2006/7/10

  2006年7月10日(月)
  21世紀は商品主導の時代。

(一)株式主導から商品主導へ。

<チャート1>

(1)チャート1は1991年から2006年までの月足である。ニューヨークダウ、CRB商品指数、ニューヨーク石油、ニューヨーク金を同じ時間軸で比較した。
(2)中央の縦軸は2001年。左側のブルーは20世紀、右側のピンクは21世紀を示している。
(3)20世紀最後の10年間にニューヨークダウは3000ドルから11700ドルへ、4倍に大暴騰したが、商品相場は低迷していた。
(4)しかし21世紀に入ると主役が大逆転した。ニューヨークダウは低迷しているが、商品相場はCRB商品指数1.5倍、ニューヨーク石油3倍、ニューヨーク金2.5倍と、 そろって大暴騰を演じた。
(5)株式主導から商品主導へという主役の交代は2002年に始まったばかりである。
(6)21世紀は商品相場が主役を演じる時代となるだろう。

(二)商品相場高騰の背景。

(1)第1に、地球人口60億人のうち25億人を占める中国とインドが2ケタの高度成長を続けたために、石油が暴騰した。石油の暴騰は他の国際商品に波及した。
(2)第2に、国際商品の需給関係の逼迫を受けて、資源大国であるロシアとブラジルが高度成長を開始した。
(3)第3に、中国、インドにロシア、ブラジルを加えた4ヶ国の人口は地球人口60億人の半分、30億人を占める。石油の暴騰は他の国際商品に飛び火し、全面高に発展した。
(4)第4に、前記4ヶ国の台頭に刺激されて、アフリカ、中南米、アジアの旧植民地各国が埋蔵資源の国有化による経済的自立を目指し始めた。
(5)第5に、これに対抗して鉄鋼、非鉄、貴金属等の国際資本が大合併によって寡占体制を築き、価格支配力の強化に乗り出した。
(6)第6に、20世紀に金融市場(株式、債券等)で巨大化した資金が、21世紀に入ると商品市場に流出し始めた。金融市場の資金量は商品市場に比べるとけた違いに大きいから、商品相場に強力なインパクト与えた。
(7)第7に、商品市場で増幅した資金は株式市場に環流し、資金の流れは株式、債券、石油、非鉄、貴金属、穀物等の市場間の垣根を消滅させつつある。
(8)例えば、中東のオイルマネーは大挙して先進国の株式市場や不動産市場に流入した。日本株に対する外国人買いは石油相場が上昇する限り、なくならないだろう。
(9)かくして21世紀初頭に商品市場で発生した大ブレイクは、反落するよりも騰勢を加速する可能性の方が高い。

(三)住友金属鉱山における商品相場高騰の影響。

<チャート2>

(1)住友金属鉱山の主力商品は銅、ニッケル、金である。チャート2は主力3商品の週足である。
(2)3商品の高騰を受けて住友金属鉱山が保有する鉱山の含み益が激増している。
(3)表1は過去3期間の利益、株価、時価総額、含み益の推移である。

<表1>
 
2004/3
2005/3
2006/3
期間利益
198
370
628
株 価
754
807
1642
時価総額
4300
4600
9300
含み益
20000
30000
40000
単位:株価は円、その他は億円

(4)住友金属鉱山は自山鉱を持ち、鉱石の採掘から精錬まで一貫生産している。総合商社も鉄鉱石、石炭、非鉄、石油等の天然資源に投資しているが、多角経営の一部門に過ぎない。
(5)住友金属鉱山は質量ともに、日本唯一の資源株である。
(6)過去3年間に住友金属鉱山の利益は200億円から630億円へ、3倍以上に増加したが、保有鉱山の含み益は2兆円から4兆円へ、2桁違いで激増した。
(7)この間に時価総額は4,300億円から9,300億円へ倍増したが、含み益と時価総額の差額は3兆円に拡大した。
(8)6月にアメリカのヘルプスドッジはカナダの非鉄2社を買収したが、買収金額は4.6兆円であった。時価総額1兆円の住友金属鉱山を飲み込むのは簡単である。
(9)来年には日本でも株式交換による買収が可能となる。

(四)含み益と含み損。

(1)住友金属鉱山の含み益経営が間違っているかといえば、そうではない。
(2)含み益経営は日本のオールドエコノミーの伝統的経営手法である。中でも住友財閥の総本家である住友金属鉱山は日本の含み益経営の総本家である。
(3)含み益経営に対して、90年代以降に台頭したニューエコノミーはアメリカ式の無借金経営、自己資本経営、高株価経営を掲げて含み益を否定し、期間利益のみを重視した。
(4)ニューエコノミーは借金がないが、含み益もない。そればかりか合併や買収の副作用として含み損が隠されているのではないかという問題が浮上した。
(5)現に、ソフトバンクや楽天やEトレード等のように買収や合併や子会社上場や投資組合をテコとして急成長したニューエコノミーの株価が変調を来している。
(6)商品相場の高騰は企業評価の基準に根本的な変化をもたらす可能性がある。
(7)例えば、村上ファンドは含み益の多いオールドエコノミーばかりを標的とした。誘拐犯が必ず金持ちの子供を狙うように村上ファンドは金持ち企業ばかりを狙い、ニューエコノミーには見向きもしなかった。
(8)村上ファンドはこれからの銘柄選択の一つの重要な基準を示している。
(9)商品相場が高騰する時代を迎えて、含み益はますます重要なポイントとなる。前回、今回と共に、次回のコラムをご注目願いたい。