2007/4/2

  2007年4月2日(月)
  原発関連の東芝プラントと日立プラント。

(一)今、なぜ、オールドエコノミーか。

(1)すべてのモノの価格が上昇している。石油、鉄、非鉄、貴金属、穀物のような物価はもちろん、設備、株式、不動産のような資産も値上がりしている。
(2)中国、インド、ロシア、ブラジルなど、人口超大国が超高度成長時代を迎えてモノの需給関係が構造的に変わったから、バーナンキFRB議長がいくら金利を引き上げても、インフレを阻止することは困難だろう。
(3)日本の政府日銀も銀行の不動産融資の拡大を警戒しているが、不動産投資の主役である外国資本の流入を阻止することは不可能である。
(4)80年代には三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収するなど、日本のバブル資金が大挙してアメリカの不動産を買収したが、現在は20年前と正反対に外国資本が日本の不動産を買っている。
(5)さもありなん。欧米の不動産価格は10年以上連続して最高値を更新しているが、日本は16年ぶりにようやく底入れしたばかりで、外国資本から見れば割安が鮮明である。
(6)このようなインフレ基調の下ではオールドエコノミーの投資価値が高くなるのは当然である。ニューエコノミーが会計基準の変更に直面して決算の減額修正が多発している一方で、オールドエコノミーは保有資産の価値が上昇一途である。
(7)つい数年前に竹中大臣は借金で不動産や株式や資源に投資していた会社を不健全で危ないと断定し、豪腕を振るって倒産に追い込んだが、もし今まで持ちこたえていれば優良企業に変身した。
(8)竹中理論に洗脳されたアナリストとマスコミは、今でもキャッシュフローばかりを分析し、含み益を評価しない。
(9)竹中大臣が見本にしたアメリカ企業の経営者は当期利益を落とすと首が飛ぶから含み益があれば即座に売却するが、日本の経営者は歴史的に当期利益よりも長期的な含み資産の蓄積を重視して来た。
(10)しかし冷徹に投資を実践するユダヤ資本は竹中時代にたたき売りされた不動産や株式を一手に買い向かい、現在も含み益の厚い企業の株式を買いあさり、買収を仕掛けている。
(11)現在は金利負担を大幅に上回る資産インフレが進行しているから、資源、設備、不動産、株式等の物的資産を蓄積したオールドエコノミーが脚光を浴びるのは当然である。

(二)インフレ時代の投資銘柄。

(1)鉄鋼株の中でも、数年前まで削減の対象となっていた高炉設備が今や宝の山に変身し、利益と株価を革命的に増加させた。今では高炉4社の優位は周知の事実となったが、オールドエコノミーの中には過小評価が鮮明な企業がいくらでもある。
(2)住友金属鉱山の期間利益は倍々ゲームで増加し、07年3月期には1,000億円も増えたが、同社が保有する鉱山の含み益は1兆円単位で激増している。12倍という株価収益率も割安であるが、含み益に着目すれば異常に安い。
(3)30日付日経は非鉄各社の08年3月期の業績を、銅価格4〜5000ドルを前提に大幅減益と予想しているが、現在の銅価格は6,700ドルで、前提そのものが全く非現実的である。しかも住友金属鉱山自身は前期も今期も市況が上がると見て銅、金、ニッケルの鉱山を買収し続けており、言っていることとやっていることが正反対である。
(4)もっともエコノミストもアナリストもマスコミも、世界中で進行しているインフレを異常と見ているから、景気や業績に対する論評が弱気に傾きやすい。
(5)三井、三菱、住友等の大手不動産会社はテナント料の上昇、空室率の減少、マンション販売の好調で期間利益が急拡大しているが、保有不動産の含み益はもっと大幅に増加している。例えば三菱地所の丸の内の不動産を公示価格で追跡すれば含み益は1兆円単位で増加している。
(6)このような不動産の含み益は、オールドエコノミーの中でも不動産を必要とする紡績、電鉄、倉庫等で急上昇している。これに対してインターネット関連のニューエコノミーは不動産や大型の設備投資を必要としないから含み益も発生しない。
(7)現に、サッポロビールにTOBをかけたスティールパートナーズは期間利益よりも恵比寿に保有する不動産の資産価値、或いは解散価値に着目しており、アナリストの企業分析とは着目点が違う。

(三)地球温暖化防止で急浮上した原子力発電。

(1)東芝は米国ショーグループ、石川島播磨との3社共同で昨年10月にアメリカの原子力発電最大手、ウエスティングハウスを買収した。
(2)当時は買収金額の54億ドル(6,600億円、出資比率は東芝77%、米国ショーグループ20%、石川島播磨3%)を過大投資とみる批判が多かったが、わずか数ヶ月にして過大投資が宝の山に変化する可能性が出現した。
(3)前回の大統領選挙でブッシュ大統領と競り合ったゴア氏が、地球温暖化を阻止するために原子力発電もやむをえないとの主張を掲げて広範囲に支持を集めており、ブッシュ大統領もまた原発推進論に転換した。
(4)ヨーロッパでも北海の水位が上昇したためにライン川が毎年氾濫を起こしており、周辺各国、中でもドイツで原発必要論が台頭している。
(5)日本で原発に関与している企業は東芝、日立、三菱重工の3社であるが、ウエスティングハウスを傘下に収めた東芝が優位に立つだろう。
(6)こと原子力発電に関する限り技術力に対する絶対的な信用が必要である。誰でも参入できるインターネットと違って、受注、設計、施工から部品生産に至るまで、新規参入企業が現れる可能性はない。
(7)関連銘柄が限られているから、木村化工機の株価が短期間に2倍に急騰した。私は東芝、日立、重工3社の他に、設備とメンテナンスを担当する東芝プラントと日立プラントに注目したい。

(四)東芝プラントと日立プラント。

(1)両社は共に財務内容が抜群で、収益力が安定している。
(2)電力各社は来期に設備投資を大幅に増額するが、原発のトラブルに対処した投資が中心になると見込まれる。そうなると表題の2社が注目を集める。
(3)親会社の持ち株比率がそれぞれ60%、70%と抜群に高いのは、買収によって軍事力への技術移転を招くリスクを阻止する必要があるからだろう。
(4)両社は現在、メンテナンスで利益を維持しているが、原発の建設が復活すれば業績は様変わりに拡大する。
(5)先に日揮や千代建が石油化学プラント建設の復活で株価が大化けした前例もある。
(6)株価はチャートを参照されたい。時価総額が過小である上に浮動株が少ないから、上昇スピードが加速する可能性がある。

東芝プラント

日立プラント