(1)21日付日経は加ト吉の創業社長加藤氏が循環取引疑惑の責任をとって退任し、金森副社長が後任社長に就任すると小さく報じた。
(2)加藤社長は冷凍食品で世界最大の生産、販売網を構築した傑物である。即席ラーメンで世界を制覇した日清食品の故安藤氏と並んで、加藤氏も創業、オーナー社長としてうどん、米等の冷凍食品で世界制覇の基盤を築いた。
(3)JTは加ト吉の事業の有望性に着目して5%の資本を出資し、金森氏を副社長に送り込んでいたから、これまでに加ト吉を傘下に収めるのではないかという憶測が何度か浮上した。
(4)たばこで巨大な収益力を構築したJTは脱たばこの出口としてバイオ、農業、食品への進出を模索しているから、冷凍食品事業は格好の目標となりうる。
(5)加藤社長も後事を託したい気持ちがあって、JTから資本と人材を積極的に受け入れた。
(6)循環取引による損失が発生したと報じられた翌日に株価はストップ安を演じたが、値下がりは1日限りで、その後はじりじりと値を戻していた。JTが後ろ盾に控えていたからこそ、だろう。
(7)加ト吉の株価は、事業素質と今期予想1株利益45円から見れば割安であるが、循環取引に連鎖して発生する赤字額は現在公認会計士らが調査中で、内容如何で下落の余地がある。
(8)しかしJTが買収まで踏み込めば状況は一変する。加ト吉の現在の筆頭株主は加藤氏 6.7%、第2位はJT 5%である。JTは社長を送り込んだからには後へ引かないだろう。もし筆頭株主になれば、JTの資金規模が巨大なだけに、新しい展開力が期待できる。