2006/11/20

  2006年11月20日(月)

(一)絶好調の世界、絶不調の日本。

(1)先週は白昼夢を見るかの如き、奇怪な展開となった。世界中の株価が高騰した中で日本株だけが売り込まれたのである。
(2)日本株がなぜ売り込まれたかを考える前に、欧米の株価がなぜ新値街道をばく進しているかを考えみたい。
(3)第1に、世界経済は拡大一途である。しかも今、世界経済の拡大を索引する機関車は欧米、日本からBRICs4ヶ国に変わった。すなわち中国、インド、ロシア、ブラジル4ヶ国は1995年に世界の経済成長の11%を占めたに過ぎなかったが、2005年には34%を占める高度成長国に変身した。
(4)第2に、4ヶ国の人口は地球人口60億人の半分30億人を占めているから石油、穀物、鉄鋼、非鉄を初めありとあらゆる商品の受給関係が逼迫し、商品相場は軒並みに暴騰した。
(5)第3に、ニューヨークとロンドンの金融市場は商品指数や個別商品を次々に投信やオプション等の金融商品に組み替えたから、金融市場の上場品目が増加し、資金量が急膨張した。
(6)3年前に、中国の需要急増を受けて日本の鋼材の輸出価格が急騰し、輸出量も激増した。当時すでに中国、韓国の鉄鋼業界はフル操業となっていたから、私は3年後に日本の高炉3社の業績は史上最高益を更新すると試算し、額面割れの住金を千載一遇の買いの好機だと推奨した。しかし当時、エコノミストとアナリストで鉄鋼業界のブーム到来を予見した人は一人もいなかった。私は今、鉄鋼業界で起こったのと同じ構造変化が世界の株式市場で進行していると思う。
(7)今日では株式と不動産投信、商品投信が連鎖して高騰し、金融市場の資金量が急膨張する時代が始まったのである。
(8)一方、中国は日本を抜いてダントツの対米輸出国となり、日本にとってもダントツの貿易相手国となった。BRICsの2ケタ成長が続く限り、短期的な波乱を乗り越えて、株価と物価の上昇は続くだろう。
(9)低開発国の台頭こそ、21世紀を象徴する構造変化の核心である。

(二)なぜ東京市場だけが弱いのか。

(1)それならばなぜ東京市場だけが安いのかと言えば、最大の原因は円安だろう。
(2)第1に、日本人は世界ダントツの700兆円の預貯金を蓄積したが、ゼロ金利で利息がつかないから、日本人自身が円を売って高金利のドルやユーロやオーストラリアドルに乗り換えている。
(3)日本人が円を嫌って外貨に乗り換えているときに、外国人が円を買い、日本株を買うわけがない。外国人は日本の銀行から円を借りてドルやユーロに乗り換えて金利のさやを取り、或いは外国株を買って大もうけしている。これが円キャリートレードの現実であり、円安の原因である。
(4)ところが日本の政府は赤字国債の利払いに苦しんで日銀にゼロ金利政策を強制している。
(5)もし預貯金の利息が欧米並みの4%になれば、日本人は年間28兆円の利息収入が増えるから、消費は必ず急増する。日本は輸出も設備投資も企業業績も高水準だから消費が増えれば景気は一気によくなる。そうなれば外国人は強い円、強い業績を求めて争って日本株を買う。
(6)アメリカやヨーロッパが公定歩合をどんどん引き上げたのは単にインフレを抑制するためではない。金利を適正な水準に引き上げておけば、不景気になった時に金融を緩和して景気をテコ入れすることができるからである。
(7)しかし日本はゼロ金利の上に、1,000兆円近い赤字国債を抱えているから、不景気になっても日銀は金融緩和の手が打てない。政府は財政投融資ができない。
(8)日銀は、年内に公定歩合を引き上げるべきである。同時に、日銀総裁は金融政策の目標を日本国民と世界に示すべきである。

(三)日本株底入れの条件。

(1)世界の経済は拡大している。
(2)世界のマネーは膨張している。
(3)日銀の公定歩合引き上げが近い。
(4)ニューヨークダウも史上最高値を更新するまでは弱気派の抵抗で一進一退を繰り返した。しかし更新後は成長圏をばく進し、弱気派を粉砕した。東京市場も早晩世界的な株高に追随するだろう。

(四)銘柄。

(1)大型株は総じて二番底を形成中である。
(2)業績不振株もほぼ悪材料を織り込んだ。
(3)新規公開株の中に、突っ込み買いのチャンスがある。
(4)アストマックス(8734)は上場直後の減額修正で株価が5分の1以下に大暴落した。主幹事の大和証券の責任は重いが、時価は下げすぎだろう。野村、大和、日興が商品市場への参入を表明しており、商品投信の組成で証券、銀行と提携関係を結ぶ好機を迎えている。
(5)スパークスは好調な中間決算にもかかわらず、株価が内紛説などで不可解な下落を続けた。先週末に組織変更に伴う持ち株移動が報じられた。自社株買いもあってようやく下げ止まった。一部市場昇格が遅れた事情も組織変更にあったと思われるが、阿部社長は株主に現状を説明する責任がある。
(6)富山化学について、16日付日経は『イノベーション・日本の底力』で「富山化学は新型インフルエンザの治療薬につながる候補物質を発見した。タミフルを上回る効果が期待されており、米国立衛生研究所(NIH)の協力を得て年明けにも日米で臨床試験を始める計画だ」と報じている。