2007/3/12

  2007年3月12日(月)

(一)金融市場の資金量が二重に増えた。

(1)前回に予想した通り、株式相場を牽引する主力株はびくともせず、新日鐵、住友金属鉱山は大幅に高値を更新した。
(2)世界中の株式市場で出来高が激増し、記録を更新した。巨大な売り玉に買い向かう巨大な買い玉が存在した点が重要である。過去のいかなる暴落局面でも、これほど巨大な売り玉を、リアルタイムで、平然と飲み込んだ買い手の存在を、私は見たことがない。
(3)私は再三、21世紀に入って金融市場のスケールが拡大し、株式市場の資金量が激増したと述べている。私の仮説の正しさが今回の暴落で証明されたと思う。資金量激増の仮説とは次の2点である。
(4)第1に、90年代に欧米で不動産投資信託が巨大市場を形成し、不動産は金融商品に変身した。日本でも不動産投信の導入によって不動産相場が急上昇した。その結果、金融市場が不動産を取り込んでスケールを一回り拡大した。
(5)第2に、石油、鉄鋼、非鉄、貴金属、穀物などの商品が次々に商品投信やETFに組み替えられて金融商品に変身した。その結果、不動産と商品を取り込んだ金融市場の資金量はスケールを二回り拡大した。
(6)今や株式市場、債券市場、不動産市場、商品市場のマネーは相互に独立したアウトサイダーからインサイダーに変わった。例えば石油の暴騰で巨大なマネーを蓄積した中東とロシアは、株価の暴落を好機とみて買い向かった可能性が高い。オイルマネーにとっては、石油も株も不動産も債券も、同じ土俵の上にある共通の上場銘柄である。
(7)今回は株式の暴落に不動産と商品と債券が追随せず、逆にその資金が株式市場を支え、救済した。そのために暴落に対する反発力がきわめて強い。
(8)しかし将来は不動産、商品に発した暴落が株式の暴落を誘発するリスクがある。
(9)私は株式相場の先行指標として、不動産相場、商品相場の動向を重視するべきだと思う。21世紀には視野を大きく広げないと相場が読めない。

(二)新興市場の2銘柄。

(1)昨年来、会計基準の変更を受けて、新興市場で巨額の赤字を計上する企業が続出している。その結果、マザーズ指数は先週、開所以来の安値を更新した。
(2)大半の上場銘柄はすでに会計基準変更の洗礼を受けたが、すべてが完了したとはいえない。
(3)しかし恐怖に駆られて味噌と糞を一緒くたに叩き売る局面は最終段階に入った。底値圏で味噌だけを厳選すれば、リスクは大きいが利益も大きい。
(4) 先週、GCAとネクストを味噌と見たてたところ、株価はタイミングよく上昇した。次項に主観的なコメントをつけ加えておきたい。


(三)GCA。

(1)GCAは先週、日興證券の買収でアドバイザーの指名を受けたと発表した。
(2)1兆2,000億円という買収金額から大胆にアドバイザリー収入を推定すると12〜120億円となり、これ1件で今期の予想利益の半分以上を稼ぐ可能性がある。
(3)M&Aは儲かる商売である。だからこそアメリカで出遅れたシティバンクが日興證券の買収に1兆2,000億円の巨費を投じた。今年の5月から日本でも三角合併が認められて企業買収が本格化する。
(4)アメリカの証券大手は個人投資家相手の営業網を持たない。彼らは巨大な利益をすべてM&Aを初めとするインベストメントバンク(投資銀行)業務によって獲得している。
(5)GCAが日興證券、シティバンク両社との間で構築したコネクションは将来大きな威力を発揮するだろう。
(6)少なくとも今日現在、GCAはM&Aのノウハウ、人材、組織、実績において日本のいかなる銀行、証券よりも先行している。

(四)ネクスト。

(1)ネクストの社長と、先々週にネクストが傘下に収めたレンターズの社長は、共にリクルートの出身である。
(2)リクルートを創業した江副浩正はすべての社員を自ら面接し、面接のみによって採用した。
(3)江副浩正と吉田松陰は共通の、創造力を刺激する強いオーラを発信した。吉田松蔭が松下村塾から優れた人材を政
界に輩出したように、江副浩正もリクルート塾から優れた人材を産業界に輩出した。二つの塾からは30歳前後の若さで人材が巣立ちし、独立した。塾長の志が時代に先駆けたゆえに、志半ばで挫折したが、塾生が志を受け継いで開花させた点でも、両者は似ている。
(4)例えばゴールドクレストの安川社長はリクルート出身で、バブル崩壊後のマンション業界で空前の利益成長を達成した。
(5)不動産市場は株式市場の2倍の超巨大市場だから、大型の成長企業が産まれやすい。ネクストはゴールドクレストと同じ不動産関連市場で新しい成長分野を構築する可能性がある。