2006/11/27

  2006年11月27日(月)
  東京市場独歩安の謎を解く。

(一)不可解で不自然な東京独歩安。

(1)先週は私が予想したとおり円高が進行したが、実態は円高ではなく「ドルの独歩安」であった。円はドルに対して値上がりしたが、ユーロやアジア通貨に対しては値下がりしたからである。つまり値上がりしたのは円ではなく、ユーロと日本を除くアジア通貨であった。
(2)過去1ヶ月間を見ても、円が勝った通貨はドルだけで、特に中国を含むすべてのアジア通貨に負けた。
(3)円高が株安を招いたという日経の解説は間違っている。ユーロとアジア通貨が大幅に高騰したが、それらの国の株価はみな高騰したからである。
(4)通貨との関係でみれば、第1に、通貨が値上がりした国はみな株価が上がった。第2に、唯一通貨が下落したアメリカも株価は大幅に値上がりした。
(5)すなわち、東京市場は世界の株価の上昇トレンドと関係のない要因で下落したのである。
(6)日本株の下落要因は何者かによる売り仕掛けだったと私は思う。何者かとは米系証券会社と特定のヘッジファンドだろう。
(7)それならば、なぜ日本で売り仕掛けが成功したかを、以下に考えてみたい。

(二)円高は株高である。

(1)日本の為替相場の歴史を見れば「円高は株安」ではなく、「円高は株高」であることが歴然としている。
(2)戦後、円は1ドル360円から80円まで4.5倍に大暴騰したが、日経ダウはその間に暴騰に次ぐ暴騰を演じ、39,000円に達した。円安に転じてから、日経ダウは暴落し、いまだに立ち直れない。
(3)円高が輸出企業の業績を悪化させるという「マスコミの常識」も間違っている。
(4)円が4.5倍に大暴騰した30年間にトヨタ、ホンダ、松下、ソニー、キャノンなど日本を代表する輸出企業はみな大成長した。
(5)第二次世界大戦後、世界の経済発展を牽引したのは敗戦国の日本とドイツであった。日本円とドイツマルクは共に暴騰したが、日経は円高が日本の経済成長を妨げると主張したのに対して、ドイツでマルク高を恐れる論評は皆無であった。そればかりか、マルク高はドイツ人を金持ちにすると大歓迎した。
(6)私自身も1970年頃にドイツのベンツ本社を訪問したが、経営者はマルク高が進行してもベンツの輸出競争力はびくともしないと胸を張っていた。円高で輸出産業が壊滅すると大騒ぎしていた日本とのあまりの違いに驚いた記憶が今も鮮明である。
(7)それから35年経った現在もなお、日経は円高株安論、円高不況論を捨てない。日経は弱気の先入観に捕らわれて事実を見ていない。
(8)欧米では国民もまた通貨高を歓迎する。円高を悲観する国民は世界中で日本人だけだろう。通貨が上がれば外国人よりも金持ちになり、株価や地価が上がる。
(9)もし日銀が公定歩合を大幅に上げれば、即座に預貯金の利息が増える。消費が増えて景気が好転する。欧米の利息は4〜5%であるがそれでも アメリカ人が貯金しないのは、家や株を買った方が儲かったからである。日本も金利を上げれば円高が進行し、株や家が値上がりする。日本国民は政府や日経にだまされず、高金利政策、円高政策を要求するべきである。

(三)弱気論を排する。

(1)日経の不可解な弱気論は随所に見える。例えば日本の不動産相場は過去4年間にようや く大暴落から脱出したが、アメリカの不動産相場がわずかばかり値下がりすると天井説ばかりを報道する。
(2)アメリカの不動産相場は1991年以来2ケタ上昇を続けているが、アメリカ国内では短期的な調整を歓迎する論調こそあれ、大天井説は殆どない。中央銀行は住宅の値下がりに備えてすでに金利を上げており、必要に応じて金利を下げて住宅相場をてこ入れする用意があると表明している。
(3)ロンドンの不動産は10年以上にわたり毎年史上最高値を更新しているが、今年も2ケタ上昇が続いている。それでも高すぎるという悲観論はない。
(4)日本でも不動産投信は全銘柄が連日高値を更新しており、相場は不動産の先高を先見している。
(5)にもかかわらず、エコノミストの間で景気後退説が見え始めた。悲観論者の眼にはBRICsの超高度成長も、商品相場の大暴騰も、先物市場で巨大資金が創造されている状況も見えないらしい。
(6)今日ではノーベル経済学賞の受賞者はみな数学の出身者である。ウォール街の社員採用も理数系を優先する。その結果、金融市場で数学を駆使した実践的な投資理論が発達し、先物市場の投資手法と投資効率に革命的な変化が起こった。ニューヨーク、シカゴ、 ロンドンで、不動産や商品のようなモノが投信やオプションやETFに組み替えられて次々に金融商品に変身し、金融市場の資金量を増幅している。
(7)しかし日本の大証券はいまだにノルマ営業に明け暮れて、知識集約産業に一変した金融市場の構造変化に対応しない。海外から東京市場を見れば野村證券といえども地場証券の一つにすぎないから、東京市場は海外の証券会社に完全に占拠されたのである。
(8)日本勢が無気力な東京市場で、リスクを恐れない米国証券とヘッジファンドが手を組めば先物を利用して日本株売り崩すことは困難ではない。彼らの期待通りに日経と評論家は株価急落の原因を景気後退論や円高不況論で説明するから、あわてた投資家の投げ売り を誘発し、ヘッジファンドの思うつぼにはまる。
(9)これが世界中で東京市場だけが急落した原因だと私は思う。

(四)すでに反騰は始まった。

(1)私の推論が正しければ、反騰は目前だろう。
(2)ヘッジファンドは当初から短期決戦狙いである。
(3)売り崩しは万人強気の虚をついて成功した。深追いはリスクが高い。
(4)新興3市場は日経ダウに逆行し始めた。
(5)中小型株の中にも日経ダウに逆行する銘柄が見える。
(6)楽天を初め外国人売りの目標となった銘柄に抵抗力がついた。
(7)業種別に見れば、海運に次いで機械が底入れした。
(8)トヨタ、キャノン等の輸出株は円高よりも、長期上昇による疲れが見える。
(9)商品相場は反騰期入りが濃厚。住友金属鉱山の指標性に注目。

(五)銘柄。

(1)M&A時代の本命GCAは押し目買い一貫。
(2)鳥インフルエンザで富山化学の新薬と仕手性に注目。