2007/3/26

  2007年3月26日(月)
  今週の注目点:住友金属鉱山の企業防衛。

(一)不動産が値上がりする。

(1)竹中大臣が異常で過剰な不動産敵視政策を断行した結果、21世紀の初めに日本の不動産相場はだめ押しの大暴落を演じた。地価は二度と立ち直れないという弱気論が日本中に充満した。その地価が先週の公示価格の改定で16年ぶりに上昇に点じたが、エコノミストもマスコミも不動産相場の持続性に懐疑的である。
(2)私は不動産に関するあらゆる弱気論と戦ってきた。特に2001年には日頃の主張をまとめて『不動産が値上がりする』(主婦と生活社)を出版した。強気論の骨子は次の如くであった。
(3)第1に、不動産投信(リート)を導入すれば不動産とは無縁の個人投資家の資金を集めることができるから、民間の力で不動産相場を再建することができる。不動産業界と銀行、証券はアメリカで成功した金融ハイテクであるリートの導入を急ぐべきである。
(4)第2に、リートが不動産相場を牽引すれば、不動産は利回りを指標とした金融商品に変身する。巨大な不動産を大企業や大金持ちが支配する時代が終わり、無数の個人投資家が株式や国債に投資するようにリートに投資する時代が来る。
(5)第3に、日本には700兆円の預貯金がゼロ金利に泣かされているが、10%以上の高利回りでたたき売りされている不動産でリートを組成すれば、5%以上の超高利回りの金融商品を創造することができる。リートを買う投資家は必ず急増し、不動産相場再建の主役となるだろう。
(6)第4に、不動産相場の指標は利回りに変わるから、反騰は需給関係がタイトな東京の都心から始まり、点から点へ、点から線へ、線から面へと広がる。大都市から地方都市へ、商業用不動産から住宅地へと波及し、全国に及ぶには時間がかかる。
(7)不動産相場は拙著で予測したとおりの経過をたどって上昇した。
(8)現在はようやく上昇相場の3合目に達したあたりで、上昇相場が本格化するのは今からだと私は思う。

(二)不動産相場の行方。

(1)日本の不動産の時価総額はピークの1990年に2,400兆円を記録したが、2004年には1,200兆円まで大暴落した。それでも株式の時価総額の2倍以上で、日本人が保有する最大最高の財産である状況に変わりはない。
(2)竹中大臣は日本最大の財産である不動産の実力を知らなかったから、不動産相場を破壊して日本経済を深刻な不況に陥れた。私は、もしリートを積極的に導入すれば日本経済はもっと早期に、混乱なく、急速に回復したと思う。
(3)1,200兆円の不動産が10%下がれば日本人と日本企業は120兆円の富(資金力・担保力)を失うが、10%上がれば120兆円の富を創造する。1990年以来14年間に1,200兆円の富を失ったために企業と国民が疲弊し、日本経済は深刻な不況に落ち込んだ。不動産相場が10%上下すれば資産価値は240兆円も上下し、景気に対して財政投融資を桁違いに上回るインパクトを与える。
(4)90年代以降、日本を除く世界の不動産相場は長期にわたり安定した上昇過程をたどっている。アメリカの好景気を支えているのは不動産相場の長期、安定上昇である。中国では不動産相場の高騰が巨大な過剰流動性を生み出した。日本でもこれからは国民の富が100兆円単位で増加し、消費が伸びて景気を支えるだろう。
(5)日本の不動産は奈良時代以来1200年間の歴史の中で、いかなる政治体制の下でも財産の中核を占めた。不動産は日本人の遺伝子に組み込まれた血肉である。不動産相場は値上がりが正常、値下がりが異常である。
(6)不動産相場は異例の長期下落から正常な上昇過程に戻った。今後は長期上昇が日本経済の安定成長を支えると思う。

(三)理論と実践を使い分けるユダヤ資本。

(1)竹中大臣は土地本位の金融システムを破壊してキャッシュフロー重視の経営に変革するべきだと主張し、あたかも毛沢東が人民裁判で5,000万人の金持ちとインテリを殺害したように、過剰融資の銀行、過剰債務の企業を倒産に追い込んだ。銀行と企業は生き残りを賭けて不動産と持ち合い株式をたたき売りしたから、地価と株価が壊滅的な大暴落を演じた。
(2)私もキャッシュフロー重視の経営を支持している。しかし日本には奈良時代以来1,200年間に及ぶ土地本位の政治、経済、金融システムの歴史がある。
(3)80年代のバブル時代に不動産が暴騰すると土地本位制度が威力を発揮し、日本の銀行の資金量は世界ランキングの上位を独占するほど巨大化した。
(4)これを脅威と見たユダヤ資本が自己資本比率8%というBIS基準を設けて反撃に出た。不動産の値上がりによって信用が大膨張していた日本の金融システムは虚を突かれて破綻した。
(5)破綻した土地本位の金融システムを竹中大臣が更に破壊したから、ユダヤ資本はもろ手をあげて竹中政治を歓迎し、賞賛した。
(6)しかし老かいなユダヤ資本は言うこととやることが正反対である。彼らは日本企業がたたき売りした不動産と株式を一手に買い向かった。
(7)その結果、ユダヤ資本は大型の不動産を底値で大量に取得し、金融機関と企業が持ち合っていた株式をごっそりと買い占めた。気がついたときには日本の主要な不動産と株式はユダヤ資本に買い占められていたから、いま日本の企業は買収におびえて株式持ち合いを復活し、たたき売りした株式を買い戻している。
(8)私は終始一貫「竹中大臣はユダヤ資本の手先」と批判し、日本人と日本企業は今こそ株式と不動産を買って資産防衛に乗り出すべきだと論じた。言行不一致のユダヤ資本に比べれば、日本の政治家やエコノミストは幼稚で、実践を知らない。
(9)さて、20世紀末に不動産市場を巻き込んだ金融革命が、21世紀に入ると商品市場に飛び火した。その点を次項で述べたい。

(四)商品が値上がりする。

(1)今回の世界同時株安では世界中のエコノミストとマスコミが相場の反騰力の強さを読み損なった。私は不動産と商品の証券化で、金融市場の資金量が二重に拡大した点を見落としたからだと思う。
(2)第1に、20世紀末に欧米でリートが発達し、不動産が金融商品に変身した。第2に、21世紀に入ると石油、非鉄、貴金属、穀物等の商品がリートや投資信託に加工されて金融商品に変身した。今日では株式、債券と並んで不動産、商品が株式市場で流通している。
(3)商品相場は中国やインドなど、人口超大国の高度成長を受けて暴騰した。今回の世界的株安は上海市場の急落が引き金を引いたが上海市場自身はわずか2週間で新高値に切り返した。年率10%の高度成長を続ける中国、インドには想像を超える過剰流動性が渦巻いているのである。
(4)さらに、人口超大国の高度成長はモノの需給関係を一挙に逼迫させたから、商品相場が次々に史上最高値を更新した。
(5)その結果、ロシアが世界最大の金持ちに急浮上した。オペックに加入していないロシアは石油の大増産によって世界最大の産油国にのし上がったばかりか、金、ダイヤモンド、レアメタルの生産国として世界一の資源大国に躍進した。ロシアがミタルや新日鐵の株を集めているといううわさが出るほど、株式市場で存在感を高めている。
(6)エコノミストとファンドマネジャーは新興成長国や新興資源大国が生み出す巨大な過剰流動性と資金量をまだ把握していない。
(7)次項では商品相場暴騰のインパクトを日本唯一の資源株である住友金属鉱山に即して考察したい。

(五)ついに安定工作に乗り出した住友金属鉱山。

(1)住友金属鉱山(以下別子という)は前期末の保有鉱山の含み益を4兆円と開示している。その根拠となった主力3商品の相場の推移は次表の通りである。(金はニューヨーク、銅とニッケルはロンドン。単位はドル。)

 
ニッケル
含み益
04年3月末
427
3056
13820
2兆円
05年3月末
428
3458
16315
3兆円
06年3月末
581
5521
15260
4兆円
07年3月22日
653
6700
50150
6兆円?

(2)別子は今3月期末の保有鉱山の含み益を開示していないが、3倍以上に大暴騰したニッケル等の商品相場から、私は6兆円と推定した。
(3)6兆円の含み益を持つ自山鉱を20年に分割して年間5%の鉱石を掘るとすれば、精錬加工する前にすでに3,000億円の利益が顕在化する。
(4)しかるに同社は2月に発表した中期計画で、来期の経常利益を1,000億円、来々期を900億円と予想している。投資家を馬鹿にした予測で、製品市況が半値以下に大暴落しない限りこれほどの大減益とはならない。
(5)別子は昨年もアラスカの金鉱山やフィリピンのニッケル鉱山等を買収している。もし経営者が本気で製品市況が大暴落すると予想しながら鉱山を買収し続けているとすれば、株主に対する重要な背任行為である。
(6)別子の矛盾した情報開示には裏があると思っていたところ、24日付日経が住金との間で株式の持ち合いを進めていると報じたのを見て、私は釈然とした。
(7)住友財閥は住友金属鉱山の別子銅山に発したから、株式市場では住友金属鉱山を別子と呼んでいる。別子は住友財閥の総本家として現在も住友グループ各社の大株主である。総本家を買収から守るためには、住金以外の住友系企業もこぞって安定工作に参加するだろう。
(8)昨年来MBO(経営者による買収)を決行した企業は皆業績予想を下方修正して買収価格を低く押さえ込んでいる。別子の中期計画における極端に低い利益予想も例外ではないだろう。
(9)海外では非鉄企業の買収が盛んで、銅のヘルプスドッジやアルミのアルインコの買収金額は4〜5兆円に達している。6兆円の含み益を蓄積した別子の時価総額はわずか1.3兆円で割安が歴然としているから、私は株価を現状のまま放置すれば必ずハゲタカの餌食になると繰り返し警告した。
(10)エコノミストやアナリストは教科書通りにキャッシュフローのみで企業を評価し、資産価値を無視する。しかし買収しようとする企業は資産価値に狙いを絞り込んでいる。例えば外国資本が別子を2兆円で買収したとしても、保有鉱山の3分の1を切り売りするだけで買収資金を全額回収することができるからである。
(11)別子の株価収益率は現在でもわずか12倍に過ぎない。平均の18倍に買えば3,500円となる。含み益を株価に織り込むと1万円を超える。
(12)別子は資源を持たない日本で、唯一の資源株である。私は日本の資源防衛のために別子の株式安定工作を支持したい。