2006/4/24

  2006年4月24日(月)

(一)新興市場急落の背景。

(1)日経ダウは高値圏を維持したが、上昇銘柄が大型優良株に偏って値上がり銘柄数よりも値下がり銘柄数の方が断然多い。
(2)特に、新興市場は先週またしても急落を演じた。ネット関連株に業績の下方修正が相次ぎ、日経ダウの堅調に反して人気離散が深刻化した。新興市場では資金量が減り、個人投資家、中でもネットによる短期取引中心の投資家が傷口を広げた。
(3)新興市場の資金量の急減については次のような見落とせない噂がある。ライブドア事件をきっかけに投資組合による株価操作が問題となった。投資組合にはブラックマネーやアングラマネーが流入していたから金融庁が大口出資者の名簿の提出を求めたところ新興市場の株価が暴落したから名簿提出の要求を取り下げた。しかし2〜3月に名簿提出を嫌って逃げ出した資金は戻って来ていない。
(4)投資組合の資金逃避に連鎖して村上ファンドからも資金を引き上げる動きがあり、村上氏は阪神電鉄等から撤退せざるを得ない状況に追いつめられているという。
(5)これらは噂であって確認はできないが、株価の動向を見れば、さもありなんと思わざるを得ない。
(6)残念ながら、急落した新興市場が即座に立ち直るとは言いにくい。
(7)しかし現実には好業績株、材料株も一緒くたに売られている。
(8)例えばNIF-SMBCは大和証券と三井住友銀行だけで83%を保有しており、浮動株が極端に少ないから、反騰に転じたときのスピードは速いだろう。
(9)新興市場は新規公開株の何でも買いから業績重視へ、変化する局面を迎えたのではないだろうか。

(二)優良株相場は続くか。

(1)投機資金の低迷とは対照的に、大型優良株に人気が集中している。
(2)郵便局や銀行の窓口で株式投信の売れ行きが急増している。3月までは利回り株重視の投信に人気が集中していたが、配当の権利落ち後は、人気が出遅れの大型優良株に移ったと思われる。
(3)しかしコード番号01の優良株の集中投資であればファンドマネジャーもアナリストも要らない。投信といえども運用成果を競う必要があるから、連休明けには個別銘柄を物色する動きが表面化するだろう。
(4)クラブ9には個別銘柄の売買に関する質問メールが急増している。多くの投資家が困難な状況に直面しておられる状況がわかるが、私は短期的な波乱に対処する能力が乏しいので中長期の予測に注力しており、相場観や銘柄観が短期間にぐるぐると変わることは滅多にない。それゆえクラブ9の冒頭に掲げているように、個別銘柄の売買のタイミングはあくまでもご自身でご判断願いたい。
(5)昨年末からクラブ9が一貫して掲げている今年の特選3銘柄「住友金属鉱山、富山化学、NIF-SMBC」を中心に投資された方は、十分なパフォーマンスを上げることができたと思う。
(6)その場合でも投資家の資金事情は100人100色で、現物買いもあれば信用買いもある。買った株価も皆違う。それゆえ利食いや投げのタイミングを助言することは私には不可能である。株式投資は常にリスクと背中合わせである。いつ買っていつ売るかは自分で判断されるほかないと思う。

(三)商品相場の高騰と株価へのインパクト。

(1)例によってニューヨーク金、シカゴ商品、住友金属鉱山のチャートを並べて掲載した。騰勢の強さをごらん願いたい。
(2)商品市場では商品投信を通した資金流入が継続しており、中期的に見れば商品相場は沈静するよりも加熱する可能性の方が高いと思う。
(3)チャートにはないが、今回の新たな上昇波動は石油の史上最高値更新がインパクトとなった。
(4)石油の高騰が株価を圧迫するという論評が多いが、私は逆だと思う。第1に、石油相場の上昇は 人口超大国の旺盛な成長力が続くことを先見している。第2に、石油が高騰すれば膨張したオイルマネーが株式市場 に流入するというマネーの連鎖は過去の実績で証明済みである。
(5)史上最高値の更新は相場が新たな上昇波動に入ったことを示している。
(6)先週ニューヨークダウが急進し、史上最高値の更新まであと300ドルに迫った。最高値の更新、弱 気筋の大敗北、大踏み上げ、となる可能性がある。
(7)そうなれば、日本でも日経ダウが急騰し、弱気筋の大敗北が起こる。
(8)金相場の強さの割に住友金属鉱山の騰勢が鈍いが、私は3月決算期末の保有鉱山の含み益の開示を重視してい る。銅、ニッケル、金相場の高騰は期間利益を100億円単位で押し上げるが、保有鉱山の評価益は1兆円単位で増加するからである。
(9)先週、商品相場の高騰が肥料・農薬と水産に波及する可能性があると述べた。関連銘柄として、多木化学、 片倉チッカリン、極洋、日ロ、日水、マルハを上げておきたい。利益が急進期を迎えたわけではないが、相場が若く、株価も割安である。

(四)富山化学。

(1)アメリカのブッシュ大統領は今週にも各官庁を横断した大規模な鳥インフ ルエンザ対策を決定する予定である。9,000万人が鳥インフルエンザにかかり、190万人が死亡するというシミュレーションが前提となっている。
(2)ロッシュ社のタミフルの有効性に疑問があり、富山化学が開発した鳥インフルエンザ治療薬「T-705」に熱い期待が寄せられている。ユタ州立大学の研究チームによる研究発表の内容を次に再録しておきたい。
(3)第1に、T-705はインフルエンザA型(H5N1)ウイルスに対して、強く選択的な活性を示した。
(4)第2に、インフルエンザウイルスを感染させたマウスに、T-705の300、100、及び33mg/kg/dayを感染1時間後から1日4回5日間投与した場合、死亡がほぼ100%防止され、酸素飽和度の回復、肺病変の改善、肺内ウイルス量の減少が認められた。
(5)第3に、投与開始を感染後60時間まで遅らせた場合でも、有意な治療効果が認められた。
(6)第4に、感染21日目に生存したマウスに対し100倍濃度のウイルスを再度感染させたところ、T-705を投与したマウスは全例生存した。
(7)その実験データに注目したアメリカのFDAと日本の厚生労働省が富山化学に早期開発を要望したという噂がある。噂は確認できないが、ブッシュ大統領の鳥インフルエンザ対策が再評価のきっかけとなるかもしれない。
(8)富山化学は抗生物質ガレノキサシンの今秋発売に次いで、鳥インフルエンザ治療薬T-705を発見し、今年の後半にはアルツハイマー治療薬T-817MAが臨床試験のフェーズ II に入る。
(9)ピークの売上高が2,500億円に達すると予想されるガレノキサシンだけでも富山化学の収益構造は一変する。まして年商2,000億円級の大型新薬3件の上市に成功すれば、製薬史上空前の大事件となる。