2006/5/8

  2006年5月8日(月)
  ニューヨークダウ史上最高値更新の衝撃波。

ニューヨークダウの史上最高値更新は金融史上の大事件である。日本でも機関投資家を代表する年金や生保の弱気の資金運用が受益者から批判を浴びるだろう。久しきにわたり弱気論で投資家をミスリードした日経とエコノミストの釈明を聞きたい。

(一)史上最高値目前のニューヨークダウ。

(1)前回に、私はニューヨークダウの史上最高値の更新が近いと述べたが、事実は予想を上回るスピードで進行した。先週末にニューヨークダウは11,577.74ドルに急進し、史上最高値11,722.98ドルの更新まで145ドルへ肉薄した。新値更新のカウントダウンが始まった。
(2)ニューヨークダウはアメリカの巨大企業30社の株価によって構成されている。100年を超える長い歴史によって名実ともに世界の株式相場を代表する指標となって来たから、新高値更新は世界中の株価に大きなインパクトを与えずにはおかない。
(3)投資家は相場観を間違えれば財産を失い、アナリストやファンドマネジャーが職を失うが、日経とエコノミストは弱気論で投資家をミスリードしても平気で頬かむりする。しかしニューヨークダウの新高値更新は彼らの弱気論の構造的欠陥を証明する事件となる。
(4)私は株式、債券、不動産、商品を含む世界の金融市場のマネーの流れを巨視的に見渡して相場観や銘柄観を組み立てて来たつもりである。これに対して、日本のアナリストやファンドマネジャーは電気、薬品、新興市場というふうに担当分野の専門化が進み、世界のマネーの流れを一望する大局観が欠落し勝ちである。
(5)リチャード・クー氏のような優れたエコノミストでも、5〜6年も前からアメリカの不動産相場は暴落の危機に瀕していると述べている。
(6)しかし90年以降、不動産は不動産投信の急成長によって「動かない資産」から流動性の高い金融商品に一変した。今や商品市場にも商品投信が登場して年金や小口投資家の資金を金融市場に吸い寄せる新しいパイプ役となった。今日では不動産も商品も金融商品として銀行の窓口で売買されている。
(7)金融市場、不動産市場、商品市場を隔てる壁が消滅した時代だからこそ、石油の暴騰によって生じたオイルマネーが株式市場に大挙して流入し、株価の上昇によって生み出されたマネーが商品市場や不動産市場に飛び火し、それらの市場で膨張したマネーが石油市場に逆流するという資産インフレの連鎖が進行しているのである。ニューヨークダウの最高値更新が世界の株式市場に連鎖するのは当然である。
(8)かくして金融市場を一望すれば、株式ではニューヨークダウが、商品では金が出遅れていると私には見えた。日経ダウはニューヨークダウに次いで出遅れている。

(二)マネーには国境がない。

(1)世界人口の半分を占めるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が二ケタ近い経済成長力を維持しており、中南米、アフリカ、アジアの低開発国がBRICSに追随する傾向が次第に鮮明となった。
(2)地球規模で見れば、短期的な波乱を乗り越えて経済規模が拡大する傾向にある。人口の多い低開発国の所得水準が上がれば、すべてのモノの需給関係は逼迫する。
(3)水が土地の低い方に流れるようにマネーは利回りの高い方に流れるから、金融市場のマネーは株式や債券から不動産へ、次いで商品へ流れ込んだ。これまで不動産市場や商品市場から見ればアウトサイダーであった株式市場や債券市場の資金がインサイダーの資金に変身したのである。
(4)投機資金は増勢一途だから、国連が「石油の需給関係は均衡している」という調査結果を発表しても石油相場は簡単には下がらない。世界中の金市場で流通している金は60兆円程度に過ぎないから、株式市場や債券市場のマネーが乱入すれば金相場は木の葉のように舞い上がる。
(5)マネーには国境がない。流通組織も要らない。パソコンを用いれば巨額のマネーが瞬時に国境を超える。金融市場にはもはや国家の金融政策が及ばない。今や石油市場や金市場には世界中のホットマネーが流入しているから、いくら精緻に需給関係を分析しても説明がつかない時代となった。
(6)統計データのみに頼って需給関係を分析するエコノミストには世界中で進行する資産大デフレの現実が理解できないから、高所恐怖症に陥る。
(7)高所恐怖症を代表する竹中大臣は金融担当大臣に就任するや不動産と株式をリスク試算と断定し、銀行や事業会社にたたき売りを強制した。私は即座に世界的な資産インフレ時代に逆行する愚行で、ユダヤ資本を利するばかりか、日本の国益を損なうと批判した。そして今こそ不動産と株式に投資する好機だと強気論を主張して現在に至っている。
(8)ユダヤ資本が資産インフレを謳歌して濡れ手に泡の大もうけにわきかえっているときに、竹中大臣のデフレ政策を支持したエコノミスト、日経やその影響を受けた年金、生保は現在も弱気論を捨てず、株を売り続けているのである。彼らには世界の金融市場で進行している構造革命が見えない。
(9)しかし年金や生保といえども、ニューヨークダウが大幅に水準を切り上げれば受益者からの批判が集中し、強気に転換せざるを得ないときが来る。ニューヨークダウの史上最高値更新は相場に関与する人たちに一つの決着を迫る事件となるだろう。