2006/12/11

  2006年12月11日(月)

(一)株式相場。

(1)一年を通して相場を読むことは至難である。
(2)私は今年、新興市場、小型株の大暴落を予見することができなかった。
(3)しかし11月の急落がだめ押しで、底入れ、反騰の契機となることを予見することができたと思う。
(4)世界の株価は深押しせず、高値圏で調整を完了する可能性が強まってきた。
(5)東京市場にも外国人投資家が回帰し、世界の上昇波動に同調しつつある。
(6)現在は下げすぎを修正する課程で、新興市場、小型株、仕手株の投資効率が高い状況が続く。
(7)私は日銀の年内利上げの可能性があると思う。日銀が利上げすれば株が下がるという評論家のコメントは間違いで、事実に反する。ユーロとアジア通貨は今年大幅に高騰したが、それらのすべての国で株価が大幅に高騰した。
(8)年初に指標株に掲げた住友金属鉱山、NIF-SMBC、富山化学の3銘柄も上昇軌道を回復するだろう。
(9)ほっと一息ついたところで、話題を変えたい。

(二)閑話休題 −−− 桂離宮。

(1)ドイツの建築家ブルーノ・タウト(1880〜1938)は時代に先駆けて鉄やガラスの建物を構築した。
(2)そのブルーノ・タウトが明治の初めに来日し、桂離宮を欧米の近代建築に勝るとも劣らないと激賞し、日本人にその真価を知らしめた。
(3)私は京都に生まれたが、先週初めて桂離宮を拝観し、強い感銘を受けた。
(4)京都の東山と西山は低くてまろやかで、「布団着て寝たる姿」のように稜線が穏やかに連なっている。古くから松、檜、杉などが植林されて一年中緑が深い。京都の名刹や離宮や別荘の多くは西山と東山の山麓で、自然と緑を借景に点在している。
(5)しかし桂離宮には格別の借景がない。桂川の、ごくありふれた河川敷に造営されている。
(6)離宮の数キロ下流で桂川は加茂川、宇治川と合流し、淀川となる。天王山に登れば、三つの河川が合流する雄大な風景が眼下に一望できる。その辺りは光秀と秀吉が雌雄を決した古戦場である。天王山に続く水無瀬山は平安時代に貴人が離宮を造営して和歌を詠み、芭蕉が連歌の最高傑作「水無瀬三吟」100韻を詠み納めた名勝である。
(7)しかし桂離宮はそれらの名所旧跡とも無縁で、周辺の何処を見渡してもただの河原である。門前には100年前にできたという古びた茶店が一軒だけあって、まんじゅうを売っている。尤もそのまんじゅうは実にうまい。
(8)そんな環境だから、邸内へ導く竹垣や前庭の造作に工夫があり、離宮に入る前に心はすでにすがすがしくなっている。
(9)庭園は中央の池をめぐる回遊式である。池への導入路には松の木があり、視界を遮っている。その松の木を過ぎると突然池が現れて景色が大きく広がる。池をめぐれば、何処で立ち止まっても景色が異なり、石組みや樹木や橋や灯籠や茶室や足下の敷石の一つ一つに、洗練された工夫が行き届いていて、進むにつれて気持ちが華やぐ。
(10)武家と茶道家元の千家が造営した茶室はみな窮屈なじり口をくぐると四畳半の密室となる。密室では一期一会の緊迫した出会いが演じられて、用いられた道具と共に後生に語り継がれた。
(11)しかし宮家が造営した桂離宮は、すべての茶室が池を眺め、池に映る月を愛で、船遊びを楽しむために、広々と解放されている。桂離宮には洗練された美が凝縮されているが、密議をこらすような場所や雰囲気は何処にもない。
(12)一切の虚飾を捨てて洗練された美に、造営した宮家の育ちの良さが現れている。
(13)桂離宮は株の騰落も浮き世の義理も、すべてを忘れて心が洗われる豊かな空間である。
(14)桂離宮は宮内庁の管轄で、申し込んでおけば忘れた頃に招待状が届く。