2006/8/28

  2006年8月28日(月)
  富山化学と住友金属鉱山。

(一)住友金属鉱山。

        

(1)金相場とドル相場は逆相関関係にある。ドル高で下がり、ドル安で上がる。ドル高に逆行して上がる時に、金は本格的に上昇する。
(2)月足で、ニッケル、銅、金のチャートを見れば中期的な暴騰局面にある。
(3)住友金属鉱山は、ニッケル、銅、金等の保有鉱山の含み益を04年3月末2兆円、05年3月末3兆円、06年3月末4兆円と発表しているが、チャートから推定すれば含み益の増加ピッチはもっと急だろう。
(4)3市場、日証金とも信用買い残が急減している。買いの主力は内外の機関投資家と推定される。
(5)日経は銅相場上昇による利益配分で、山元の取り分が増えて精錬メーカーが不利になると解説しているが、 住友金属鉱山は他の非鉄と異なり、銅、ニッケル、金の山元である。銅でも60%は自山鉱の鉱石を用いて精錬している。
(6)業績、需給両面から、上昇ピッチは加速する可能性の方が高いと思う。

(二)富山化学 I 。

(1)米国のシェリング・プラウ社がガレノキサシンのFDA申請を取り下げた。年内と予想された米国の発売時期が遅延する。
(2)シェ社はバイエル社が米国市場から撤退する際に米国の販売網を買収した。そのバイエル社は合成抗菌剤アベロックスを販売しており、シェ社はアベロックスの特許期限が切れる2011年までは米国での販売責任がある。
(3)そのため米国市場でサブライセンスの供与先を探していたが、現状では未定である。その間にガレノキサシンの発売時期が迫ったため、一旦FDA申請を取り下げた。サブライセンス供与先が決まれば再申請する。
(4)ヨーロッパではシェ社、バイエル社とも独自の販売網を持っているから、ヨーロッパではシェ社はガレノキサシンを、バイエルはアベロックスをそれぞれ販売する。それゆえシェ社はヨーロッパでの製造認可の申請を維持している。
(5)日本では富山化学が厚生省に申請中であり、日欧の発売は2008年の予定。
(6)シェ社からガレノキサシンの発売時に受け取るライセンス料が遅れるが、今期の業績予想を据え置いた。他の新薬のライセンス導出によって補える目途が立っているからである。
(7)2011年にはバイエルのアベロックス、第一製薬のレバキンが共に特許期限切れとなるから、富山化学のガレノキサシンが抗生物質で独走態勢に入る可能性が高い。

(三)富山化学 II 。

(1)富山化学は鳥インフルエンザに有効なT-705の臨床試験を年内にも日米同時に開始する予定だと発表した。
(2)そのためのIND(臨床試験申請)を10月に行う予定。フェーズ1は日本人を含む各人種で行い、薬剤が血中に現れるか、毒性がないか、をテストする。フェーズ1は2ヶ月程度で終わると予想されている。
(3)フェーズ2、フェーズ3を行うかどうかは、IND申請時に明らかになる模様。
(4)フェーズ1終了で、政府備蓄向けに出荷する可能性もある。富山化学は2008年度(2007年4月〜2008年3月)に発売したいとしている。
(5)発売を急ぐのは大流行の可能性が高いからで、WHO(世界保険機構)はその場合世界で3億人の政府備蓄が必要と見ている。富山化学は自社だけではまかなえないから、他社にライセンス導出を予定している。
(6)ユタ州立大学は4月に米国の学会でT-705の動物実験データを発表し、ロッシュのタミフルを圧倒する有効性が大きな反響を呼んだ。
(7)H5N1型鳥インフルエンザはきわめて毒性の強いウィルスで、日本でも養鶏所が汚染された際には数日で壊滅状態になった。
(8)人の場合も、3日目にはショック死するケースが多い。死亡後の検証で原因が鳥インフルエンザであったと確認しているから、臨床のための検体の入手が困難で、ロッシュ社も人体による臨床を行っていない。フェーズ2,フェーズ3を省略する背景も検体の入手困難にあると推定される。

(四)富山化学 III 。

(1)アルツハイマー型認知症治療剤T-817MAは富山化学の計画に従えば、ライセンス導出契約の発表が近いと推定される。予防薬ではなく、世界初の治療薬だから、大きな市場規模が見込める。
(2)大型で複数の新薬の開発は着実に進行している。富山化学は新薬の開発費用をライセンスの導出でまかなっており、ライセンス料収入が開発の進捗状況の裏付けとなっている。
(3)中でも、ガレノキサシンは米国シェリング・プラウ、日本アステラス製薬の両社から販売権の導出によって540億円を取得する超大型抗生物質である。シェ社から支払いの一部が遅延するが、原因はシェ社の社内事情であって、薬効に問題が起こったわけではない。
(4)私はこれまでの富山化学の情報開示に嘘があったとは思わない。