2007/1/15

  2007年1月15日(月)
  ゴールドマンサックスの研究。

(一)株価局地波乱の背景。

(1)日経平均株価は先週、世界で唯一独歩安を演じた。明らかに外資系証券によるウリ仕掛けである。
(2)毎月第2金曜日はSQ(先物取引の精算日)で、その直前にはしばしば不可解な波乱が起こる。
(3)このような特異現象は、世界各地で見られる。例えば、順調な上昇基調を維持している欧米市場に比べて、上海、香港、インド、トルコなど、昨年暴騰した新興国市場の直近の反落が厳しい。
(4)新興国市場の急落と石油、銅などの商品市場の急落との間には強い相関関係が認められる。私の推定が正しければ、新興国市場と商品市場の相場の回復も又同時に進行するだろう。
(5)青天の霹靂のような局地的波乱はこれからも起こると思われるので、その背景について私見を述べておきたい。
(6)第1に、これまでもしばしば指摘したように、外資系証券は以前から新入社員の採用を「理数系」に絞り込んでいる。ゴールドマンサックスが昨年末に1人平均7,500万円のボーナスを支給して世界中のサラリーマンの羨望(せんぼう)を集めたが、東京支店の 株式本部長も京大「工学部」の出身である。
(7)第2に、外資系証券は東京証券取引所で出来高の60%を支配しているが、先物市場に至っては90%以上で、完全支配に近い。
(8)第3に、彼らは数学を駆使して時間、空間、銘柄を超えた株価のサヤを取りやヘッジを大胆に実行している。時間、空間、銘柄間とは次のごとくである。
(9)第1に、先週は金曜日のSQの前日まで先物ウリ、現物カイの裁定取引で日経平均を売り崩し、12月の急騰で安値に取り残されていた先物の売り玉を救済した。すなわち先物と現物という時間差を利用した取引例である。
(10)第2に、昨年の11月には新規上場の中国工商銀行を上海、香港市場で大量に買い、東京市場で日本の銀行株を売る国際的な裁定取引を実行し、大成功した。すなわち中国と日本という空間差を利用した取引例である。
(11)第3に、彼らは現在、新日鉄ウリ日立カイの裁定取引を仕掛けているという情報がある。すなわち銘柄間の差を利用した取引例である。

(二)野村、大和の奮起を促す。

(1)前記のような裁定取引は先端的な数学理論を用いた精緻な計算に基づいて実行されており、日本の証券会社の勘と経験によるディーリングとは次元が異なる。
(2)彼我の格差を埋めるために、日本の証券界は理数系の才能を結集して先端的な数学理論を実践するためのシステムを構築しなくてはならない。
(3)時間と空間をワープ(アニメ宇宙戦艦ヤマト参照)するノウハウはコンピューターシステムと直結しているだけに外資系証券の人材やチームを引き抜いただけでは十分機能しない。
(4)日本の大証券が本気で立ち後れを挽回するためには国際合併によって自らが多国籍企業に変身する必要があるだろう。
(5)今やノーベル経済学賞の多くが理数系出身者で占められている。
(6)コンピューターを駆使した数学理論は日進月歩である。ロングタームのように2人のノーベル経済学賞受賞者を擁して倒産したケースもあるが、欧米証券はその後も試行錯誤を繰り返しながら実践的ノウハウを積み上げて応用範囲を広げている。
(7)本拠地の東京市場でさえ外資系に蹂躙されている野村、大和はもはや彼らにとってライバルではない。
(8)みずほグループが旧興銀系証券の大結集を計っているが、私は時代錯誤だと思う。証券会社は図体の大きさよりも、最先端の頭脳を競う時代だからである。
(9)私は17年も前に証券会社を退職して『円世界制覇の秘密』(1989年、講談社)を出版し、「野村證券は史上最高の利益を計上した今こそ肉体労働から頭脳労働へ、転換を急ぐべきだ」と訴えた。
(10)日本の大証券がいまだにノルマ営業に明け暮れている状況は悲劇的である。帝国海軍が誇る戦艦大和は米国空軍の攻勢にあえなく敗退した。いま日本の大証券に求められているのは戦艦大和ではなく宇宙戦艦ヤマトである。時空を一瞬でワープするヘッジ機能を持たない証券会社は、パニックに遭遇したとき勝ち残れない。

(三)金融庁もゴールドマンサックスに学べ。

(1)ゴールドマンサックスは自らヘッジファンドを兼ねて技術革新の旗手となった。
(2)そのゴールドマンが過去10年間に輩出した2人の財務大臣はアメリカ経済の発展に貢献し、金融機関の経営と財政の運営が同じ土俵上にあることを証明した。
(3)私はアメリカ最大の国際競争力は官民一体の金融にあると思う。
(4)これに対して日本の金融庁はあまりにも過剰な権力を振るって金融機関を威嚇し、君臨し、萎縮させている。
(5)1990年にバブルが崩壊するまで、日本の銀行は産業界の高度成長をがっちりと支え、ユダヤ資本を圧倒して世界の トップランキングに躍進した。しかし竹中平蔵氏が金融庁長官に就任して以来金融機関の国際競争力が衰退し、その後に受け継がれた威嚇的行政が金融機関の活力を奪い、無気力な横並び経営に追い込んでいる。
(6)この間に、欧米先進国で金融は国家の中枢を担う基幹産業に発展した。
(7)前述したとおり、ゴールドマンサックスは行政と民間経営が同じ土俵上にあることを証明した。金融庁は金融機関を見下さず、敬意を持って支援する見識と度量を示すべきではないか。

(四)銘柄。

(1)買収・合併は今年の、というよりも時代のテーマである。GCAが早くも新高値を更新した。M&AやT-ZONEも底入れしたのではないか。
(2)スティールパートナーズやT-ZONEが投資している日清食品、シチズン、サッポロ、日本管財、理研ビタミン、ビオフェルミン等は早晩企業買収に発展する可能性がある。
(3)インターネットで新型鳥インフルエンザを検索すると、インドネシアの死者は今年4人で累計61人に達した、ナイジェリアやベトナムでも新たな患者が出たなど、世界各地の発生状況が毎日のように報じられている。しかし現在は序の口で、人から人への感染が起これば被害は一挙に世界中に拡散する。富山化学のT-705の臨床情報が注目される。