2006/4/10

  2006年4月10日(月)

(一)来年は東京市場が外資の草刈り場になる。

(1)2〜3月に年金、生保、銀行等、金融機関の売りで株式相場が急落した。急落局面で一手に買い向かったのはまたしても外国人投資家であった。
(2)これと同じ風景が2003年に最も大規模に出現した。当時金融担当大臣に抜擢された竹中氏が株式と不動産をリスク資産と断定し、金融機関と借金の 多い企業に対してリスク資産の即時売却を迫った。株価は大暴落し、ついには買い手がなくなって、銀行の処分玉2兆円を日銀が肩代わりした。株式市 場は疲弊の極に達し、日経ダウは7,603円の最安値にたたき込まれた。
(3)しかし竹中大臣がリスク資産と断定した株式と不動産こそ宝の山であった。
(4)このとき、金融機関が一斉にたたき売りした株式と不動産を一手に買い向かったのは外国人投資家であった。その結果、日本の金融機関は上場企業の株主ベスト10から姿を消し、代わって外国資本が上位を独占した。
(5)今年の急落は、2003年と比べるとスケールが小さいが、金融機関の売りに外国人が買い向かう構図は当時と全く同じだから、前期末には外国人の持ち株比率がさらに増加したに違いない。
(6)さて、ソニー、キャノン、ホンダ等、主要な輸出企業で外国人株主が軒並みに50%に達した状況下で、来年から外国企業にも株式交換による企業買収が認められる。日本の上場企業は買収から身を守るための対策を急いでいるが、頼りとする金融機関が大株主から姿を消して行くのだから、東京市場は必ず外国企業の草刈り場になるだろう。
(7)中でも、日本の公的年金は160兆円の運用資産のうち株式投資枠をたったの11%に規制した。もし誤った政治的決断を行わなければ、日本の年金は現状よりも50兆円以上多い含み益を蓄積していただろう。
(8)今年もまた株価の高騰で11%の枠を超えた株式を決算期末の2〜3月にたたき売りし、年金売りが終わった途端に株価は暴騰した。
(9)国民の財産を10兆円単位でドブに捨てるという政治的犯罪を毎年繰り返すシステムを構築した責任を、竹中大臣は修復する義務がある。

(二)国債暴落で破綻の危機に立つ年金。

(1)さらに悪いことに、年金と生保は株式を売った資金で国債を買った。
(2)私が再三指摘しているように、長期金利の上昇を受けて国債相場がすでに暴落を開始した。もし10年国債の利回りが戦後平均の6.5%まで上昇すれば国債相場は半値に大暴落する。株式で50兆円の評価 益を失い、国債で50兆円の評価損を抱えれば、160兆円の資金を運用する公的年金は上下100兆円の損失を受けて確実に破綻する。
(3)同じ金融機関でも、銀行は毎年決算期末に国債の評価損を赤字として償却しなくてはならないから、過去1年間に必死で国債の持ち高を圧縮し、長期国債を短期国債に入れ替えて、暴落に備えた。
(4)しかし年金と生保は国債の評価損を毎年の決算で赤字に計上しなくてもよいという特例に守られているから 、損失が表面化せず、相場観が働かない。そのために誰が見ても暴落必死となった国債を平気で買い増しするのである。
(5)金利が上昇するときは景気が好転するときだから、国債が暴落して株式が高騰する。しかし日本の年金は高 騰する株式を底値でたたき売り、暴落必死の国債を天井で買った。株式と国債の天底を共に間違えたのだから、破綻は必然である。
(6)しかしひょっとすると、運用を担当する厚生省は年金が危機的状況に追い込まれている事実に気がついてさえ いないのかもしれない。もし気がついていれば、いくらノー天気の役人でも心配で眠れないだろう。

(三)目先は短期的な調整も。

(1)2〜3月に深押ししたのは、過去1年間に株価が暴騰し、予想外に利益が増えたために、3月決算を控えた金融機関が一斉に、集中的に利食いしたためである。
(2)しかしその間も外国人買いが継続していたから、金融機関の売りが一巡するとたちまち上昇軌道を回復した。
(3)石油相場は70ドル台に迫り、史上最高値の更新をうかがう勢いである。オイルマネーの増勢が衰えていないから、世界の株式市場への資金流入は止まらないだろう。
(4)クラブ9の強気に変化はないが、短期的にはスピード調整のための押し目が入る可能性もある。
(5)その場合でも、仕手株、材料株、出遅れ株の物色は続くだろう。

(四)急騰した富山化学。

(1)富山化学はクラブ9の強力推奨銘柄であるが、ここへ来て株価が急騰した。原因は不明であるが、出来高や株価の変動幅は仕手株の特性を備えて来た。
(2)今後の相場のスケールを計るために富山化学が参入しようとしている新薬の市場規模を推定して、参考に供したい。
(3)第1に、富山化学が年内に発売を予定しているガレノキサシンの市場では、バイエルの抗菌剤シプロキサンが年商2,500億円を誇っていた。(昨年度は特許期限が切れて売上高が急減した)。
(4)第2に、富山化学のアルツハイマー治療薬T817MAは今秋にフェーズ II に入る予定であるが、その市場ではエーザイのアルツハイマー抑制薬アリセプトが年商1,900億円を記録している。
(5)第3に、鳥インフルエンザにも有効と期待されているロッシュのタミフルは年商1,500億円である。これに対して富山化学 が動物実験に成功した物質は、アメリカのFDAと日本の厚生省から早期発売を要請されたほど、薬効が鮮明である。
(6)上記3市場ではトップブランドが年商で6,000億円の巨大市場を形成している。
(7)新規参入を狙う富山化学の新薬は、先行するトップブランドよりも薬効が優れているから、もし開発に成功すれば世界的な製薬会社に変身する可能性がある。
(8)それらの可能性をめぐる評価が今後の株価大波乱の要因となる。