2006/9/4

  2006年9月4日(月)
  拡大する世界経済と大型株。
  ホリエモン裁判の虚実。

(一)相場観。

(1)ニューヨークダウが再度、史上最高値まで後300ドルに肉薄した。今年2度目の挑戦で、年内に達成する可能性がある。
(2)個別銘柄が史上最高値を更新した場合には、すべての買い方が儲かり、すべての売り方が損をするから、大踏み上げに発展する場合が多い。ニューヨークダウは世界の株価の指標だから、世界中の投資家に大きな勇気を与えるだろう。
(3)日経ダウは史上最高値の半分にも達しないが、預貯金から株式投信へ個人マネーが本格的に流入し始めた。資本主義社会の市民として当然の貯蓄行動が、日本でもやっと始まったのである。株式相場が上がれば国債相場は下がる。公的年金は国債一辺倒から株式重視へ、運用方針の転換を急ぐ必要がある。
(4)高水準の石油相場からみて、オイルマネー(外国人買い)が衰えるとは考えにくい。
(5)今年は中国が10%成長、インドが8.5%成長を見込んでいる。地球人口60億人のうち25億人を占める両国の超高度成長がすべての資源の歴史的な高騰をもたらした。
(6)その結果、高度成長は資源大国のロシアやブラジルに波及し、さらに中南米、アフリカの資源保有国のナショナリズムを刺激した。
(7)20世紀後半には、欧米と日本だけが世界の経済成長を牽引したが、21世紀に入って、経済的後進国が経済成長の主役に躍り出た。
(8)すなわち、世界経済は地球規模で拡大しており、世界の国民総生産はすでに大幅に史上最高を更新中である。

(二)業種と銘柄。

(1)商品相場の高騰を受けて、日本でも市況産業、総合商社、プラント等のオールドエコノミーが一斉に復活した。オールドエコノミーは含み資産が多く、買収に備えて自社株買いや株式の持ち合いを進めており、株式の需給関係も好転している。今後もじり高が続くだろう。
(2)中でも、買収や業界再編成の時代を迎えて、業界トップ企業の再評価が進む。金融では野村證券、プラントでは三菱重工、運輸では日通の出遅れが鮮明で、本来の実力を発揮する局面を迎えた。
(3)無配から復配に向かう大型株にも注目したい。住金や千代建のように、無配株が復配するときには10倍以上に暴騰する場合が多い。復配すれば投信や年金がポートフォリオに組み込むから、需給関係も劇的に改善する。無配株は悪材料を織り込んでいるから下値が乏しく、好材料に大きく反応する。日本航空とダイエーは悪目買いの好機である。
(4)久しく沈滞していた水産の台頭にも注目したい。畜産や養鶏に比べて水産は病原菌に汚染されていない。世界的な健康志向にもマッチしている。中でも日水とマルハは水産資源の流通と加工で世界のトップ企業である。株価はここから大相場に発展する可能性がある。
(5)ソフトバンク、楽天が売り目標となり、新興市場の足を引っ張っている。残念ながら両社の底入れが新興市場反騰の条件となっている。
(6)株式市場に流入する資金量が増加しているから、浮動株が多く、出遅れが目立っていた巨大企業の株価が意外に軽い。住友金属鉱山や新日鐵も、信用買い残が急減している。

(三)ホリエモン裁判の虚実。

(1)私は堀江社長が逮捕された直後から一貫して堀江社長の無罪を主張して来た。根拠は次の通りであった。
(2)第1に、検察は投資組合が関わる自社株売買を違法行為と判断したが、新興市場で同様な問題を抱えた企業は多数あった。
(3)現にライブドア事件が起こった直後に、金融庁は他の上場企業にも投資組合の出資者名簿の提出を求めたために、摘発を恐れた資金が一斉に逃げ出し、新興市場の株価が大暴落を演じた。これが現在まで新興市場不振の原因として尾を引いている。
(4)例えば、Eトレードは大株主上位10人のうち4人まで親会社が組成した投資組合であった。Eトレードはライブドア事件の発生後に、大株主名簿から4人の投資組合を削除した。Eトレードには不法という意識はなかったが、ライブドア事件のとばっちりを受けることを避けたと推定される。
(5)このような事実は検察が金融庁や取引所の判断を待たずに、ホリエモンを一罰百戒の標的として暴走したことをうかがわせる。
(6)第2に、検察は投資組合が得た利益をライブドアの売上高、利益に計上した点を違法と判断した。しかし事件後に、投資組合の決算を連結会社として経理処理するように経理基準が改正された事実を見れば、事件発生以前には投資組合の決算処理に関する明確なルールがなかったことを示している。
(7)第3に、堀江社長は当初からライブドアが急成長するためにあえて法律のグレーゾーンで勝負すると言明していた。当然、経理のプロである宮内取締役に合法性を確認した上で決算処理を実行したと思われる。
(8)だからこそ堀江社長は最後まで検察の調書にハンコを押さなかったのだろう。私は事件発生当時も今も、検察が裁判で宮内取締役はともかく、堀江社長の有罪を立証するのは困難だと思う。
(9)ついでながら、現在ソフトバンクと楽天が批判の矢面に立たされている。これもまた過去に買収した企業の資産を適切に消却していないのではないかという決算処理をめぐる問題と推定されるが、私には判断できない。
(10)裁判の進行につれて、マスコミのホリエモンバッシングは一転して同情に変わるだろう。もし堀江社長が無罪となれば、ライブドアを上場廃止に追い込んだ責任は誰が取るのだろう。私は一人の投資家としてその点に最大の関心がある。