2006/12/18

  2006年12月18日(月)

(一)オイルマネーが日本を目指す。

(1)石油価格の暴騰で巨大化したオイルマネーは今年、大挙してヨーロッパの株式市場に向かった。ユーロ高と株高でオイルマネーは推定30%の利益を上げた。
(2)オイルマネーはアメリカとアジアにも向かい、世界中の株価を暴騰させた。
(3)日本は唯一の例外であった。水が土地の低い方へ流れるように、マネーは金利の高い方へ流れる。ゼロ金利が円安を誘発し、外資を遠ざけた。
(4)しかし12月に入ってオイルマネーが流入し始めた。出遅れ、割安が鮮明となったからだろう。
(5)問題はオイルマネーの増勢が続くかであるが、来年は増えると私は思う。
(6)石油相場が少しばかり反落すると日本ではたちまちオイルマネーが消滅するかのような弱気論が起こるが、オイルマネーは依然として増勢一途である。第1に、産油国の原価はゼロである。第2に、掘削費用を10ドルとすれば、石油相場70ドルで60ドル、石油相場が50ドルに下がっても40ドルの利益が出る。第3に、世界の景気が拡大成長しているから、数量が増える。
(7)産油国はオイルマネーを運用しなくてはならない。中東産油国のオイルマネーを運用しているのはイギリス人やスイス人のファンドマネジャーである。ファンドマネジャーは運用成績を競い、結果によって評価されるから、日本株の出番が来ると思えば、一斉に買いに出る。
(8)日銀が公定歩合の引き上げに踏み切れば、オイルマネーの流入に弾みがつく。株価は急騰する可能性がある。

(二)スチールパートナーズとTゾーン。

(1)アメリカの企業には含み益がないが、日本のオールドエコノミーには土地や株の含み益がたっぷりある。財務上の内部留保も厚い。
(2)日経やアナリストは株価収益率だけを比較して日本株が割高だと論じているが、実践を知らない優等生の眼には日本企業の含み益経営の真価が見えない。
(3)現にアナリストが評価しない盲点をついた買収資金が急速に膨張している。以下に内外の2つの買収ファンドの動向をチェックしておきたい。
(4)スチールパートナーズが持ち株を増やしている30社は日清食品、サッポロビール、シチズンなど、みなオールドエコノミーで、資産内容が抜群である。
(5)そのスチールパートナーズには外国資本ばかりか日本の銀行、生損保などの投資資金と投機資金が続々と集まっている。狙われた企業は尻に火がついてきた。
(6)例えばサッポロは利益においてアサヒとキリンに引き離されているが、えびすに保有する不動産には巨大な含み益がある。買収成立後に本業と関係のない不動産を売却するだけで、買収資金の相当部分を回収することができる。
(7)日本の買い占め屋であるTゾーンの投資先企業もビオフェルミン、理研ビタミン、日本管財、太田花き、佐藤食品など、みな収益力、含み益が抜群である。すでに浮動株が吸い上げられて売り玉が乏しい。
(8)そのTゾーンが先週15日に臨時株主総会を開いて資本準備金を利益準備金に振り替えた。合計で200億円のキャッシュを準備したからには、当然投資を積極化するだろう。

(三)竹中元大臣とユダヤ資本。

(1)村上ファンドは札束で企業を恐喝するグリーンメーラーだから、マスコミを利用して派手に恐喝するが、買収する気持ちは全くない。阪神電鉄でも50%以上の株式を取得して事実上買収が成立していたにもかかわらず、無理難題をふっかけて、結局は阪急電鉄に買い取らせた。
(2)スチールパートナーズやTゾーンは本物の買収ファンドだから、村上ファンドのように買い取りを要求せず、最終的には公開市場でTOBをかけるだろう。彼らは機が熟するまでは黙って、着々と持ち株比率を増やす。
(3)竹中氏が金融担当大臣に就任したとき、借金の多い30社を名指しでつぶせと主張した。その30社を私は断固買いだと主張した。借金はあったが見合いの不動産や株式をたっぷり持っており、私は地価と株価は今がどん底であると論証した「不動産が値上がりする」(主婦と生活社、2001年)を出版していたからである。果たして30社の大半はその後に株価が大化けした。
(4)同時に、竹中大臣は過剰融資、過剰債務の名の下に、銀行や企業を追いつめて不動産と持ち合い株式を片端からたたき売りさせた。そのときこれをユダヤ資本が全面的に買い向かった。
(5)いま四季報で大株主ベスト10を見れば、大半の優良企業で銀行・生損保と企業の持ち合い株主が消えて、外国人株主が占拠している。
(6)日本の企業の含み益を日本の株式市場が評価しないから、最近になってオールドエコノミーの間で企業防衛のための株式持ち合いが急速に復活してきた。しかし時すでに遅しである。来年5月には改正商法が発効し、外資による三角買収が続々と仕掛けられるだろう。
(7)ユダヤ資本が買い占めた不動産は推定年率40%の利益を上げて売却され、一部は不動産投信やゴルフ場運営会社に衣替えして上場された。
(8)歴史がそれらの全貌を明らかにしたとき、私が「竹中大臣はユダヤ人の手先だ」と執拗に批判した意味が理解してもらえるだろう。竹中大臣は日本独自の含み益経営を敵視して、日本企業が営々として構築した資産をユダヤ資本にタダ同然で売り渡し、取り返しのつかない破壊の傷跡を残した。
(9)個人投資家はスチールパートナーズやTゾーンの投資銘柄とその着眼点に注目されたい。

(四)鈴木金属。

(1)8月に筆頭株主の新日鉄が第三者割り当て増資を引き受けて、持ち株比率を22%から35%に引き上げた。
(2)新日鉄は鈴木金属と共同で線材の強度を30%高める技術を開発し、敵対的買収を防ぐために支配関係を強化した。
(3)摂氏マイナス170度の極低温で圧延する。細い線材の表面を大根のかつらむきのように1ミリだけむいて傷を除去する。同時に3つのロールで圧延し、圧延の速度を2倍に引き上げる。等の先端技術が新製品に凝縮されている。
(4)新製品を量産するために10月に新工場が完成し、来年2月に第2の新工場が完成する。新工場はすでにサンプル出荷でフル操業となり、来年5月の本格出荷に備えている。
(5)株価は1990年に1410円を記録したが、前3月期には最高益を更新した。しかし今期は上期に工場のトラブルがあり、減益となった。下期は順調であるが、上期の減益が尾を引いて通期でも微減益の予想である。
(6)そのために株価は310円前後に低迷しているが、1株当たり予想利益は新株の増加を織り込んでも32円で、株価収益率は10倍に満たない。
(7)8月に新日鉄が払い込んだ株価は300円だから、現在は新日鉄と同じ条件で買うチャンスである。
(8)新日鉄が買収を恐れた技術力が来期に開花する。時価は下値不安が乏しい上に、来期は最高益の大幅更新が期待できる。
(9)1年という射程で見れば株価倍増は固いだろう。