(1)先週は白昼夢を見るかの如き、奇怪な展開となった。世界中の株価が高騰した中で日本株だけが売り込まれたのである。
(2)日本株がなぜ売り込まれたかを考える前に、欧米の株価がなぜ新値街道をばく進しているかを考えみたい。
(3)第1に、世界経済は拡大一途である。しかも今、世界経済の拡大を索引する機関車は欧米、日本からBRICs4ヶ国に変わった。すなわち中国、インド、ロシア、ブラジル4ヶ国は1995年に世界の経済成長の11%を占めたに過ぎなかったが、2005年には34%を占める高度成長国に変身した。
(4)第2に、4ヶ国の人口は地球人口60億人の半分30億人を占めているから石油、穀物、鉄鋼、非鉄を初めありとあらゆる商品の受給関係が逼迫し、商品相場は軒並みに暴騰した。
(5)第3に、ニューヨークとロンドンの金融市場は商品指数や個別商品を次々に投信やオプション等の金融商品に組み替えたから、金融市場の上場品目が増加し、資金量が急膨張した。
(6)3年前に、中国の需要急増を受けて日本の鋼材の輸出価格が急騰し、輸出量も激増した。当時すでに中国、韓国の鉄鋼業界はフル操業となっていたから、私は3年後に日本の高炉3社の業績は史上最高益を更新すると試算し、額面割れの住金を千載一遇の買いの好機だと推奨した。しかし当時、エコノミストとアナリストで鉄鋼業界のブーム到来を予見した人は一人もいなかった。私は今、鉄鋼業界で起こったのと同じ構造変化が世界の株式市場で進行していると思う。
(7)今日では株式と不動産投信、商品投信が連鎖して高騰し、金融市場の資金量が急膨張する時代が始まったのである。
(8)一方、中国は日本を抜いてダントツの対米輸出国となり、日本にとってもダントツの貿易相手国となった。BRICsの2ケタ成長が続く限り、短期的な波乱を乗り越えて、株価と物価の上昇は続くだろう。
(9)低開発国の台頭こそ、21世紀を象徴する構造変化の核心である。