2007/2/13

  2007年2月13日(火)

(一)大正製薬とGCA。

(1)減額修正を発表して売り込まれていた大正製薬が週末に急反発した。ビオフェルミンやロートとの合併説に加えてMBOのうわさがある。
(2)さもありなん。大正製薬は5,000億円の利益準備金を積み上げた優良企業だから経営の選択肢は広い。
(3)ドル箱のリポビタンの売り上げが落ちたために期間利益は低迷しているが、社長は買収によって活路を開くと明言している。しかしもし買収を躊躇すれば逆に買収されるリスクが広がる。
(4)大正製薬の時価総額は6,000億円だから、買収後に内部留保と含み資産の一部を売却すれば、タダ同然で買収が可能となる。その上富山化学の発行株式の22%がおまけについてくる。
(5)ツバキナカシマや大正製薬のように実態価値が時価総額を上回る企業が買収を免れるための現実的な手段は、経営者が全株式を買い戻して上場を廃止するMBO以外にない。大正製薬を創業した上原夫妻は長期間松下幸之助氏を抑えて日本一の多額納税者であった。上原一族がMBOを考えたとしても不思議はない。
(6)含み益は特に財閥系やオーナー系の企業に多い。サントリーが上場しないのは巨大な含み益が買収の標的となるからである。出光興産が今になって上場した理由はよくわからないが、豊富な資産を洗い直せば株価の評価が一変するだろう。サントリー、出光、大正製薬は共通して美術品の大コレクターで、美術館を持っている。美術品への強い関心は古今東西の成功者に共通している。
(7)中でも住友金属鉱山は時価総額1兆円弱に対して保有鉱山の含み益だけでも4兆円に達しているから、買収後に鉱山の一部を売却すればタダになる。利益予想を常に低めに出して株価を割安に誘導する経営姿勢を住友財閥総本家の余裕と言えば聞こえがよいが、株主軽視の経営でM&Aの大嵐を乗り切れるとは思えない。
(8)そんな時にMBOの助言や資金支援を本業とするGCAが急落した。不祥事で投資信託の大量解約に見舞われた日興證券が投信に組み入れていたGCAを売却したといううわさがある。なるほど日興證券はGCAの主幹事証券である。
(9)しかしGCAがM&A時代の本命株であることには変わりがないから、突っ込みは買いの好機だろう。

(二)富山化学。

(1)第3四半期の決算で、富山化学は通期3億円の利益予想を据え置いた。
(2)シェリングブラウ社が米国でガレノキサシンの製造認可申請を取り下げたためにライセンス料収入に穴が開いたが、これに見合う新たなライセンス導出のめどが立ったと推定される。
(3)富山化学が新たに開示した新薬開発状況からライセンス導出の候補を探れば、第1は抗リュウマチT-5224である。科学技術振興機構からの開発委託事業で、「転写因子AP1を阻害することで炎症や関節リュウマチの根本治療」を行うという画期的な発想の新薬である。
(4)第2はアルツハイマー型認知症治療剤T-817MAである。「強い神経細胞死抑制作用を持つ。また、神経突起進展促進作用も有しており、病体モデルで優れた有効性を示している」という。つまりT-817MAは認知症の進行を防ぐばかりか、「神経突起を活性化して治療する」のである。
(5)二つの新薬はフェーズ1を終了したところであるが、特にアルツハイマー治療薬は人類待望の不老長寿に道を開く。発売となれば超大型新薬となるだろう。
(6)シェ社はガレノキサシンの製造申請をアメリカで一時取り下げたが、ヨーロッパでは申請を維持しており、6月頃に認可の見込みである。日本の厚生労働省も今年中に認可の見込みである。ガレノキサシンは既存の抗生物質が耐性菌の出現で効力を失った中で、広範囲に薬効を示している。これ一つだけでも富山化学を優良企業に変身させる可能性がある。
(7)最大手のファイザーが主力薬品の特許期限切れと新薬開発力の低下で大規模な人員整理追い込まれたが、これは世界の製薬大手共通の悩みである。そんなときだけに富山化学の新薬開発力は驚異的である。
(8)新薬のライセンス導出は数回に分割するマイルストン方式で行われる。フェーズ1を終えたばかりで高額の第一時次ライセンス料が取得できることが、すでに新薬の有望性を証明している。
(9)いま人気の焦点に浮上している鳥インフルエンザ特効薬T-705もフェーズ1に入ったが、製造認可までには曲折がある。株価は強弱感が対立し、大取り組み、大商いで仕手株の様相を呈しているが、私は長期に持てば持つほど相場のスケールが大きくなると思う。

(三)住友金属鉱山。

ロンドンニッケル週足

(1)ステンレス市況の高騰を受けて日本冶金、大平洋金属等の関連株が大幅な増額修正を発表し、株価はストップ高を交えて急騰している。
(2)チャートをごらん頂きたい。ステンレスの需要は生活水準の上昇と比例する。中国、インド等、人口超大国の台頭でステンレスの原料となるニッケルが1年で2倍近くに暴騰した。
(3)石油相場の暴騰で川下の石油精製メーカーや元売りが潤ったが川上の産油国が桁違いの利益を得たように、ステンレスの高騰で川下の関連メーカーが潤ったが川上の住友金属鉱山にはけた違いの利益が出たと推定される。
(4)ちなみに住友金属鉱山は前3月決算で保有鉱山の含み益を4兆円と発表している。自山鉱から年間5%の鉱石を掘れば、掘っただけですでに2,000億円の含み益が表面化する。住友金属鉱山は非鉄・貴金属相場が大暴落しない限り、年間2,000億円程度の利益を生み出す基礎体力を確立した。これこそ日本を代表する資源株・住友金属鉱山のパワーである。
(5)それゆえ住友金属鉱山を除外した日本株のポートフォリオは私には考えにくい。
(6)一方で、昨年も金、銅、ニッケル鉱山を買収したから、今期も含み益の増加は必至だろう。
(7)銅相場が底入れの気配を示し、金は新高値をうかがう位置を固めた。
(8)今期の増額修正は必至で、株価は1,600円台の保合を突破して2,460円の史上最高値に挑戦すると私は思う。