2006/4/17

  2006年4月17日(月)

(一)高騰する国際商品。

(1)石油が史上最高値を更新した。銅、プラチナ、砂糖、トウモロコシ等国際商品が軒並みに騰勢を強めている。金は600ドル台に乗せたが、史上最高値880ドルにはまだ遠い。史上最高値ラッシュの他の商品相場に比べれば、金はむしろ出遅れと見るべきだろう。
(2)クラブ9は早くから国際商品の暴騰を予想してきたが、改めて私見をまとめておきたい。
(3)第1に、中国、インド、ロシア、ブラジル等、人口超大国が高度成長時代に突入して商品の需給関係が一変した。
(4)第2に、中でも石油が大暴騰して中東産油国に巨額のオイルマネーが流入し、そのオイルマネーが世界の株式市場に流入した。
(5)第3に、株式市場で増幅した資金は商品市場に流入した。
(6)欧米では商品投信が年金や個人の資金を集める新しいパイプとなり、商品相場の上昇を加速させている。
(7)第4に、中南米や南アやインドネシアで資源ナショナリズムが台頭し、石油・天然ガスや鉱物資源を国有化する動きが表面化した。これも国際商品相場を下支えする要因となる。
(8)第5に、砂糖やトウモロコシをエタノールに変えてガソリンの代替燃料に用いるシステムが急速に普及し、砂糖とトウモロコシが急騰した。中国はトウモロコシの輸出を停止した。穀物の需給逼迫もまた商品相場の高騰を支えている。

(二)時代錯誤の政治とエコノミスト。

(1)世界経済がダイナミックに変化し、拡大しているときに、日本のエコノミストは消費者物価が0.2%増えたかどうかというゴミみたいな数値をめぐって景気を論じている。
(2)政府は日銀に圧力をかけて公定歩合ゼロ%の金融政策を維持させたが、これをあざ笑うかのように市中金利が急騰している。すなわち10年国債の利回りは0.5%から2%に急騰し、価格は10%も暴落した。
(3)エコノミストの景気観測や政府の金融政策が株価の行方を決めると信じている投資家には株価高騰のメカニズムが見えない。
(4)日本の公的年金はエコノミストの助言を受けて株式を売り国債を買ったが、株式の底値を売り、国債の天井を買う結果となった。
(5)すなわち株式はリスクが高いとして160兆円の資産の11%に圧縮して、国債に乗り換えた。彼らは国債相場の恐ろしさを知らず、政府保証だからリスクが低いと思いこんでいる。
(6)しかし欧米の年金は株式を中心に据えて、不動産投信や商品投信にも積極的に投資している。
(7)一方、リスクがないと見て大量取得した国債は暴落が始まった。
(8)年金は日本国民の老後を支える財産であるが、受益者である国民は運用の実態を知らない。

(三)商品相場高騰のインパクト。

(1)商品会社の株価が短期間に2〜3倍に暴騰した。商品市場の構造変化を見れば当然の動きだろう。
(2)国際商品相場の高騰は周辺産業の株価に波及するだろう。第1は、穀物を増産するための肥料、農薬関連株である。第2は、水産株である。
(3)まだ業績に大きな変化は現れていないが、現在は静かに安値を拾う時だろう。
(4)総合商社は海外で非鉄、石油、穀物等の資源に投資して来たから、今や最大の収益部門に浮上した。株価は一段と商品相場との連動性を強めるだろう。
(5)農産物の価格高騰が続けば、食料自給率わずか40%の日本で、現在は全く無視されている農業が脚光を浴びる時が来るだろう。70才以上の日本人ならば誰でも戦後の食糧難時代に農村へ米やサツマイモの買い出しに出かけた経験がある。
(6)農地は不動産相場の高騰から取り残されているが、食糧危機が表面化すれば再評価される可能性がある。

(四)住友金属鉱山と商品市況。

(1)住友金属鉱山は日本で唯一、最大の資源株である。
(2)長期にわたりニッケル、銅、金の鉱山に先行投資を重ねてきたから、保有鉱山の含み益は04年3月期に2兆円、05年3月期には3兆円に達した。5月に発表される06年3月期の決算では、急騰した相場から推定して1兆円以上の増加となるだろう。
(3)かりに前期末の含み益を4兆円と見れば、株式の時価総額は1兆円だから、買収すれば3兆円の含み益が手に入る。
(4)来年には外資にも株式交換による買収が認められるから、株価が現状の1,700円台に止まれば、住友金属鉱山は必ず買収目標となるだろう。
(5)期間利益や株価収益率は企業価値の一部分に過ぎない。イトーヨーカ堂や新興企業はキャッシュフローを重視して不動産や株式を持たないが、住友金属鉱山は世界最高品位の菱刈鉱山を温存する一方でアラスカの金鉱山を買収し、ニッケル鉱山や銅鉱山を世界各地で買収している。長年にわたる先行投資が今巨大な含み益となって結実したのである。
(6)住友金属鉱山は江戸時代に四国の別子銅山に発して、住友財閥の総本家となったから、現在も住友グループの株式を大量に保有している。その簿価と含み益は有価証券報告書から試算することができる。
(7)財閥企業に限らず、含み資産を営々として構築する傾向は日本の伝統ある企業の大きな特徴で、アメリカの企業には全く存在しない。アメリカの株主は含み資産を株主のモノと考えているから、含み益が生じれば即座に売却し、配当することを要求する。もし温存すればハゲタカファンドの餌食となる。
(8)日本のアナリストは欧米式の財務分析に熱心で、含み益を評価しない。竹中大臣に至っては金融担当大臣時代に株式や不動産をリスク資産と断定して即時売却を要求し、抵抗する企業や銀行を倒産に追いつめた。竹中大臣に倒産の瀬戸際まで追いつめられた企業はその後の数年間に株価が5倍以上に暴騰した。
(9)大手銀行もまた竹中大臣から不良債権の烙印を押された融資が地価の反騰で優良債権に代わったために、前3月決算は大幅増益となった。銀行自身も不良債権が減り、自己資本の比率が上昇して、優良株へ大復活した。日本では、含み資産は株価の大きな変動要因である。

(五)株式相場雑感。

(1)石油を初めとする商品相場の堅調は世界経済の拡大と投機資金の健在ぶりを示している。東京市場の上昇基調は変わらない。
(2)鳥インフルエンザが法定伝染病に指定された。ロッシュのタミフルが鳥インフルエンザに有効として世界中で引っ張りダコになっているが、専門家の間では有効性を疑問視する意見が多い。
(3)富山化学の鳥インフルエンザ治療薬に関する新たな情報の開示に注目したい。
(4)深押しした新興市場にも底入れの兆しが見える。
(5)NIF SMBCの保合離れが近い。
(6)サイバードの信用取引の取り組みが接近している。
(7)ライブドアが上場廃止となったが、勝負は延長戦に持ち越された。USENが株式交換によるTOBを仕掛ける可能性がある。しかし外資系ファンドがTOBで対抗する可能性もある。
(8)再三指摘したように東証が「投資家保護」を上場廃止の名目に掲げたのは明らかに間違いである。事実を見れば、投資家は期日に追われて投げ売りを強制されており、「保護」ではなく「切り捨て」られた。
(9)これに対して東証自身は甘い審査で上場を認めて来た責任をホリエモンに押しつけて知らん顔を決め込んでいるが、肝心のホリエモンは現在も頑として不正を認めず、拘置所につながれている。何かが狂っている。