(1)前回に、私はニューヨークダウの史上最高値の更新が近いと述べたが、事実は予想を上回るスピードで進行した。先週末にニューヨークダウは11,577.74ドルに急進し、史上最高値11,722.98ドルの更新まで145ドルへ肉薄した。新値更新のカウントダウンが始まった。
(2)ニューヨークダウはアメリカの巨大企業30社の株価によって構成されている。100年を超える長い歴史によって名実ともに世界の株式相場を代表する指標となって来たから、新高値更新は世界中の株価に大きなインパクトを与えずにはおかない。
(3)投資家は相場観を間違えれば財産を失い、アナリストやファンドマネジャーが職を失うが、日経とエコノミストは弱気論で投資家をミスリードしても平気で頬かむりする。しかしニューヨークダウの新高値更新は彼らの弱気論の構造的欠陥を証明する事件となる。
(4)私は株式、債券、不動産、商品を含む世界の金融市場のマネーの流れを巨視的に見渡して相場観や銘柄観を組み立てて来たつもりである。これに対して、日本のアナリストやファンドマネジャーは電気、薬品、新興市場というふうに担当分野の専門化が進み、世界のマネーの流れを一望する大局観が欠落し勝ちである。
(5)リチャード・クー氏のような優れたエコノミストでも、5〜6年も前からアメリカの不動産相場は暴落の危機に瀕していると述べている。
(6)しかし90年以降、不動産は不動産投信の急成長によって「動かない資産」から流動性の高い金融商品に一変した。今や商品市場にも商品投信が登場して年金や小口投資家の資金を金融市場に吸い寄せる新しいパイプ役となった。今日では不動産も商品も金融商品として銀行の窓口で売買されている。
(7)金融市場、不動産市場、商品市場を隔てる壁が消滅した時代だからこそ、石油の暴騰によって生じたオイルマネーが株式市場に大挙して流入し、株価の上昇によって生み出されたマネーが商品市場や不動産市場に飛び火し、それらの市場で膨張したマネーが石油市場に逆流するという資産インフレの連鎖が進行しているのである。ニューヨークダウの最高値更新が世界の株式市場に連鎖するのは当然である。
(8)かくして金融市場を一望すれば、株式ではニューヨークダウが、商品では金が出遅れていると私には見えた。日経ダウはニューヨークダウに次いで出遅れている。