しないことを学んだ。
(4)しかし21世紀の初めに、日本で小泉首相が独裁権力を振るい、竹中平蔵氏を用いて企業の抹殺を断行した。竹中平蔵氏は過剰債務、過剰融資の名の下に企業と銀行を名指しして、倒産に追い込んだのである。
(5)私は帝国陸軍の青年将校による軍部独裁を想起し、民主国家にあるまじき蛮行を徹底的に批判した。しかし奇怪にも言論界の主流を形成していたエコノミストやマスコミは、悪夢のような独裁的政治手法を支持したのである。
(6)竹中大臣の恐怖政治が残した後遺症は深刻である。日経平均株価は39,000円から7,000円に、日本の地価は2分の1以下に大暴落し、大暴落した 株式と不動産をユダヤ資本が一手に買い占めた。その結果、日本の上場株式の50%を支配していた金融機関と事業会社が大株主から姿を消し、代わってユダヤ系資本が30%を支配するに至った。どの上場会社がいつ外資に買収されてもおかしくない状況下にある。銀行融資の糧道を断たれた企業と不動産業者は、保有資産をたたき売りして銀行融資を返済した。巨額の資金を投入したゴルフ場やリゾートホテルをタダ同然でたたき売りした。大暴落した不動産をユダヤ資本が一手に買い占めた。
(7)しかし更に大きな失政は日本の金融機関、エコノミスト、マスコミをデフレ不可避論に駆り立てたところにある。証券界は無気力となり、東京市場の支配権をユダヤ資本に明け渡した。80年代に欧米の銀行、証券を圧倒して世界の金融市場の主役に躍り出た日本の銀行と証券は、今やユダヤ資本の顔色をうかがい、その動向に一喜一憂するばかりで、ユダヤ資本に挑戦する気概とノウハウを喪失した。
(8)さもありなん。現在のエコノミスト、マスコミ、金融機関のリーダーはみな1990年以降のデフレ時代に頭角をあらわしたから、一致して政府のデフレ政策を支持し、容認している。
(9)激しい円高とインフレを克服して日本を世界第2位の経済大国に押し上げた高度成長期の立役者は90年以降のデフレ時代に地位を追われ、富と名声を失った。80年代に世界の銀行ランキングの上位を独占した銀行はもはや栄光の痕跡すら止めていない。

(二)事実を見ない、知らない日本のエコノミスト。

(1)その間に欧米では金融機関が超高度成長を遂げた。今日では欧米の主要国家で金融機関は全産業中、突出した巨大利益を計上する中枢産業に躍進した。
(2)中でも、イギリスのシティーとアメリカのニューヨークには年俸1億円を超える証券マンが数千人単位で輩出している。証券会社の経営者の年俸、証券会社自身の利益を比較しても、すべての指標で米英は日本をケタ違いで圧倒している。
(3)しかるに証券系のエコノミストで証券業界こそ日本経済最大の弱点であると指摘した人を私は見たことがない。世界の主要な証券会社の収益力を時系列で比較し、閉塞状況に追い込まれた現状の打開策を提示しない証券系エコノミストの意見を、私は信用しない。
(4)80年代に日本の金融機関は随所で欧米勢を圧倒していたが、今日では日本国内でさえ欧米勢に支配されている。彼我の決定的な格差は日本の金融機関が竹中政治に屈服し、日本のエコノミストが竹中理論を支持したときから、急速に進行した。
(5)日進月歩の自動車や家電に比べれば一目瞭然、日本の金融機関の指導者には独創的な発想とノウハウが欠落し、無気力が蔓延している。

(三)インフレこそ繁栄の条件。

(1)私は72才。80年代のわきかえるような日本の繁栄を体験したが、今ではどこを見渡しても先輩同僚の元気のよい姿が見えない。
(2)私の思想はキャッシュフロー重視の竹中理論の対極にある。私は資本主義社会ではデフレが異常でインフレが正常だと思っている。現在のような長期のデフレ時代の後では、インフレ時代に備えてキャッシュをモノに換えた方が断然有利だと思う。
(3)私は2001年に『不動産が値上がりする』(主婦と生活社)を出版して、第1に、政府の財政資金に頼らなくても銀行と不動産会社が不動産投信を大量に設 定すれば不動産不況を自力で克服することができる、第2に、80年代に株式を持ち合った企業が相互に持ち合った株式を買い戻して消却すればバブル時代に水ぶくれした株式市場は青春期の需給関係を回復できる、第3に、投資家は今こそ不動産と株式を買う好機だと論じた。
(4)デフレ時代には資産が目減りするが、インフレ時代には資産が増加する。通貨と物価の暴騰に見舞われたヨーロッパでは市民がインフレによる繁栄を謳歌し、デフレ待望論は皆無に近い。しかし日本ではインフレ恐怖論が支配的である。
(5)政治家はなぜインフレを恐れ、日銀はなぜ公定歩合の引き上げを拒み、エコノミストはなぜ弱気の虜となり、マスコミはなぜ円高恐怖心をあおり、年金運用者はなぜ日本株を買わず、日本人はなぜインフレ政策を要求しないのだろう。
(6)今30〜50兆円を円キャリートレードに投入している人たちがいる。デフレの円よりもインフレのユーロに換えた方が得だと気がついたからである。誰が何と言おうと、世界の現実を見ればインフレは儲かる。
(7)私は日本の証券界に奮起を促したい。デフレぼけし、弱気ぼけした日本国内から目を海外に転じなさい、と。ゴールデンウィークに海外へ出かけた人はホテル代や食事代の高騰に驚き、そのインフレを謳歌する市民の活力にもっと驚いただろう。世界中が今史上最大の大インフレ時代を迎えて、インフレがもたらす繁栄を謳歌している。
(8)21世紀初頭に、世界人口の半分を占めるBRICs(中国、インド、ロシア、ブラジル)が2ケタ成長期に突入し、すべての物価と株価と地価が循環的に高騰する大インフレ時代を迎えた。欧米はもちろん、中南米でも、アフリカでも、中東でも、アジアでも、オセアニアでも、日本を除く世界中で、株式や不動産や商品は競い合って最高値を更新し 、人々はインフレ利益を満喫している。
(9)しかしそれでも私は日本の株式市場の将来を楽観している。『不動産が値上がりする』で私が論じたとおり、不動産投信は不動産不況を克服する特効薬となった。企業の自社株買いは年々激増している。日本だけがいつまでもデフレに沈み込んでいるとは考えられない。日本人は間もなく政府のデフレ政策を拒否し、エコノミストの弱気論の呪縛を断ち切るだろう。

(四)好転する相場環境。

(1)連休期間中にも、ニューヨークダウを先頭に、世界の株式、商品、不動産市況は新値追いを続けた。
(2)連休の谷間の2日間には、東京市場でも商品市況の堅調を反映して住友金属鉱山と総合商社が主役の一角に浮上した。
(3)売られすぎた新興市場にも底入れ感が台頭した。味噌と糞を峻別すれば急騰もありうる。

(五)加ト吉と大正製薬。

(1)取り組みが好転し、逆日歩が続く加ト吉と大正製薬に注目したい。
(2)加ト吉は不祥事で売り込まれたが、JTが社長と執行専務を送り込んだ。不祥事は一過性で、冷凍食品の競争力は世界一である。
(3)かねてから医薬、農業、食品に活路を求めていたJTは現在でも5%を保有する第2位の大株主であるが、白馬の旗手として加ト吉を傘下に入れる好機を迎えた。その場合、第三社割り当て増資か、TOB(公開市場買い付け)の選択肢がある。
(4)大正製薬は相次ぐ自社株買いで浮動株が枯渇し、日証金は極端な売り越しとなった。時価総額を上回る5,180億円の現金を蓄積しているから、買収の餌食となる可能性が高い。
(5)買収を回避するためには、株式持ち合い等によって50%以上の与党株主を作るか、MBO(経営者が株式を買い取って上場を廃止する)に踏み切るか、の選択肢がある。

(六)住友金属鉱山(別子)。

(1)別子は前期の経常利益2,000億円に対して、2月に発表した中期計画では今期1,000億円、来期900億円の大幅減益を予想していた。しかし今回の決算発表では小幅の減益予想に改めた。
(2)これを評価して株価はおそまきながら史上最高値を更新した。
(3)しかし私は金、ニッケル、銅の市況から、今期の経常利益を3,000億円と予想している。
(4)前々期末に4兆円と発表した保有鉱山の含み益も、主力3商品がそろって高騰した前期末には最低でも5兆円を大幅に超えたと思う。
(5)企業買収の視点から見れば、5兆円の含み益に対する1.3兆円の時価総額はあまりにも過小である。

(七)東芝プラント。

(1)前期の経常利益は87%の大幅増益であったが、今期予想を41%減と発表して株価が急落した。
(2)しかし同社はプラントメーカーだから、長期の受注がどの決算期に計上されるかで業績がぶれるのはやむを得ない。平均すれば順調に増益基調をたどっている。
(3)電力各社は今期に大幅な設備投資の増額を予定しているから、受注は上ぶれするだろう。
(4)アメリカでは地球温暖化対策の一環として原子力発電所の新設計画が35基に上ると判明した。東芝が買収した米国のウェスティングハウスはその3分の1以上を受注する見込みで、一部が同社の受注となる。
(5)原子力発電所の新設計画は世界中で急増しているが、プラントメーカーの新規参入は皆無だろう。完璧な技術力と実績が要求されるからである。
(6)実質無借金の財務体質から見ても、再評価は必至だろう。