2006/5/22

  2006年5月22日(月)

(一)買いの好機。

(1)アメリカでは打ち止め期待が強まっていた金利に再度上昇懸念が強まって、ニューヨークダウが急落した。
(2)しかし金利の小幅昇が続いているのは、第1に景気がよいからである。第2にアメリカの金利水準はようやく中立の水準に近づいたに過ぎず、過熱を懸念する段階にはほど遠い。
(3)ニューヨークダウは節目を形成した後、再度史上最高値の更新に挑戦するだろう。
(4)日本に至っては、公定歩合ゼロという異常な金融政策をようやく正常化しようとしている段階で、景気過熱にはほど遠い。
(5)2月以降、日本の新興市場が不可解な暴落を演じたが、私は金融庁の金融行政の転換に伴ってアングラマネーが閉め出されたのが原因だと推定してきた。そこへ欧米の株価の急落が追い打ちをかけた。
(6)とりあえずは下げすぎの修正で、急反騰もあるだろう。

(二)村上ファンド対阪神・阪急。

(1)村上ファンドは阪神電鉄に対して買い戻し価格1,200円を提示している。
(2)しかし村上ファンドは交渉を有利に運ぶために1,000円台で株価をてこ入れしていたから、支配株数は52%に増加した。
(3)52%といえば事実上買収が完了し、6月末の株主総会ですべての要求が通る状態であるにもかかわらず、村上ファンドは依然として買い戻しを要求している。その奇怪な行動に進退が窮まって苦悩する姿が見える。
(4)すなわち、村上ファンドの主要な金主であるオリックスが離反した。村上ファンド自身も本社をシンガポールに移した。両社に対して異常な政治的圧力が加わった事を示している。
(5)阪神は1日でも1秒でも早く買い戻したいと焦っているが、阪急は6月末の株主総会の前日までに決着すればよいと、余裕しゃくしゃくである。
(6)阪急はすでに村上ファンドの窮状を把握しているからであろう。
(7)決着は先週に述べたとおり800円台となる可能性が強い。
(8)阪神問題は金融行政の変化を反映しており、株式市場の行方に関係している。

(三)金融行政の変化。

(1)ライブドアが6月14日の臨時株主総会で、投資組合の解散を決議する。投資組合の会計処理こそ検察がライブドア摘発に乗り出したポイントであった。
(2)検察は堀江社長を長期にわたり拘束したにもかかわらず、有罪に追い込む証言を得ることができなかった。投資組合や投資ファンドを規制する法律が整備されていなかったためである。
(3)ちなみにライブドアの直近の株主構成は、個人株主が18%に激減し、外国の投資ファンドが48%に急増した。個人株主の投げ売りを複数の外国ファンドが買い向かった。ライブドアの経営権と株価をめぐる係争はここからが本番である。
(4)海外の投資ファンドは運用システムを明快に開示して資金を集めているから海外に逃亡するような失態を演じないが、村上ファンドはグリーンメーラーの節度を超えてハゲタカファンドの領域に戦線を拡大した所をとがめられたのだろう。
(5)金融庁は今国会で投資組合や投資ファンドを含む金融市場のグレーゾーンを規制する法案を準備している。公認会計士に対する厳しい罰則の適用もその一貫である。
(6)アングラマネーの退潮は金融行政の変化を受けて進行した。これが新興市場の大暴落を誘発した原因だという私の推定は客観的な事実となりつつある。
(7)株式市場では好材料も悪材料も「知ったらしまい」である。阪神電鉄株の決着は新興市場の暴落に転機をもたらすだろう。

(四)クラブ9の3銘柄。

(1)住友金属鉱山、NIF SMBC、富山化学の3銘柄を本年の指標株とするクラブ9の基本姿勢は現在も変わらない。これまでコラムの中で取り上げたその他の銘柄についても、強気観は変わらない。
(2)特に富山化学を本年最大の材料株、出世株としたが、その条件は時間の経過と共に信頼度を増している。
(3)富山化学の新薬の開発状況については三菱UFJ証券のシニア・アナリスト坂倉氏が5年間にわたってフォローしており、2006年5月16日付けのレポートでは、前期決算の分析と2009年3月期までの収益見通しについて予想とその根拠を示しておられる。ぜひとも一読を勧めたい。
(4)富山化学が開示した驚異的な新薬開発の情報は風説でもインサイダー情報でもない。富山化学がデータを学会で公表し、ホームページで開示しているから、誰でもいつでも閲覧できる。
(5)クラブ9もまたすべての情報を富山化学に確認した上でコメントしている。質問や批判のメールがたくさん寄せられるからあえて申し上げれば、問題は富山化学による情報開示を信用するかどうかにある。
(6)私自身はこれほどエキサイティングな新薬を集中的に開発しつつある製薬会社を見たことも聞いたこともない。すべての案件で成功するとは言えないが、千載一遇(1000年に一度しか巡り会えない)の好機に賭けてみる価値はあると思う。
(7)特に6〜10月にはアルツハイマー治療薬T-817MAのフェーズ1終了に伴う情報開示,新型抗生物質ガレノキサシンの発売開始、鳥インフルエンザ治療薬T-705の臨床試験入り、新しいリュウマチ薬の臨床試験入り、等、大型の情報開示が続く。いずれも株価の大きな変動要因となるだろう。
(8)住友金属鉱山は6月末に出る有価証券報告書における保有鉱山の含み益の開示が株価を刺激する材料となるだろう。
(9)ついでながら、直近の金相場の反落は雄大な上昇過程における調整局面だと思う。