2006/10/23

  2006年10月23日(月)

(一)相場観。

強気は不変。二進一退の上昇局面が続く。

(二)日本の中小型、新興市場暴落の背景。

(1)水が土地の低い所へ流れるように、マネーは金利の高い国へ流れる。今年はアメリカとヨーロッパが連続して公定歩合を引き上げたために世界のホットマネーは利回りの高いユーロとドルに引き寄せられた。これが円安の最大の背景である。
(2)今年、欧米の中央銀行が金利を連続して上げたのは単にインフレを抑制するためではない。将来景気が悪化したときにすかさず金融緩和の手が打てるように金利を適正な水準の引き上げておく必要があるからである。
(3)日銀は現在も異常なゼロ金利を継続しているから、景気が悪化したときに金融緩和の手が打てない。それゆえ日銀は今、間違いなくゼロ金利から脱出するタイミングを狙っている。
(4)円は今、1ドル120円、1ユーロ150円の年初来安値に達したところで投機筋の攻防が続いている。為替ディーラーはみなチャートを見て円安トレンドは不変だと主張しているが、私はトレンドそのものが大転換する可能性があると思う。
(5) 第1に、世界最大の産油国にのし上がったロシアが急増する外貨をドルからユーロへ、ドルからポンドへと移し、更に先週にはドルから円に移すと表明した。
(6)第2に、日銀総裁は年内にも公定歩合を引き上げる意向を談話でにじませている。
(7)第3に、日銀は円のキャリートレードの実情調査に入った。
(8)上の3点は、はいずれも円高をもたらす条件である。円高となれば株式市場にも重要な変化が起こる。
(9)ロシアに限らず、産油国はみな巨額の外貨を積み上げている。彼らは今年、その外貨をヨーロッパとアメリカの株式に投資してきたが、円高転換と見れば必ず円にヘッジするために日本株を買う。その場合は輸出株よりも内需株に人気が移る。

(三)寡占から独占に踏み出したイオン。

(1)ジャスコを創業した先代の岡田社長は、経営を二代目に引き継ぐに際して、「現状のままでは必ずウォルマートの支配に屈する。巨大化を急げ」と告げた。
(2)2代目社長はヤオハンやマイカルを買収し、更にダイエーとダイエー傘下のマルエツを買収して、ついに日本の小売業で独占的な地位を構築した。
(3)ダイエーを創業した中内社長もまた日本のウォルマートを目指し、「エブリデイロウプライス」の看板をそのまま「毎日が安売り」と書き換えてウォルマートに対抗するために巨大化を急いだ。
(4)一方、イトーヨーカ堂の2代目社長はバブル崩壊期を無借金で切り抜けたために経営が消極的となり、寡占時代から独占時代へという時代の大転換を見通す構想力が欠けたのではないか。イオンとの格差は拡大一途となるだろう。
(5)一旦独占体制を築けば、巨大な売上高を背景に仕入れや物流機構で絶対的な競争力を確立することは、ウォルマートの成長の歴史が明快に証明している。
(6)ウォルマートは2位以下を粉砕して独占を強化し、しかもなお成長を止めない。今やウォルマートはNYダウ採用30社を代表する成長株である。
(7)イオンはスーパー業界で独占体制を築いたが、家電、トイレタリー、薬品、衣料品等の市場でチェーンストアの攻勢に苦戦している。しかし巨大化すれば買収を含む多彩な対抗手段が可能となる。チェーンストアとの競争に勝てば、名実ともに日本のウォルマートとなる。
(8)そのイオンが大型増資に踏み切った。攻めるための資金調達だから、個人投資家にも応募を奨めたい。

(四)ダイエーの復活。

(1)ダイエーは創業社長中内氏が果たせなかった夢の実現を、ライバル企業の岡田社長に託する結果となった。
(2)ダイエーは竹中大臣の構造改革の生けにえとなって経営権が転々とし、巨大な不動産と人材を失った。しかしダイエーつぶしの風説におびえる時期は終わった。
(3)ダイエーは現在もなお豊富な不動産を残しており、いつでも売却益を得て無借金に転換することができる。スーパー業界の泣き所である衣料品部門でもユニクロとの大規模な提携がスタートした。ちなみにユニクロの柳井社長は中内氏に私淑して日本一の衣料品店を目指した。
(4)無借金となり、食料品と衣料品が両輪となれば、ダイエーの競争力が復活する。これからは好材料ばかりが表面化するだろう。
(5)ダイエーは小売業で最も投資効率が高い株だ、と私は思う。