2007/4/9

  2007年4月9日(月)
  商品相場が創造する巨大資金。

(一)金相場。

(1)先ず、金相場のチャートをご覧頂きたい。私は今年中に金が昨年来高値を更新し、史上最高値を抜く可能性もあると思う。
(2)ニューヨークとロンドンの株式市場には13銘柄の金のETF(株式化された金)が上場されている。商品投資信託にも石油や金が含まれている。
(3)東京証券取引所とニューヨーク商品取引所が提携した。東証は第一弾としてNY市場の金のETFを上場すると表明している。そうなれば個人投資家は田中貴金属や第一商品に行かなくても、株式市場で株を買うように、金を現物や信用で買うことができる。
(4)大阪証券取引所は東証に対抗して、商品業界が金のETFを組成すれば2週間で上場審査を完了すると呼びかけている。
(5)ETFや商品投資信託を含めると、個人投資家の金の持ち分はすでに史上最大を更新した。不動産投資信託が世界各地で不動産の需給関係を一新したように、金の証券化は金の需給関係を一新するだろう。
(6)有史以来、金は世界中の王侯貴族と権力者を魅了してきた。しかし今日では、誰でも、財産として、欲しいだけ、金を買うことができる。
(7)石油やレアメタルの暴騰で世界屈指の外貨を蓄積したロシアが、ドルやユーロと並んで金を備蓄する可能性がある。そうなれば中国、中東産油国がロシアに追随するだろう。
(8)アメリカは金相場の高騰に賛成である。ロシアと西欧各国は財政再建のために国家が備蓄する金の大部分を売却したから、現在ではアメリカが世界で唯一、最大の金 保有国となった。アメリカは金本位制復帰の可能を残した唯一の国家である。

(二)膨張する金融市場の資金量。

(1)不動産投信が世界の株式市場で巨大市場を形成したように、各種商品で組成する商品投信と、金のETFは金融市場の資金量をどんどん拡大している。
(2)株式市場は不動産や石油や金のようなモノを株式会社と同列に証券化し、株式市場で売買するノウハウを構築した。円のキャリートレードも金融市場の新しいノウハウで、 日本人はすでに40兆円の預貯金を外貨投資に振り向けている。
(3)今日では金融こそ最先端のハイテクを競う市場である。現に、欧米の主要国家で金融は最大の利益を計上する中核産業に成長した。
(4)私は折に触れて商品相場のチャートを掲載している。商品相場と株式相場を同じ土俵に並べて見れば一目瞭然、株式と不動産と商品の資金が入り交じり、相互に増幅し、循環して上昇トレンドをたどっている。21世紀に入って人口超大国が世界の経済成長の主役に躍り出た結果、金融市場の構造が劇的に変化し、資金量が飛躍的に拡大したのである。
(5)しかしエコノミストはカビが生えた過去の統計データにしがみついて景気や株価を分析している。アナリストはキャッシュフローの分析に終始して、急増する不動産や資源の含み 益を評価しない。肝心の証券界は株価市場の革命的な構造変化に背を向けて古くさい循環論で株価を予想している。
(6)世界のインテリ、知識人は皆、口先ではBRICs(中国、インド、ロシア、ブラジル)の時代が来たと述べているが、当然の結果として進行している金融市場の革命的な構造変化には無知である。
(7)彼らの分析手法は官僚と同様に保守的、権威主義的、横並び的である。

(三)銅相場。

(1)住友金属鉱山は2月に、08年3月期の経常利益が前期の1,950億円から1,000億円に半減するという中期計画を発表した。銅相場が4,000〜5,000ドルに暴落するという非鉄相場を前提としているからである。
(2)チャートで現実の相場をご覧頂きたい。
(3)先週末のロンドン市場の銅相場は7,390ドルであった。
(4)銅相場は中国が世界最大の需要国である。人口で世界第1位の中国、第2位のインドは今年も2ケタ成長を続けている。そんなときに銅相場が大暴落を起こすとは、私には考えられない。
(5)銅相場は4,000ドル台に大暴落するよりも8,700ドルの史上最高値を更新する可能性の方が高いと私は思う。

(四)ニッケル相場。

(1)標準的なステンレスは18%のクロムと8%のニッケルを含んでいる。
(2)ステンレスは錆の来ない高級鋼材だから、需要は生活水準の上昇と正比例する。
(3)中国やインドばかりか世界的なステンレスの需要増を受けて、原料となるニッケル相場は昨年3倍に大暴騰し、現在も史上最高値を更新中である。

(五)住友金属鉱山の業績と株価。

(1)別子(住友金属鉱山)の主力商品はチャートで示した銅、ニッケル、金である。
(2)別子自身は中期計画で来期の経常利益が1,000億円に半減すると予想しているが、私は減益どころか3,000億円も可能と予想する。
(3)別子自身も本当は増益を予想しているに違いない。相場が上がると見ているからこそ、前期も大型の鉱山買収を続けているのである。
(4)別子は他の非鉄会社と違って、原料となる自山鉱の開発から製品までを一貫生産している。その自山鉱の含み益は06年3月期末に4兆円であった。商品相場から推定すれば、07年3月期末の含み益は5〜6兆円に達したと思う。
(5)すなわち自山鉱から年間5%の鉱石を掘り出せば、それだけで5兆円の5%、2,500億円の含み益が表面化する。現在の商品市況が続く限り増益は必然である。
(6)産油国が石油の暴騰を受けて巨額の財政黒字を積みあげたように、自山鉱から鉱石を掘り出す別子も産油国と同じ収益構造を構築した。私が別子を日本で唯一最大の資源株と規定するゆえんである。
(7)ニューエコノミーを代表する半導体は、資金を出せば誰でも好きなだけ増産できるから、主導権がアメリカから日本へ、日本から韓国、台湾へと移った。しかしオールドエコノミーを代表する非鉄や貴金属は、鉱山を買収してから増産体制が整うまでに、精錬設備を建設し、道路、港湾を構築し、公害を抑制するための設備投資が必要である。半導体と違って需要に対する生産に遅効 性があり、そのギャップが商品相場に反映される。
(8)商品相場を素直に見れば、別子の株価収益率11倍は信じられないくらいに割安である。別子自身の非現実的な情報開示が株価の割安を助長していることは明らかである。
(9)非鉄や貴金属は供給力に限界があるから、拡大発展を目指す企業は同業の買収に活路を求める。銅のヘルプスドッジやアルミのアルコアには4〜5兆円に及ぶ巨額の買収資金が投入されている。世界の非鉄貴金属業界は鉄鋼業界と同様に寡占から独占へ踏み出した。
(10)買収という視点から別子を見れば、5兆円の含み益に対する時価総額1.2兆円はべらぼうに安い。別子が買収を免れるためには、実態価値を反映した時価総額を早期に実現する必要があるが、別子自身の情報開示は異常に保守的である。
(11)鉱山を積極的に買収する一方で非鉄市況の暴落を予想するという矛盾した情報開示は、安定株主工作を進めるための方便だとしか思えない。
(12)それにしても高度情報化社会における恣意的な情報開示は投資家の不信と離反を招く。本当に外資による買収に直面したとき、投資家は待ちかねたように高株価を提示した外資になびくだろう。

(六)少数意見に勝機。

(1)別子の主幹事は大和証券である。大和証券のアナリストは別子の利益が半減するというレポートを書いている。
(2)日経の業績予想も大幅減益である。日経は商品相場の高騰を報道し、専門家の強気論を紹介しているが、日経自身は商品相場の暴落を前提に弱気の業績予想を立てている。
(3)アメリカのバーナンキFRB議長は金利を上げて米国内の消費を抑制すればインフレを抑制できると述べているが、私は国際的な商品相場の高騰がもたらすインフレ圧力を一国の金融政策で抑制することは不可能だと思う。
(4)今日では世界の経済成長を牽引しているのはアメリカではなく、中国、インドを筆頭とする新興国家群である。中国の国内では需要が急拡大し、株式市場には過剰流動性があふれている。その過剰流動性を取り込むためにアメリカの銀行が先頭を切って中国に進出した。
(5)アメリカの貿易赤字の相手国は久しく日本であったが、今では中国がダントツである。日本から見ても、最大の貿易相手国は輸出、輸入、投資のいずれも圧倒的に中国で、アメリカを引き離している。
(6)私は中国とインドの高度成長が破綻するよりも、ロシア、ブラジルを初め、アジア、中南米、アフリカの低開発国が次々に成長国に仲間入りする可能性の方が高いと思う。
(7)4年前に私は日本の高炉5社は3年後に史上最高益を更新するという予想を毎週のように述べた。中国の鋼材需要の急増を受けて韓国、台湾がフル操業となり、唯一過剰設備を抱えた日本の輸出が急増し、輸出価格が急騰していたから、フル操業に達する3年後に日本の高炉5社は価格と操業率の相乗効果で史上最高益を更新すると試算したのである。
(8)しかし私が奨めた住金は40円まで暴落し、経営危機さえもうわさされた。私はもちろん孤立無援に屈せず、千載一遇の買いの好機だという主張を貫いた。現在の別子は4年前の住金と似ている。
(9)私はクラブ9の冒頭に2つの投資原則を掲げている。すなわち、
   第1原則:「相場の世界では少数意見が勝つ」。
   第2原則:「株価とは少数意見が多数意見に変わる課程である」。