(一)弱気相場の転機を探る。 |
(1)東京市場は弱気局面が続いている。特に日経ダウよりも個人投資家のダメージがきわめて厳しい。転機はいつ、どのように訪れるのだろうか。
(2)現在でも圧倒的に強い市場がある。NYダウは史上最高値を目前に高値圏でもみ合っている。香港、ムンバイ(インド)はすでに高値を更新した。
(3)アメリカの最大の悪材料は住宅バブルの崩壊である。日本では1990年に不動産バブル崩壊が始まったから、アメリカでもその悪夢が再現するという論評が多い。しかしアメリカの不動産は今日では金融商品に変質しており、不動産投信は長期国債の金利と連動する。FRBは住宅不況が深刻化する前に金融緩和に踏み切る構えだから、軟着陸が可能だろう。
(4)アメリカのヘッジファンド「アマランス」が天然ガス先物取引で60億ドル(7,000億円)の損失を計上し、商品相場にショックを与えた。しかし前回にも述べたように先物取引は担保5%の投機性の高い市場だから、失敗したときの損失も大きいが決済も早い。すでにアマランス問題は買収又は解体によって解決するめどがついたという。ある程度の余震は残るだろうが、商品相場の反騰は予想外に早い可能性もある。
(5)日本ではソフトバンク、ヤフー、楽天の大型3銘柄が外国人売りの標的となって激しく売り込まれた。確かにインターネットと名が付けば、PER100倍も200倍も可能だという人気先行の時代は終わった。
(6)しかし外国証券はレポートで目標株価を大幅に引き下げる一方、大量の借り株を用いて売り崩しに出ている。借りた株は返済する必要があるから、いつまでも売り一辺倒にはならないだろう。
(7)3銘柄に限らず、新興市場や中小型株が暴落し、4月高値の期日を目前に個人投資家が窮地に追い込まれている。外国人投資家の借り株による売り崩しも広範囲に出ている。しかし一方で信用残が急減しており、期日売りは早めにピークを過ぎるのではないか。
(8)東京市場は悪材料ばかりと見えるが、「好材料が見あたらないのが好材料」という格言がある。「理外の理」や「彼岸底」といった格言もある。
(9)NYダウが最高値を更新すれば世界の投資家に勇気を与える。東京市場反転のきっかけとなる可能性がある。
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(二)鳥インフルエンザと富山化学のT-705。 |
(1)富山化学も厳しい下落に直面した。不明をお詫びしたい。ガレノキサシンが米国での発売が遅延するという悪材料が出たが、T-705の開発が進行しているという情報もある。
(2)三菱UFJ証券から「鳥インフルエンザの脅威と対策」という表題で21ページにわたる詳細なレポートが出た。以下にそのポイントを要約、紹介しておきたい。正確には本文を取り寄せて参照されたい。
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(三)鳥インフルエンザとバンデミック。 |
(1)新型鳥インフルエンザのバンデミック(大流行)は必至である。20世紀のバンデミック(大流行)は次の三回である。〔1〕1918年・スペイン風邪(H1N1型)。〔2〕1957年・アジア風邪(H2N2型)。〔3〕1968年・香港風邪 (H3N2型)。
(2)今回の鳥インフルエンザは 新型のH5N1型である。
(3)インフルエンザは殆ど毎年流行しているが、バンデミックを起こすウイルスは新型でヒトが抗体を持たないために重症化しやすく、悪性度が高い。
(4)WHO(世界保険機構)の統計で2006年は感染者97名に対して死亡者数85名、致死率は67%に達している。
(5)バンデミックとなった場合の予想死亡者数は世界保険機構を初め各国の推計で740万人以上との見方が多い。
(6)厚生労働省は日本で3200万人が罹患し、64万人が死亡すると推計している。
(7)現在はバンデミックの10段階のフェーズ3である。一度ヒトーヒト感染が拡大すればフェーズ6迄一気に急進する。
(8)ヒトーヒト感染が50例を超えると、WHO(世界保険機構)はバンデミック宣言を行う。今すぐ対策を講じる必要がある。
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(四)政府備蓄市場とタミフル。 |
(1)世界の政府備蓄全体の市場規模は6,000億円。
(2)現状ではタミフルが各国の政府備蓄の主たる対象となっている。
(3)タミフルの売上高は2006年度に1,000億円。3年間で3,000億円に達する予想である。
(4)しかしタミフルはH5N1型への臨床を行っていない。患者が限定的で臨床は困難である。今までに数例の臨床が行われたようで、患者が救われた報告例はない。
(5)タミフルは通常の季節性の風邪に利くという理由だけで、各国の国家備蓄に巨額の税金が投入されている。
(6)富山化学T-705との比較は後述を参照されたい。
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(五)ワクチン。 |
(1)日本を含む各国のワクチンの開発状況を三菱UFJのレポートは詳細に報じている。
(2)抗体誘導ができるかどうかは臨床試験の結果待ちで、現在は効果が不明である。
(3)ワクチンは供給量に不安がある。
(4)次のバンデミックを、どのウイルスが引き起こすかが予知できないから、開発中のワクチンが有効かどうかはわからない。 |
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(六)鳥インフルエンザA(H5N1)型に有効な富山化学T-705。 |
(1)2006年3月20日に、ユタ州立大学のシドウエル博士(Dr.Sidwell)がハワイで行われた呼吸器ウイルス感染症シンポジウムにおいて「T-705のインフルエンザA(H5N1)型ウイルスに対する阻害作用」の発表を行い、驚異的な阻害効果のデータを公表した。
(2)タミフルとの比較データでも明快な優劣が出ている。
(3)シドウエル博士が発表したデータの詳細は三菱UFJ証券のレポートに記載されている。
(4)T-705は富山化学とユタ州立大学で現在前臨床試験を実施中で、遅くとも年内に日米で新薬の臨床試験申請を行う予定である。
(5)フェーズ1は2ヶ月程度で終了する予定である。
(6)患者への試験投与を行うフェーズ2は2007年半ばに始まり、2008年初めまでに終了する予定である。
(7)新薬認可の申請は2007年冬から翌春にかけて日米同時に行う予定である。
(8)緊急性から、認可は2008年秋までに行われる可能性がある。 |
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(七)シドウエル博士が10月26日に日本の学会で講演。 |
(1)10月26日に京王プラザホテルで日本化学療法学会と日本感染症学会の合同学会が行われる。
(2)シンポジウムではT-705の開発を行っているシドウェル博士と富山化学が「インフルエンザに対する新しい治療戦略」について発表する。
(3)シドウェル博士は米国の国立感染症研究所からT-705の研究委託を受けてユタ大学で動物実験を行った。博士は政府機関にも関与しているから、米国政府の鳥インフルエンザ戦略に関する質疑応答が注目される。 |
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(八)T-705の潜在市場は4,000億円。 |
(1)主要国がT-705を政府備蓄の対象とした場合の潜在需要は4,000億円と推定される。経口薬だから、有効期間を3年とすれば、3年ごとに4,000億円の潜在需要が見込まれる。
(2)ただし、新たにT-705の競合品が出ないこと、バンデミックになって同剤が大量に使用された結果耐性株が出現して効果が減弱しないこと、等の条件付きである。 |
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(九)世界人類のためにT-705の早期開発が待たれる。 |
(1)T-705に対する評価は、臨床中ということで流動的である。
(2)富山化学は2008年までに政府備蓄向けに供給したいとしている。
(3)バンデミックの恐怖は迫っており、日本を除く世界のマスコミが警鐘を鳴らしているが、現在のところ治療薬は存在しない。
(4)T-705は動物実験ながら、H5N1型インフルエンザに効果を示し、臨床応用に最も近い世界で唯一の薬剤である。
(5)米国はT-705の開発を急いでいる。FDA,NIH等の国家機関が同剤の開発を全面的にバックアップしている。
(6)日本の厚生労働省も同剤をもって国際貢献できるチャンスとみており、優先審査の対象としている。
(7)富山化学も同剤の開発・製造を経営の最優先課題と位置づけている。 |