2006/10/16

  2006年10月16日(月)

(一)NYダウ史上最高値更新のインパクト。

(1)今日ではコンピュータの発達によってありとあらゆる先物オプションがダウに集中して仕掛けられているから、NYダウこそ世界ダントツの大型株となった。
(2)先物取引は担保5%の世界だから、資金量の20倍の相場が張れる。NYダウの史上最高値の更新をめぐる攻防は強気派と弱気派の決戦の場であり、その決着はその後の相場に大きなインパクトを与える。
(3)一旦最高値を突破すればNYダウは未踏の成層圏を駆け上がる。
(4)NYダウ先物には世界中の機関投資家、証券、銀行、保険等が参加しているから、最高値突破の影響はリアルタイムで世界中に波及する。
(5)過去2ヶ月間に私は上記4点を中心に、NYダウの史上最高値更新と、そのインパクトを予想した。現在までの経過と結果はほぼ予想通りである。
(6)しかし同時に私は重要な間違いを犯した。日本の中小型、新興市場の株価もNYダウに連鎖して反騰に転じると予想したが、現実には暴落の連鎖に陥った。なぜだろうか。

(二)日本の中小型、新興市場暴落の背景。

(1)株価の極端な二極分化が進行したのは世界の株式市場で東京市場だけである。例えばアメリカではNYダウの最高値更新に前後してナスダックやSP500がNYダウに急速にサヤ寄せしている。例えば新興企業を集めたインドのムンバイはNYダウに先駆けて史上最高値を更新し、その後の騰勢もきわめて強い。日本の中小型新興市場不振の理由は次の如くだろう。
(2)第1に、日本の機関投資家はNYダウや日経ダウの急騰に対応して、一斉に日経ダウに連鎖するようポートフォリオを組み替えた。すなわち中小型株を売って日経ダウ採用225銘柄、中でもコア30の大型銘柄に乗り換えた。これが2極分化の最大の理由だろう。しかし状況はもっと輻輳している。
(3)第2に、外国証券がソフトバンク、ヤフー、楽天などに極端な弱気レポートを集中させる一方、借り株を用いて売り崩しに出た。
(4)第3に、中小型、新興市場は今春以降一貫して下落を続け、マザーズやヘラクレス市場に至っては60%以上の大暴落を演じた。その結果中小型株投信は運用成績が悪化して大口の解約に見舞われた。例えば私が推奨したスパークス投資顧問が急落したが、日経金融は先週、運用資産2兆円のうち中小型ファンド3,000億円の解約に直面したと報じた。中小型株ファンドはみなスパークスと同じ窮地に追い込まれているから、解約に伴う処分売りが暴落に拍車を掛けたと推定される。
(5)第4に、その結果個人投資家は信用取引の厳しい清算を迫られた。信用取引の残高は1週間遅れで公表されるが、2〜4月の6兆円から9月には4兆円へ急減し、先週末には3.5兆円程度まで激減したと推定される。
(6)このような極端な2極分化は更に続くよりも、反騰に転じる可能性が高いと私は思う。その理由は次項の如くである。

(三)中小型、新興市場も反騰へ。

(1)NYダウの最高値更新を契機に日経ダウも上昇トレンドを鮮明にした。しかし弱気派の踏み上げとポートフォリオの組み替えによる急騰局面は先週で山場を過ぎた。ここからは一進一退のじり高となるだろう。
(2)ただし大型株は需給関係が好転したから、決算や材料に意外性が出れば個別に上昇しやすい状態にある。例えば日経ダウ採用225銘柄の中でも、住友金属鉱山は予想株価収益率7倍まで売り込まれた。この種の銘柄の反騰も期待できる。
(3)クラブ9はコラムの冒頭に二つの投資原則を掲げている。「第1条、相場の世界では少数意見が勝つ。第2条、相場とは少数意見が多数意見に変わる課程である。」と。
(4)わずか1ヶ月前には弱気論が充満し、強気論者も弱気に変節していた。世界的な株価急騰を予見する強気論者は少数派に転落していた。しかし先週には強気論が台頭し、少数意見は多数意見に変化し始めた。すなわちクラブ9の投資原則が鮮明に現れた局面である。
(5)一方で、中小型、新興市場を回復不能と見る弱気論が多数意見となった。多数意見がきわまれば転機が近い。転機をもたらす条件も成熟している。
(6)何よりも信用取引の残高が空前のスピードで激減した。6ヶ月期日も先週でピークを過ぎた。もはや新たに大きな売り玉は出ないだろう。外資系証券もまた借りた株の買い戻しを迫られるだろう。
(7)当面は小口買いによる自立的反発が期待できる。自立反騰は3分の1戻り,半値戻りが目標となる。次いで出来高を伴う本格反騰となれば、半値戻りの中から全値戻りが出てくる。大半の銘柄が3分の1以下に大暴落した後だけに、自立反騰でも値幅は大きい。
(8)リスクが取れる投資家は大型株を追いかけるよりも、大暴落した銘柄の反騰を狙う方が投資効率は高いだろう。
(9)暴落局面での上場で、GCA(2126)、M&A(2127)のように安寄りした銘柄にもチャンスがあるだろう。