2006/7/31

  2006年7月31日(月)

(一)世界同時株高へ。

(1)アメリカの景気減速が鮮明となった。バーナンキFRB議長の金利政策に対する批判が噴出するだろう。
(2)アメリカの物価を上昇させた犯人は国際商品相場の高騰である。海外要因で起こったインフレをアメリカの金融政策で押さえ込むことは不可能で、強行すれば肝心の景気を殺してしまう。これはクラブ9の一貫した予測であった。
(3)ウォール街では金融引き締めどころか、金融緩和の議論が始まるだろう。
(4)金融政策の転換を受けて、短期的には世界同時株高に転じるだろう。
(5)中長期的にはアメリカとBRICsの景気動向に焦点が集まる。
(6)ブッシュ政権は11月の中間選挙に向けて、景気と株価をてこ入れする政策を打ち出すだろう。
(7)アメリカの大統領の政治的使命は「国民の生命と財産を守る」という一点にある。国民の財産とは1に株式であり、2に不動産である。だからアメリカの政治はわかりやすい。
(8)日本は資本主義国であるにもかかわらず、日本の首相は「国民の生命と財産を守る」と言わない。それどころか、巨大企業30社を名指しでつぶせと主張した木村剛を竹中大臣が側近に登用して民間企業を威嚇した。これはロシアのプーチン大統領が民間の石油会社を威嚇して国有化したのと同じ思想であり、手法である。
(9)日本の政治の目標がわかりにくいから、日経ダウはニューヨークダウに追随するほかない。

(二)住友金属鉱山。

(1)住友金属鉱山(以下別子という)は28日に4〜6月期の純利益を前年同期比2.5倍の252億円と発表した。
(2)その前日には海外鉱山大手ピリトン社が日本の精錬各社に銅の精錬マージンを60%削減すると通告し、非鉄株が一斉に急落した。
(3)しかし別子を他の非鉄と同一視して売ったのは間違いである。別子は精錬会社から鉱山会社に変身しているからである。すなわち金鉱石とニッケル鉱石の全量と、銅鉱石の60%を自社の鉱山から掘り出して精錬している。
(4)鉱山会社の国際的な大合併が進み、資源を保有する国家や巨大企業の価格支配力が強化された結果、石油と同じ価格決定の手法が非鉄や貴金属や鉄鉱石や石炭にも及んで来たのである。
(5)別子の増益には、精錬加工の利益のほかに自山鉱から掘り出した鉱石の利益が加わっている。過去3年間に別子が保有する鉱山の含み益は2兆円、3兆円、4兆円と1兆円幅で激増しており、その含み益の一部が期間利益ににじみ出ているのである。
(6)それゆえ別子を株価収益率で評価するのは間違いで、4兆円の含み益に対する時価総額1兆円はあまりにも過小である。
(7)おまけに別子は予想利益の出し方が常に保守的だから、含み益の出し方はもっと保守的だろう。かつて謙遜は名門企業の美徳であったが、今日ではハゲタカの餌食になる。買収されてしまえば元も子もない。
(8)別子は日本最大の資源株である。経営者は時代の変化に対応して万全の備えを講じる責任がある。

(三)NIF-SMBC。

(1)26日に、4〜6月期の減益決算を発表して株価が急落した。
(2)主幹事で上場した会社数は大幅に増えたが、新規公開株の株価不振で減益となった。
(3)三井住友銀行系のベンチャーキャピタルと合併したことによって主幹事として公開する企業数は確実に増加するから、新規公開株に対する人気が回復すれば業績も回復する。
(4)当社は過去4期間に114億円の評価損を積極的に計上しており、新興市場を不安に陥れた会計疑惑とは無縁である。
(5)小型株投信、成長株投信にとって、当社は不可欠の銘柄である。
(6)大和証券と三井住友銀行の2社だけで86%を保有しており、浮動株が極端に少ないから、株価回復のスピードもまた速いだろう。

(四)富山化学。

(1)製薬業界では第1に、新薬の開発費用が増加の一途をたどっている。第2に、販売力を強化してパテントの有効期間が切れる前に開発費用を回収する必要がある。その2点に対処するために欧米では製薬会社の大合併、寡占化が進んだ。日本でも製薬会社の大合併がこれから本格化するだろう。
(2)第3に、世界的に大型薬品の特許期限が切れたために、製薬会社は有望な新薬を求めて外部から販売権を積極的に取得する傾向が鮮明となった。
(3)このような環境下で、富山化学は大正製薬に20%の第三者割り当て増資を行い、営業部門を大正製薬に譲渡して、開発に特化した。しかし富山化学のような弱小メーカーが複数の大型新薬の開発費用を自力でまかなっている状況自体が驚異である。
(4)開発費用をまかなうために富山化学は臨床試験が終わる前に新薬の販売権を大手の製薬会社に導出している。富山化学の導出は買い手から見れば導入である。導出の状況は次の如くである。
(5)第1に、抗菌剤ガレノキサシンの導出では、シェリングプラウとアステラス製薬から540億円のロイヤリティーを得た。実際の入金はマイルストン条項に従って開発段階に応じて分割、取得する。これほど高額のライセンス料を取得したのはガレノキサシンがきわめて有望だからである。
(6)そのシェリングプラウはガレノキサシンの年内発売を控えて販売権を他社にサブライセンスする。有力候補の一社と見られるバイエルはドル箱のシプロキサシンが特許期限切れで年商が20億ドルから数億ドルに激減した。現在は有力な抗菌剤がみな特許期限切れとなっているから、ガレノキサシンは短期間に超大型薬品に育つ可能性が高い。
(7)第2に、アルツハイマー型認知症治療薬T-817MAはフェーズ1が終わった段階でライセンスを導出する予定だから、情報開示が近いだろう。その導出金額に注目したい。
(8)第3に、抗リュウーマチ剤T-5224は政府から資金支援を受けて5月にフェーズ1に入ったが、早くも内外の製薬大手からライセンス導入の引き合いが入っているという。
(9)第4に、鳥インフルエンザ治療剤T-705はユタ州立大学がアメリカの学会で驚異的な動物実験のデータを発表し、富山化学の株価を暴騰させた。臨床入りはアメリカ主導となっているようであるが、ユタ州立大学の次回の情報開示次第で理想買いから現実買いに発展する可能性がある。開発の緊急性から見て、その時期は遠くないだろう。
(10)上記4つの新薬はいずれも年商2,000億円以上の超大型と目されているから、提携先は超一流のビッグネームとなるだろう。株価が大きく反応する素質は十二分にある。

(五)ダイエー。

(1)ダイエーに対する再生機構の投資額は500億円。その全株式を丸紅に600億円強で譲渡すると決定した。
(2)丸紅は合計44.6%の筆頭株主となる。
(3)丸紅は当然ダイエーを連結決算対称会社とする。
(4)ダイエーは売上高1.3兆円の巨大企業である。その業績は直接間接丸紅の業績に影響し、その株価は丸紅の含み益に影響する。丸紅はダイエーの再建に社運を賭けるだろう。
(5)機関投資家は現在ダイエー株を全く保有していないが、復配すれば当然ポートフォリオに入る。そのとき需給関係が好転し、株価にインパクトを与える。
(6)これまでは政治に翻弄されて悪材料ばかりが出たが、これからは好材料ばかりとなるだろう。
(7)悪目を出し切ったダイエーは同業のスーパーや大手小売業よりも業績の変化率が高くなり、機関投資家の入れ替えの対称となるだろう。
(8)株価は今が買い場だと思う。