2007/3/5

  2007年3月5日(月)
  世界同時暴落の行方
  急騰の可能性が高い

(一)暴落するべくして暴落した上海。

(1)暴落の引き金を引いたのは上海であったが、上海市場は地方の小さな市場だから、過大視すると大勢観を誤る。
(2)上海にはA株とB株がある。A株は中国人が中国元で取引し、B株は外国人が中国株を取引する市場である。
(3)中国は経済大国に成長したが株式市場はまだ小さい。A株でも100兆円市場であるが、B株に至ってはわずか1兆円の地方競馬のように小さな市場である。
(4)A株には香港市場と共通の上場銘柄があるが、同じ銘柄が上海では香港の2倍に暴騰したほど異常な投機市場であった。
(5)上海B株もまた海外から投機資金が流入し、昨年から大暴騰を続けていた。小さな市場の極端な投機性を見れば、破綻は時間の問題であった。
(6)インドのムンバイもきわめて投機性が高い市場である。日本とヨーロッパの投資信託が中国とインドの成長性の夢を売りものに個人投資家の資金を集め、投機を増幅していた。
(7)上海は世界の連鎖的暴落の引き金を引いたが、上海の反騰が世界の反騰の条件とはならないだろう。
(8)上海の本格回復には時間が必要だろう。上海の回復を期待するよりも、上海市場の特殊性を認識することが重要である。

(二)反騰はニューヨーク市場から。

(1)暴落の連鎖が世界中に広がった原因は上海よりもニューヨーク市場にある。ニューヨークの暴落は確かに上海に連鎖して起こったが、ニューヨーク自身も長期大幅上昇で自律調整を必要としていた。
(2)NYダウは昨年史上最高値を更新した後、空前の長期上昇局面に突入した。あまりの強気相場に万人が疑問と不安を感じていた所へ上海の暴落が伝わり、虚を突かれて急落した。そこへコンピュータのプログラム売りがコンピュータのシステム障害を誘発し、追い打ちをかけた。
(3)一波は万波を呼ぶ。暴落によって網の目のように張り巡らされたヘッジ機能の一部が破綻したといううわさがある。円売りで破綻したファンドの買い戻しで円相場が急騰したといううわさもある。株価急落で窮地に追い込まれたヘッジファンドが含み益のある金先物を利食いしたために金相場が急落したといううわさもある。
(4)それならばNYダウが混乱を早期に克服して再び世界の株高を牽引できるかと言えば、私はその時期が近いと思う。
(5)アメリカのファンドマネジャーの競争は激しい。彼らは暴落に手をこまねいて首を切られるよりも、首を賭けて巻き返しを図るだろう。彼らには世界の株式市場をリードしているという誇りと実力がある。
(6)現在は売方主導の局面であるが、次項で述べるように、ある日突然買方主導に一変する条件が成熟している。

(三)巨大な売り玉を飲み込んだミタルと新日鉄。

(1)第1に、今回の暴落局面では世界中の株式市場がそろって空前の出来高を記録した。
(2)第2に、殺到する巨大な売り玉に買い向かう巨大な資金があり、売りたい株はリアルタイムでいくらでも売れる。
(3)上の2点は過去の暴落局面と決定的に異なる大きな特徴である。かつてスターリン暴落、ケネディーショック、ニクソンショック、ブラックマンデー等の暴落局面では、2日目まで全銘柄が売り気配で値が付かず、投資家と証券マンは恐怖に駆られてヒザがふるえた。今回はそんな風景が何処にも見えない。
(4)第3に、日本では新日鉄が、欧米ではミタルが、巨大な売り玉を浴びながら一歩も引かずに平然と飲み込んだ。これも空前の現象である。
(5)中東、ロシアなどのオイルマネー以外にこれほど巨大な資金を持った投資家はいない。オイルマネーが暴落を好機と見て買い向かったとすれば、彼らは現在も余裕綽々で、想像を超える資金量を維持していると思われる。
(6)このような需給関係の下で世界の株価が反騰に転じれば、売り玉が枯渇して上昇トレンドが加速する可能性がある。
(7)経験則から見れば、暴落に動じなかった新日鉄や住友金属鉱山が次の上昇相場でも主役を演じるだろう。相場のトレンドも人気銘柄も基本的に変わらない。

(四)新興市場に底入れの可能性。

(1)しかし波乱の後には新しいトレンドが生まれるという経験則もある。可能性の一つは昨年大暴落した新興市場にある。
(2)新興市場は昨年会計基準の変更を受けて、公認会計士から巨額の赤字計上を迫られる企業が続出した。
(3)2月28日の深夜にフォーサイドとタスコが大幅な赤字計上を発表した。両社は共に12月決算で、上場企業は2ヶ月以内、つまり2月28日までに決算を発表する義務があったからである。
(4)昨年は公認会計士が金融庁から不正会計の責任を追求されて日本最大の会計士事務所が廃業に追い込まれるという大事件があった。これをきっかけに会計監査が異常に厳格となり、減額修正の不安に駆られた新興市場全体が暴落の連鎖に巻き込まれた。
(5)前記の2社もその流れの一貫で、減額修正が完全に終結したとはいえない。
(6)しかし大半の銘柄はすでに決算を修正し、株価暴落の洗礼を受けた。ここからは味噌も糞も一緒くたに暴落した反動が始まるだろう。
(7)クラブ9が取り上げた銘柄の中でも、NIF-SMBCのように底値鍛錬を終えたと見られるチャートが続出している。
(8)会計監査厳格化の余波が消えたとはいえないが、リスクの大きさと利益の大きさは正比例する。リスクを取ることができる投資家に最近の新規上場銘柄から材料株を二つ上げておきたい。

(五)GCA。

(1)GCAは先週、アメリカに現地法人を設立した。代表取締役の渡辺氏は日本とアメリカで公認会計士のライセンスを取得しており、スタッフの中にはアメリカでM&Aを実践して会社設立に参加した人材が多い。
(2)5月には三角合併が始まる。アメリカ進出は三角合併に備えた布石である。ビジネスチャンスは日米両サイドに広がる。
(3)M&Aは欧米の大手証券でも主力の収益部門である。今後はGCAが関与する案件が次々に表面化し、株価はその都度大きく反応するだろう。
(4)今年の出世株の最右翼として、ポートフォリオから外せない。
(5)現在の株価はだめ押しで、最終的な買い場だと思う。

(六)ネクスト。

(1)先週、ネクストはレンターズを株式交換によって取得したと発表した。両社の業態は補完関係にある。
(2)日本の住宅市場は欧米に準じて新築から中古へ、人気が拡大するタイミングを迎えている。しかし中古住宅を安心して売買するためには情報を全部、正確、公平に開示するシステムが必要である。
(3)ネクストのWebサイト「HOME’S」にアクセスすれば、新興企業であるネクストが消費者と不動産会社の双方から支持されている理由がわかる。
(4)今3月期の中間決算の経常利益は1.6億円で、失望売りを誘ったが、ネクスト自身と主幹事の野村證券は共に通期の経常利益7億円の予想を据え置いた。通期の利益が予想通りとなれば、新しいシステムと値上げが通期で寄与する来期の大幅増益は確実だろう。
(5)クラブ9は不動産関連市場から新規に上場したゴールドクレスト、アセットマネジャーズ、リプラスを上場時から推奨し、いずれも短期間に利益が数十倍に激増した。日本で不動産投信が初めて上場される前に、私は『不動産が値上がりする』(主婦と生活社)を出版して不動産投信が不動産市場と株式市場に革命を引き起こすと主張した。
(6)不動産は時価総額が株式の2倍以上に達する巨大市場である。市場規模が圧倒的に大きいから急成長する企業が生まれやすい。
(7)ネクストはインターネットを武器に不動産市場で新しい成長分野を開発する可能性がある。