2007/1/22

  2007年1月22日(月)

(一)「人気は変わる」(再録)。
新春冒頭の1月9日付けで、私は「人気が変わる」という見出しで次のように述べた。その後の相場は (6)(7) の通りに展開していると思う。再録したい。

(1)相場の世界には「知ったらしまい」という格言がある。どんな好材料でも周知の事実となれば「折り込み済み」でお役ご免となる。
(2)毎年のことながら、正月の日経を飾る財界人の景気見通し、有望銘柄は意外性も新鮮味もなかった。これに対して、
(3)第1に、株式市場は先見性を競う真剣勝負の世界である。
(4)第2に、利益の大きさはリスクの大きさと比例する。リスクのないところに利益はない。多数意見に従えばしばしば高値づかみとなる。
(5)第3に、投資家は失敗すれば財産を失うが、評論家はいくら間違ってもペナルティーを受けない。評論家の意見を鵜呑みにしてはいけない。
(6)第4に、新日鉄やトヨタにはあまりにも出来高と売買金額が集中しすぎた。高値を更新するためにはもっと大きなエネルギーを蓄積するための時間的な調整が必要だろう。
(7)だからといって悲観する必要はない。強気相場の総論が終われば各論が始まる。個人投資家にとってはむしろ各論にチャンスがある。

(二)新興市場。

(1)前項の(7)を私は外国人買いを念頭に置いて書いた。12月に外国人買いが復活したが、第1弾は日本株のポジション(予定投資額)を確保するために日経平均連動の大型株を買った。第2弾はファンドの特徴を出すために各論に入るから、年が変われば外国人の矛先は中小型、仕手株に向かうと思ったのである。
(2)昨年は新興市場が大暴落を演じた。私も底値の深さを読み損なったが、第1の原因は海外ヘッジファンドの借り株による売り崩しであった。個人投資家が空売りできない新興市場銘柄でも、外国人は借り株を用いて売り崩すことができる。
(3)そのヘッジファンドが弱気から強気に転じれば、借り株を買い戻す必要がある。
(4)暴落の第2の原因は会計基準の変更であった。公認会計士が傘下の投資組合や買収、合併した会社の決算処理で突然、巨額の償却を要求したために大幅赤字に転落する企業が続出した。
(5)しかし来期は赤字処理の反動もあって増益企業が続出する可能性がある。
(6)借り株の売りによる需給関係の悪化と会計基準の変更による業績悪化という2点の反動だけでも、大半の新興市場株は3分の1戻りを達成するだろう。
(7)3分の1戻りの壁を超えて、半値以上の戻りを目指すかどうかは個別銘柄の業績次第である。
(8)アストマックスは三井物産フューチャーズの買収という大材料が表面化した。次の焦点は業績効果の判断に移るだろう。
(9)その他の新興市場の既報銘柄はいずれも経過が順調である。

(三)富山化学におけるリスクと仕手性の考察。

(1)いま、もっとも強弱感が対立している銘柄は富山化学だろう。
(2)インターネットで鳥インフルエンザ情報を検索すると毎日、世界各地で、新たな感染情報が報じられている。新型鳥インフルエンザがパンデミック(大流行)に発展すれば、世界で3億人(国連推計)が死亡し、日本でも数十万人(厚労省推計)が死亡する。
(3)20日の夕刊各紙は、厚労省が特効薬としてタミフルに最優先順位をつけたと報じているが、同じ紙面にエジプトでタミフル耐性のウイルスを確認した(タミフルは利かない)という情報も出ている。多くの国がタミフルを備蓄したが、タミフルが利かないという報告もまた続出している。
(4)折から動物実験で著効を証明した富山化学のT-705が、予定通りであれば日米同時にフェーズ1に入ったと推定される。新薬は人体による3段階の臨床試験をクリアして初めて最終的な使用許可が下りる。
(5)富山化学ではアルツハイマー治療薬が昨年末にフェーズ1を終了した。新型鳥インフルエンザとアルツハイマーの治療薬は人類待望の新薬であり、市場規模が特大である。しかし最終的な成否が決まる迄にはなお曲折がある。
(6)そのために富山化学の強弱感が対立して日証金は株不足となった。昨年の第1ラウンドは不発に終わったが、すでに第2ラウンドのゴングが鳴った。ウリ・カイを丁半と割り切れる投資家は仕手戦に参加してみる価値がある。
(7)繰り返すが「リスクの大きさと利益の大きさは正比例する」。特に仕手戦では買うもリスク、売るもリスクである。リスクが大きいゆえに挑戦する投資家があり、仕手相場は絶えない。

(四)江崎玲於奈氏の武者修行。

(1)ノーベル物理学賞を受賞した江崎氏は日経に連載中の『私の履歴書19』で、ベル研究所のグラハム・ベルの胸像の下に彼の言葉が刻んであり、その言葉に触発されてソニーからアメリカへ武者修行に出た、と述べている。
(2)すなわちベルいわく。「時には踏みならされた道を離れ、森の中に入ってみなさい。そこではきっとあなたがこれまでに見たことがない何か新しいものを見いだすに違いありません」。
(3)株式市場はベルが指摘した「森の中」と似ている。投資家にとって投資は永遠の武者修行だと私は思う。
(4)ちなみに江崎氏は「エサキダイオード」を発見した後、アメリカへ武者修行に出たことがノーベル賞受賞の決め手になったと示唆しておられる。