2006/3/13

  2006年3月13日(月)
  投資銀行時代に突入して激変する金融機関の勢力図。

(一)えびす天井・彼岸底。

(1)今年は昔からの格言通り、えびす天井・彼岸底となるだろう。恵比寿神社の祭礼は1月10日。春の彼岸の中日は3月21日である。
(2)えびっさん(恵比寿、戎)は関東ではなじみが薄いが、関西、特に大阪では商売の神様として人気が高い。大阪には今宮恵比寿と西宮恵比寿がある。渋谷のガーデンプレイスの恵比寿神社は大日本ビール(現サッポロビール)が新工場を建設したとき商売繁盛を祈念して西宮恵比寿から分社した。渋谷区の恵比寿という地名は恵比寿神社に由来している。
(3)相場の世界では大阪発の格言が多い。第2次世界大戦まで日本の株式市場は大阪を中心に発展したからである。ちなみに大阪の堂島では江戸時代に世界最古の先物取引が行われていた。堂島米穀取引所の正式な設立時期はシカゴ商品取引所より100年も早い。堂島川に淀屋橋を架けた江戸時代の豪商淀屋は最盛期に30億両という途方もない巨額の大名貸しを行っていたから、その勢力を恐れた徳川幕府によって取りつぶされた。
(4)「暑さ、寒さも彼岸まで」というが、相場の天井と大底も春秋の彼岸に形成される場合が多い。
(5)特に3月の彼岸がしばしば相場の転機となるのは、日本の官公庁や企業の決算が3月に集中しているからである。キリスト教の世界では暦年に従って12月を決算月としている。
(6)アメリカ人は株式の売買益を所得と合算して申告するから、12月には節税のための損切りが集中し、相場が下がる場合が多い。日本では年金資金を外国証券、生保、信託が運用しており、4月新年度の資金配分を有利にするために毎年2〜3月に益出し売りが集中する。今年は株価の急騰を受けて評価益が急増していたから、特に売り玉が大きく、相場を圧迫したと思われる。
(7)それにしても、年金が決算をドレッシングするために相場を崩し、国民の資産を年金自身が破壊するとはあきれた本末転倒である。

(二)株価と地価こそインフレの指標。

(1)どんな名人上手でも短期的な相場の波乱を免れる事はできない。しかし暴落したとき底値でたたき売るか、買い下がるかで、財産に天地の差が生じる。
(2)クラブ9は暴落をチャンスと考えているから、今回も世界のマネーの流れを念入りにチェックし、急落局面で強気を通す事ができた。
(3)しかし多くのエコノミストとマスコミは相場が急落する度に弱気論を競う。彼らにはもともと大局観がないから転向することが当たり前で、転向を恥じる気配が全くない。それらは結果を見た上の解説であって相場観とは異質である。
(4)そもそも金利が上がるのは景気がよいからである。景気が悪化する局面では、マネーは株式・不動産から国債へと逃避するが、景気が好転するとき、マネーは国債から株式・不動産に回帰する。
(5)私は株式・不動産が3年間も高騰し続けた現在は、明らかに景気の上昇局面だと思う。デフレだと考えて株式を売り上がった投資家はとっくに破産してしまっているだろう。
(6)奇怪にも竹中大臣は現在もデフレが進行していると主張し、日銀の金融政策の転換を厳しく批判している。竹中大臣は金融担当大臣時代に株式や不動産をリスク資産と断定して売却を強制し、リスクのない国債に乗り換えさせた。その直後に株式は大反騰に転じ、国債が今暴落の危機に直面している。つまり株式が暴騰して国債が暴落すれば竹中理論は完全に破綻するから、日銀の金融政策の転換を牽制しているのだろう。
(7)銀行は100兆円の国債を買ったから、今必死で売却を急ぎ、或いは長期債から短期債に乗り換えて暴落の被害を回避しようとしている。
(8)しかし国債の暴落から必死で脱出を計っている銀行に比べて、生保や年金は国債の評価損を決算で赤字処することを免除されているから、暴落のリスクを回避するどころか、現在も株式を売り、国債を買うという運用を続けている。
(9)私は彼らが3年以内に10兆円単位の評価損を抱えて国民の批判にさらされる時が来ると思う。

(三)日本は今、デフレかインフレか。

(1)私はデフレかインフレかを判断する基準を株価と地価に置いている。
(2)日本の不動産の時価総額は1000兆円以上だから、地価が10%上がる度に100兆円の利益を創造する。東京のテナントビルは空室が消えて家賃が急騰した。不動産と不動産から派生したビジネスから記録的な大増益を達成する企業が輩出したのは当然である。
(3)日本の株式の時価総額は過去3年間に230兆円から530兆円へ、300兆円も激増した。法人と個人を問わず株成金が排出したのは当然である。
(4)竹中大臣が起用した木村剛は借金で土地を買っている30社を名指しでつぶせと主張したが、それらの企業は軒並みに株価が暴騰した。
(5)かくして過去3年間に株式と不動産で600兆円に達する値上がり益が実現した。600兆円といえば日本のGDP(国内総生産)を上回る巨額である。これらの事実こそインフレの明白な証明である。
(6)しかし竹中大臣は現在もデフレが進行していると主張し、日銀が金融政策を転換したのはけしからんと批判している。
(7)退任したアメリカのグリーンスパンFRP議長は株式市場や債券市場に精通していたから、金融市場から絶対的な信頼を集めていた。日本のエコノミストや政治家の論理はあまりにも現実からかい離し、浮世離れしている。

(四)投資銀行時代の銀行の変身。

(1)今日ではいくら金融を緩和しても銀行融資は伸びない。企業は借金ではなく増資によって資金を調達しているからである。
(2)このところ松下、シャープ、キャノンなどが相次いで3,000億円の超大型設備投資を表明した。鉄鋼、海運、建設機械等の市況産業の設備投資も空前の規模である。しかし彼らは全額を増資によって調達する。銀行で借金すれば金利が要るが、増資によって得た資本金なら金利が要らない。
(3)銀行は待っていても借り手が現れないから、証券会社を買収して自ら増資を斡旋し、株式投資に乗り出した。
(4)銀行は今日では株式投信や商品投信や各種保険を売っている。そのために証券会社や生損保を買収し、欧米並みのインベストメントバンク(投資銀行)の体制を整えたのである。
(5)三井住友銀行は上場前のベンチャー企業に対しても取引の重点を融資から出資に移した。その結果として、昨秋に子会社のベンチャーキャピタルを大和証券のNIFと合併させてNIF SMBCを誕生させた。NIFは三井住友銀行の全面的支援を受けて野村證券傘下のジャフコを追い抜くだろう。
(6)投資銀行は株式の発行、証券投資、投資信託や外債や各種保険の組成と販売など、金融市場全域にビジネスを拡大した。その結果経営の選択肢が広がり、相場観に幅と奥行きが加わってきた。
(7)巨大銀行が預金と貸し出しの利ざやだけで食って行く時代は終わったのである。
(8)その結果、投資銀行は大量保有していた国債の売却を急ぎ、長期債を短期債に入れ替えるなど、積極的にリスク回避に取り組んでいる。私は国債の暴落が銀行のアキレス腱になると指摘してきたが、被害を縮小する可能性が生まれてきた。

(五)野村證券と日本生命。

(1)野村證券と日本生命は業界のトップ企業としてすべての銀行と等距離の関係を維持し、自主独立路線を守ってきた。
(2)しかし投資銀行に変身した銀行はグループ内に証券や保険を抱え込んだから、野村證券と日本生命にとっては親密な取引先がライバルに一変し、伝統的な取引関係からはじき出されてしまった。
(3)野村證券は新興のネット証券に株式取引の顧客を奪われ、ドル箱の投資信託や引受業務や買収合併の斡旋業務でも投資銀行に主導権を奪われつつある。野村證券が孤立した状況はアメリカのメリルリンチと似ている。
(4)日本生命は金城湯池の生保市場を外資に荒らされ、保有株式が急減して上場企業に対する発言力が低下した。生保業界の中でも株式から国債への資産の傾斜が最も顕著で、国債が暴落すれば巨額の評価損を抱えるリスクがある。
(5)私は先に大和銀行が窮地に陥ったとき、野村證券が兄弟銀行を買収する千載一遇の好機だと述べた。
(6)最初の好機は逸したが、野村證券は現在もなお日本生命、りそな銀行と大合併して第四の投資銀行を設立する可能性がある。
(7)日本の金融市場は投資銀行の時代を迎えて勢力地図が激変した。日本の金融機関と欧米の投資銀行との提携合併も起こりうる。孤立した巨人、野村証券と日本生命の行方に注目したい。

(六)ライブドア所感。

  「リクルートファイル・白い眼」を10人に贈呈。

(1)フジテレビの日枝会長がライブドアに対して株式暴落の賠償を請求するとマスコミが報じている。
(2)私は日枝会長がそこまで見識のない経営者だとは思わない。ビジネスの世界でフジサンケイグループの総帥がホリエモンごときにだまされたなんて、口が裂けても言えないだろう。賠償請求が成立するとも思えない。こんな報道を競うマスコミを私は信用しない。
(3)堀江社長は現在まで一貫して無罪を主張しており、検察の調書にハンコを押していない。投資会社による資金運用は日米で認められたシステムであり、その売買益を営業外利益に計上する事は違法ではない。私は堀江社長の言動のみが一貫し、経営者として筋が通っていると思う。
(4)公認会計士はライブドアの決算を承認している。上場会社の経営の監視に責任を持つ証券監視委員会はマスコミにあおられてやむなくライブドアの不正を告発するようだが、裁判は検察の独走に終わる可能性もある。
(5)裁判所で堀江社長自身が無罪の根拠を述べたとき、世論は逆転する可能性がある。
(6)私はライブドアに興味がなかったが、事件となるに及んでマスコミと私の常識の間に大差があり、私見を述べるようになった。真実は闇に包まれている。
(7)私はかつてリクルート事件が起こった時、正義感に駆られて即座に「リクルートファイル・白い眼」を出版して江副社長を弁護した。私は現在もリクルーと裁判は暗黒裁判であったと思う。その証拠にリクルートは事件の後も発展し、リクルートで育った人材が産業界で大活躍している。
(8)ライブドアにもリクルートと同じ素質がある。
(9)「リクルートファイル・白い眼」を先着10名の読者に贈呈したい。

郵便番号・住所・氏名・年齢・電話番号を明記のうえ、件名:「リクルートファイル・白い眼」プレゼント係 とし、メール(club9@kyas.com)でお申し込みください。
予定数を大幅に上回りましたので受付を終了させていただきました。
たくさんのご応募ありがとうざいました。06/3/13 AM11:00

高見様 折居様 安藤様 高橋様 上島様 川端様 富岡様 井手様 
山崎様 中村様 の 10名様にお送りしました。
ご応募ありがとうございました。
(※この件に関してのお問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。)