2006/3/27

  2006年3月27日(月)
  人の行く、裏に道あり、花の山。

(一)ライブドアにおけるマスコミと東証の無責任。

(1)ライブドアを賞賛し、ホリエモンを英雄に祭り上げたマスコミは、ホリエモンが逮捕されるや詐欺師と罵倒し、憎悪を浴びせた。東証は「投資家を保護するために」ライブドアを特設ポストに移し、ホリエモンが起訴されると上場廃止を決めた。
(2)しかし豹変したのはマスコミであって、肝心のホリエモンは現在も検察の調書にサインせず、無罪を主張している。上場企業の審査責任を持つ取引所は自らの責任を回避するために、裁判の結果を待たずに上場廃止を急いだのではないか。
(3)被害者は2階へ上げてはしごを外された個人投資家である。株価は特設ポスト入りから上場廃止の決定までの間に60円台のボトムを記録した。
(4)私は窮地に陥った投資家の参考に供するために、毎週ライブドアの妥当価値と最終株価に関する私見を述べた。
(5)現実にはハゲタカファンドが個人投資家の投げ売りに買い向かい、白馬の騎士USENの出現で、急反騰に転じた。
(6)これらの事実の経過を見れば、東証は投資家保護の名において投資家の財産を破壊したのである。
(7)私は西武鉄道の上場廃止に際しても反対論を述べた。西武鉄道もまた上場廃止の決定を受けて700円から200円に暴落し、上場廃止直前に500円に急騰した。上場廃止直後に村上ファンドが1000円、ゴールドマンサックスが1,500円の買収を提案した。今回もほぼ同様の経過をたどりつつある。
(8)「投資家保護」とは投資家の財産を守るという意味だろう。もしホリエモンが裁判で無罪の判決を受ければ、或いはもしライブドアが買収や合併を経て実質的に上場を維持する事ができれば、株価は大幅に反騰するだろう。東証が「投資家に注意を喚起」するのは当然であるが、軽々に「投資家保護」の大義名分を用いるべきではない。
(9)ライブドアの株価はまだ上昇余地を残している。USENがフジテレビの持ち株を肩代わりしても13%に過ぎないから、買収成立にはほど遠い。最終的にはUSENが自社株との交換による完全買収を表明して決着をつける可能性が高い。

(二)公示地価の読み方。

(1)公示地価が発表された。全国平均では下落傾向が止まらないから、不動産デフレは依然として進行中であるという論評が多いが、私は間違いだと思う。
(2)私は5年前に「不動産が値上がりする」(主婦と生活社)を出版して、日本の不動産相場はすでに反騰に転じたと述べた。将来についてもきわめて具体的に強気論を述べた。すなわち、
(3)第1に、現在は上昇が東京都の六本木と渋谷に限られているが、相場は必ず点から点へ、点から線へ、線から面へと波及する。
(4)第2に、翌年から株式市場に上場を予定しているリート(不動産投信)がアウトサイダーのマネーを不動産市場に吸い寄せるから需給関係が逆転し、逼迫する。
(5)第3に、しかし不動産の投資基準が変わる。リートは利回りによって資金を集めるから、大都市の商業ビル、商業施設が地価上昇をリードする。利回りに乗りにくい地方に波及するまでには時間が必要である。
(6)第4に、バブル時代に日本のホテル料金は世界一高かったが、現在は世界一安い。1992年以降、世界の不動産相場は高騰に次ぐ高騰を演じたが、日本だけが暴落に次ぐ暴落を演じていたからである。すなわち日本の割安は鮮明で欧米から投機資金が流入する。
(7)さて、今やリートの資金量は私募形式を含めれば10兆円を突破した。過去5年間の不動産相場は私が予測したとおりの経過をたどって「暴騰」したが、全国平均の公示価格は依然として下げ止まらない。しかしだからといって不動産デフレが止まらないという解説は、明らかな間違いである。
(8)東京都の面積は日本の府県で最も小さいが、時価総額は東京以外のすべての府県の合計よりもはるかに大きい。重要な指標は時価総額であって全国平均の公示価格ではない。

(三)地方の不動産は値上がりしないか。

(1)私は10年という射程で見れば、地価上昇の主導権が地方の農村に移る可能性があると思う。
(2)第1に、人口超大国の台頭によって国際的に農産物価格が暴騰し、自給体制を失った日本が食糧危機に襲われた場合である。
(3)第2に、関東で大地震が発生し、首都機能が地方に拡散した場合である。
(4)この2点は日本の不動産相場の大きな変動要因であり、リスク要因である。
(5)特に日本では大地震に備えてヘッジの方法を考えておく必要がある。東京は巨大すぎてあまりにも地震のリスクが大きい。
(6)ロンドンに住む中産階級は郊外の百姓屋を買って、週末には狭いマンションを脱出する。郊外の百姓屋では趣味と実益をかねて家族総出でリフォームに精を出す。景気回復が加速すれば、日本でも同じ風景が見えるようになるだろう。

(四)富山化学の材料。

(1)会社にも人にもツキや巡り合わせがある。私は富山化学を今年の材料株の筆頭に上げたが、複数の材料が着実に具体化しつつある。
(2)三菱UFJ証券が優れたレポートを継続的に出している以外に、私は証券会社のレポートを知らない。優等生のアナリストの眼に富山化学は赤字、無配の三流製薬会社に過ぎないと映るようだが、私は富山化学がホームページで開示している情報を見る度に宝の山に入ったような興奮を覚える。
(3)第1に、ガレノキサシンは先行するアメリカで10月発売がほぼ確実となった。三菱UFJ証券はピークの年商を2,500億円と予想しており、ライセンス供与だけで520億円を取得するほどの超大型新薬である。
(4)第2に、先週アメリカの学会でT705が鳥インフルエンザに有効と発表された。まだ動物実験の段階であるが、日本の厚生省とアメリカのFDAから早期開発を要請されたと伝えられて、注目を集めた。
(5)第3に、抗リュウマチ剤T5224のフェーズ1入りが目前である。
(6)第4に、極めつけはアルツハイマーの治療薬T817MAである。8〜10月にフェーズ1を終了した段階で、ライセンス導出の交渉に入る。細胞を活性化する治療薬で、成功すれば人類待望の不老長寿に一歩近づく。ライセンス料次第で人気が沸騰する可能性がある。
(7)武田製薬ではなく富山化学という弱小メーカーが複数のエキサイティングな新薬を開発している所が注目点である。すべてに成功する保証はないがガレノキサシンだけでも富山化学の収益力を一変させる可能性がある。

(五)人の行く、裏に道あり、花の山。

(1)株式市場には多くの格言があるが、大半は表題の格言と同様に「他人と同じ事をやっても儲からない」という教訓である。
(2)エコノミストには学校秀才が多いからよく勉強するが、「他人と同じ意見」ばかりで「裏道論」には滅多にお目にかからない。さもありなん。彼らは皆官庁統計を分析し、未来は過去の延長線上にあると信じているから、15年間も弱気相場が続くと弱気論一色に染まる。
(3)日経もまた少し相場が下がるとたちまち弱気論が躍動する。2〜3月には世界中で株価が高騰したにもかかわらず、日経の読者はニューヨーク株式の弱気論ばかりを読んで、暴落の余波におびえた。
(4)「弱気論者は理路整然と相場を間違う」という格言がある。優等生は弱気局面ではますます弱気論に磨きをかける。
(5)ホリエモンは逮捕を境に英雄から詐欺師に転落した。しかし豹変したのは評論家の方であって、ホリエモン自身は頑として無罪を主張している。
(6)私は度胸のある少数派に大きなチャンスが到来したと思い、断固として強気論を述べた。予想通り、複数の投資ファンドが殺到する投げ売りに買い向かい、USENが買収に乗り出した。私はその経過が「人の行く、裏に道あり、花の山」のモデルケースだと思う。
(7)金相場が先週ほぼ新高値をうかがう位置を固めた。住友金属鉱山はニューヨーク金相場の反落局面で買い、新値局面で利食いするのが「裏道」派の定石である。しかし金相場が新値を取る保証はないから、現実にはリスクが高く、決断にはA度胸と資金面の余裕が必要である。
(8)株式市場ではリスクの大きさと利益の大きさは正比例する。リスクのないところに利益はない。そこが投資家の悩ましい所である。