2006/12/4

  2006年12月4日(月)

(一)反騰へ。

(1)11月に相場が急落した原因を評論家やマスコミは景気後退や円高に求めたが、私は特定の米証券とヘッジファンドによる売り崩しだろうと推定した。
(2)同時に、彼らは短期決戦で、深追いはしないと予想した。あわてた投資家が投げ売りしたところを、彼らは先物と現物の両面からすかさず買い戻しただろう。
(3)彼らは時間(現物と先物)と空間(国境)と市場(株式、債券、不動産、商品)を自由自在に渡り歩くノウハウを構築した。ヘッジの手法は多様化し、変化のスピードが速く、今後も世界各地で波乱を起こすだろう。
(4)特に、東京市場は世界第2位の巨大市場であるが、先物を完全に外国人に支配されているから、今後も彼らにねらい打ちされる可能性がある。
(5)ただし、先週は相場がすでに下げすぎの領域に入っていたから、売り崩しは激しかったが、反発力も強かった。
(6)中でも新興3市場と小型株はかえって底入れが鮮明となった。
(7)過去2週間に取り上げた銘柄は、タイミングがよかったが、今週はやや慎重に押し目を狙いたい。
(8)T-ZONEは12月15日に臨時株主総会を開き、資本準備金を利益準備金に移すという。その結果190億円に膨らむ利益準備金を、理研ビタミン、日本管財、佐藤食品等の買い増しに投入する可能性がある。

(二)リスクも浮上。

(1)しかし新たなリスクも発生している。
(2)ヨーロッパが調整期に入り、調整が長引く可能性がある。
(3)インド、香港を初め、日本以外のアジア株が追随して調整する可能性がある。
(4)ニューヨークダウは史上最高値圏でもみ合っているが、短期的には調整してもおかしくない水準に達している。
(5)それらの市場に共通したリスク要因は、第1に総強気の裏目、第2にドルの独歩安、第3に商品相場の反騰、の3点で、マネーの流れに変調を来す恐れもある。
(6)変調の内容とタイミングはわまだからないが、注意して見守りたい。

(三)リスクとチャンス。

(1)明星ラーメンの買収合戦で日清食品に破れたスティールパートナーズが、一転して買収の矛先を日清食品に向けた。明星食品は決着がついたが、ここからは日清食品の攻防が本格化するだろう。
(2)スティールパートナーズは買収を本業とするプロである。その驚異的な二枚腰は日本に本格的な大買収時代がきたことを示している。
(3)日本企業の買収に対する無防備は大きなリスクである。しかし経営者のリスクは投資家のチャンスである。
(4)買収企業に関する情報はインサイダーでなければつかめないが、買収されやすい企業は推定できる。
(5)例えば住友金属鉱山と川西倉庫は共に旧住友財閥と旧川西財閥の中核企業で、含み資産は厚いが、経営者の脇が甘い。
(6)前項のT-ZONEの投資先はみな優良企業で、傑出した財務内容に着目している。同社では純投資と説明しているが、一貫して買い増しを続けており、買収に発展する可能性がある。
(7)GCAは買収のノウハウ、人材、実績、国際性のすべてで傑出している。押し目を買ってその行動を観察するのも一策である。

(四)日銀の利上げが近い。

(1)日銀総裁は先週、公定歩合引き上げの目標は単にインフレ抑制にあるわけではない、日銀は早期に金利を適正水準に引き上げて、不況になればすかさず金融緩和政策を打ち出す責任がある、と述べた。明らかに利上げの決意表明である。
(2)金利を適正な水準に保つことは欧米の中央銀行にとって最大の責任であって、日本の政治家とエコノミストに欠落した視点である。
(3)日本の政府は1,000兆円近い国債の利払い負担を恐れる余り、日銀にゼロ金利政策を強制している。その結果、世界的な金利上昇の潮流に逆らった低金利政策が様々なひずみを引き起こした。
(4)第1に、円はドル以外の通貨に対して暴落した。
(5)第2に、欧米の投機筋ばかりか、日本人自身がゼロ金利の円を売って外貨建て預金に走る大規模な「円キャリートレード」が発生している。
(6)ヨーロッパの通貨がユーロに統一されるまで、イタリア人は自国通貨のリラを信用せず、争ってスイスフランに換えたから、アルプス山中のイタリア・スイスの国境の寒村ルガノに銀行が林立した。円キャリートレードは当時のイタリアと同様に国民の不信感を表している。
(7)第3に、日本人は700兆円という世界最大の預貯金を蓄積したにもかかわらず消費がふるわない。もし欧米並みに4〜5%の利息を付ければ日本人は年間30兆円の金利収入を受け取るから、消費は急増し、景気は必ず好転する。
(8)アメリカではグリーンスパン前議長がくりかえし「FRBはアメリカ人の財産である住宅価格の反落に備えて、今、金利を適正水準に引き上げるのだ」と言明した。バーナンキ現議長も同じ金融政策を踏襲している。
(9)これに対してゼロ金利の日本では、景気が悪化しても日銀は金融緩和政策を打ち出せない。
(10)日銀総裁は金利の適正水準に言及することによって公定歩合引き上げの決意を表明した。さらなるコメント次第で、円はユーロに対しても底入れする可能性がある。