2007/1/9

  2007年1月9日(火)

(一)人気は変わる。

(1)相場の世界には「知ったらしまい」という格言がある。どんな好材料でも周知の事実となれば「織り込み済み」でお役ご免となる。
(2)毎年のことながら、正月の日経を飾る財界人の景気見通し、有望銘柄は意外性も新鮮味もなかった。これに対して、
(3)第1に、株式市場は先見性を競う真剣勝負の世界である。
(4)第2に、利益の大きさはリスクの大きさと比例する。リスクのないところに利益はない。多数意見に従えばしばしば高値掴みとなる。
(5)第3に、投資家は失敗すれば財産を失うが、評論家はいくら間違ってもペナルティーを受けない。評論家の意見を鵜呑みにしてはいけない。
(6)第4に、新日鉄やトヨタにはあまりにも出来高と売買代金が集中しすぎた。高値を更新するためにはもっと大きなエネルギーを蓄積するための時間的な調整が必要だろう。
(7)だからといって悲観する必要はない。強気相場の総論が終われば各論が始まる。個人投資家にとってはむしろ各論にチャンスがある。

(二)日銀のゼロ金利政策の欠陥。

(1)ゼロ金利政策は間違っていると私は思う。国民は650兆円という世界ダントツの預貯金を蓄積したにもかかわらず、利息がつかないから消費できない。せめて3%の利息が付けば元本を損なわずに20兆円の消費を呼び起こすことができる。
(2)国民は利息収入が入らないから消費しない。日銀は消費が低迷しているから公定歩合を上げないという。これでは永久に公定歩合は上げられない。日銀が手をこまねいているうちに、世界中で金利が高騰し、円は独歩安を演じた。
(3)外国人は円を借りて外貨に換えるキャリートレードで大もうけしている。
(4)日本人も外国人に追随してキャリートレードに走っている。
(5)水が土地の低い方へ流れるように、マネーは金利の高い方に流れる。欧米がどんどん金利を引き上げているときに、日本だけがゼロ金利政策を維持しているから、日本からマネーがどんどん逃げ出して、円が独歩安を演じたのである。
(6)円安は日本人の財産を目減りさせている。
(7)アメリカやヨーロッパは金利を引き上げて、不況が来ればすかさず金融緩和を断行する準備を進めているが、ゼロ金利の日本は不測の事態が発生したときに金融緩和の手が打てない。
(8)しかし昨年の年末には外国人買いが増加した。日銀が公定歩合の引き上げを示唆したからである。日銀は好機を逸せず、1月中に公定歩合引き上げるべきである。更に金利を適正水準まで引き上げると表明すれば、外国人買いが本格化する。
(9)そうなればマネーは日本に逆流し、今年は円高、株高となる。しかしもし日銀がゼロ金利政策にこだわれば景気も株価も低迷する。

(三)最大のリスク要因は関東大震災。

(1)株価下落の要因がないわけではない。第一に、アメリカの景気後退。第二に、国際紛争。第三に、中国の政治的、経済的混乱、等。
(2)しかし決定的なリスク要因は関東大震災の発生である。
(3)関東大震災が発生する確率は限りなく高まっているにもかかわらず、日本では政治、金融、経済のすべての機能が首都圏に集中して行く。
(4)今もし関東大震災が発生すれば日本経済は麻痺し、株式市場は3日間全銘柄がストップ安を演じるだろう。
(5)政府は東京都民に対して食糧を備蓄せよとか避難先を準備しろ、などと呼びかけているが無責任極まる。
(6)政治家が誰1人として首都機能の分散を主張しないのは日本の悲劇である。石原都知事に至っては東京に首都機能が集中して何が悪いと公言している。
(7)古来、政治の究極の目標は治山治水である。田中角栄は日本列島改造を唱えて全国に高速道路網と新幹線網を築いた。
(8)現在の政治家は、地方の道路網は無用の長物だから、ガソリン税を一般財源に転用せよと主張しているが、本末転倒である。首都機能を分散し、田中角栄が日本列島に張り巡らせた交通網を活用して地方を活性化する政治こそ日本の緊急かつ最重要課題である。
(9)投資家は関東大震災の発生に備えて財産を保全する方法を頭の片隅に置いておく必要がある。

(四)富山化学。

(1)第一に、今年、世界最大のリスクは新型鳥インフルエンザのパンデミック(大流行)だろう。
(2)厚労省は国内で流行した場合、3,200万人が感染し、17〜64万人が死亡する恐れがあると予想している。
(3)富山化学のT-705は動物実験で新型鳥インフルエンザに対する有効性が証明されており、1月には米国のFDAと日本の厚生省から同時に臨床開始が認可される予定である。
(4)第二に、今、世界の製薬業界で認知症(アルツハイマー)治療薬の開発競争が進行している。成功すれば人類は不老長寿の夢に一歩近づく。
(5)富山化学のT-817MAはアルツハイマーの治療薬として昨年末にフェーズ I を終了した。
(6)前記二つの大型新薬に関する新たな情報開示に注目したい。

(五)治にいて乱を忘れず。