2006/2/27

  2006年2月 27日(月)
  オイルマネーの圧倒的な実力。

(一)一転、日経ダウは高値更新へ。

(1)20日付けで、クラブ9は断固たる強気の旗を掲げた。すなわち、1. 反騰の条件は十二分に成熟した。2. 反騰のスピードも早い。3. 今年の相場を牽引する指標3銘柄は不変である。
(2)幸いにも予想は的中した。
(3)これで買い方と売り方は攻守が逆転する。
(4)株価の急反騰で、今度は安値を売りたたいた弱気筋が窮地に追い込まれるだろう。先物市場で累積した空売りが反騰を加速する。大踏み上げで日経ダウは3月中にも高値を更新する可能性がある。
(5)弱気一色の市場人気に逆らって私が強気を堅持し得た最大の根拠は、オイルマネーの評価にある。
(6)世界の金融市場を席巻しているオイルマネーの実力を軽視する者は、弱気の迷路から抜け出せない。
(7)以下に、オイルマネーについて再説しておきたい。

(二)日米エコノミストが陥った弱気のワナ。

(1)1月までは絶好調の日本株とヨーロッパ株に反してアメリカ株は低迷を続けていた。アメリカでもエコノミストの弱気論が盛んで、最大手のメリル・リンチも久しく弱気論を掲げていた。しかし2月に入ると、ニューヨークダウは長期にわたる保ち合い圏を上放れて、猛然と高値を更新した。
(2)ところが、同じ2月に今度はヨーロッパ、アメリカの新値追いに逆行して、日本株だけが突如として暴落した。
(3)中でもライブドア事件をきっかけに新興3市場が根拠不明の大暴落を演じた。マザーズに至っては平均株価が半値に暴落し、3分の1に大暴落した銘柄が続出した。多くの個人投資家が担保切れのために投げ売りを強制された。
(4)この凄惨な暴落の背景に関しては(四)の後半で補足したい。
(5)オイルマネーは日本株が天井に達したと見てヨーロッパ株に乗り換えている、という日本株底抜け論がマスコミを駆けめぐった。
(6)強気の私でさえ、「白日夢を見ているのではないか」と我が目を疑ったほど暴落は異常で、不可解であった。
(7)それでも私はひるまず、20日付けクラブ9で信じるままに強気の旗を掲げた。
(8)私が充満する弱気論にひるまなかったのは、オイルマネーに対する評価が他の人たちと決定的に違っていたからである。

(三)弱気論の構造的欠陥。

(1)日米のエコノミストはオイルマネーを話題にするが、その実力をまるで理解していない。
(2)オイルマネーは世界第1位の経済大国アメリカ、第2位の経済大国日本の金融政策を超える次元で、世界中に巨大なマネーをばらまいている。
(3)アメリカが世界の中心だと信じているアメリカのエコノミストは弱気論に自信を持っていた。
(4)日本の景気回復は小泉内閣の構造改革が成功したからだと無邪気に評価しているエコノミストには、オイルマネーの実力が見えない。
(5)25年昔に遡るが、私は第1次オイルショック後に、日本の国債や株式を売るために湾岸産油国へ出張した。幸運にもその時の体験によって現在のオイルマネーのスケールを推定することができる。
(6)一口にオイルマネーといっても、現実に世界の金融市場に強大なインパクトを与えているのは、チグリス、ユーフラテスの河口に油井を持つサウジアラビア、クエート、イラク、アブダビ等の湾岸産油国である。
(7)第1次オイルショックで石油相場は1ケタから10ドル台に上昇したに過ぎなかったが、それでも湾岸産油国は建設ラッシュにわきかえり、日本国債を10億円単位で買い付けた。三越や帝国ホテルを買収したいという破天荒の相談もあった。当時は日本経済の勃興期で、円相場は1ドル360円から80円へ、大暴騰を開始していた。オイルマネーはドル建ての石油収入を暴騰する円に換えたのである。
(8)その後、第2次オイルショックを経て現在は第3次オイルショックが進行している。第1次と第2次が小幅で短命であったのに対して、第3次オイルショックは人口超大国の台頭による需給関係の構造変化を受けて進行しているから、長期的で構造的なトレンドに変質している。しかるに第3次を第1次、第2次と同じ短期的なショックと捕らえている人は、明日にも反落するという弱気の先入観を払拭できない。
(9)石油相場が10ドル台に跳ね上がった第1次オイルショックでさえも、オイルマネーは世界の金融市場に強烈なインパクトを与えた。今や石油相場は60ドルを維持し、売上高の大半を利益として噴出する時代となったのである。
(10)湾岸諸国は昼夜を分かたず噴出する資金の運用に追われており、日本の識者が知ったかぶりで主張するように日本株を売ってヨーロッパ株に乗り換えるようなせこい運用をする必要がない。
(11)石油相場が暴落しない限り、日経ダウが史上最高値39,000円を更新するのは時間の問題だと私は思う。
(12)湾岸諸国でオイルマネーを運用しているのは、昔も今もスイス人とイギリス人のファンドマネジャーで、彼らのポートフォリオはシンプルで、簡単には揺るがない。
(13)今日では、オイルマネーの実力を知らない投資家は世界の金融市場の構造変化に追随できないのではないか。

(四)ライブドア。

(1)以下は質問、反論、疑問の多いメールに対する回答である。
(2)ライブドアに関する疑問、反論が最も多いが、私には短期的な株価を見て批判されてもお答えする能力がない。しかし3ヶ月という射程で見れば、私のこれまでの予想は間違っていないと思う。
(3)今後の最大の波乱要因は単独、又は複数の企業による買収、争奪戦である。
(4)西武鉄道は上場廃止前に700円台から200円台まで急落したが、上場廃止後に村上ファンドが1,000円で、ゴールドマンサックスが1500円で買収案を提示した。
(5)ライブドアは外資系ファンドによる買収の可能性が最も高い。フジテレビが他の買収グループに参加する可能性もある。もしフジテレビが何もせずに巨額の損金を計上するようであれば、日枝社長は無能の烙印を押されるだろう。
(6)今後は買収の話題が出るたびに株価が急進する可能性がある。しかしこれは投資ではなく投機だから、度胸と資金に余裕のある投資家向きである。
(7)堀江社長は白と黒の間のグレーゾーンにビジネスチャンスがあると喝破して、ライブドアを興した。マスコミは検察の追求に屈しない堀江社長と熊谷取締役を批判しているが、私は終始一貫する社長が率いていたからこそ、ライブドアを信用する。
(8)大企業の財務担当者は税務署から脱税を摘発されたとき必ず「見解の相違」だと答えるが、堀江社長も「見解の相違」を盾に突っ張っているのだろう。
(9)ライブドアの粉飾の根拠となった「投資組合」はアメリカでも認められた組織である。検察が本気で投資組合の介入を犯罪と認定すれば、必ず連座する企業や経営者やアングラマネーが噴出する。
(10)今回の新興市場の突然の大暴落を「投資組合の非合法化を恐れたアングラマネーが一斉に株式をたたき売った結果だ」と指摘する情報がある。
(11)確認はできないが、そう推定すれば不可解な大暴落の背景が見えてくる。グレーゾーンにはホリエモン以外にも投機資金がひしめいているからである。

(五)ダイエー。

(1)ダイエーの目標株価をモルガン・スタンレーは6,800円、メリル・リンチは2,000円とする正反対のレポートが出た。あまりの大差に私の意見を問うメールが多い。結論を先に言えば、私はメリル・リンチのレポートに欠陥があると思う。
(2)第1に、私は株価を見る上で需給関係を最も重視する。メリル・リンチがダイエーの株価算定の根拠として比較したコジマはすでに大半の機関投資家がポートフォリオに組み入れているが、ダイエーは無配だから投信は買えない。しかし復配すれば確実にポートフォリオに入る。特にダイエーは復配すれば日経ダウ225銘柄に採用される可能性が高く、そうなればヤフーやソフトバンクと同様に機関投資家が必ず大量に買う。将来の需給関係は圧倒的にダイエーに分がある。
(3)第2に、次いで私は企業の資産価値を重視する。現にこれまで日本で買収された企業の大半は含み資産を標的にしている。ダイエーは再生機構がウォルマートや丸紅の買収案を退けて強引に取り込んだ。再生機構は先ず保有不動産の担保価値を再評価し、主力銀行に6,000億円の損失補填を強要した。6000億円の大半は保有不動産の簿価の圧縮に引き当てている。次いで保有機構は第3社割り当て増資を強行し、自ら筆頭株主となった。再生機構はお手盛りでダイエーの価値をあげた上で乗っ取ったも同然である。その後の不動産相場の急騰を見れば、ダイエーの含み資産は1兆円を超える可能性がある。
(4)ダイエーの細部を調べ尽くした再生機構がダイエー株の転売による大もうけをたくらんだ事は容易に想像できる。丸紅もまた再生機構入り以前から買収を申し出ており、その資産価値を知っているからこそ、再生機構が保有する全株式の譲渡を申し入れたのだろう。
(5)ついでながらダイエーの借金の半分はダイエーOMC向けだから、OMCを売却すれば即座に借金が半減するばかりか、大きな売却益が取得できる。さらにダイエーは株価が高騰すれば有利なファイナンスが可能となり、無借金経営が可能となる。
(6)コジマは財務内容が優れているが、未知の魅力が乏しい。
(7)メリル・リンチのレポートは優等生の分析力を評価できるが、需給関係や資産価値や将来の経営に関する想像力が欠落している。これでは実践的な投資家の参考にならない。
(8)世間周知の情報を株価はすでに織り込んでおり、株価は未知の情報が表面化したときにのみ大きく反応する。統計データや財務内容の分析は周知の情報であって、株価にとってサプライズ(驚かせる情報)にはならない。
(9)すなわち故人いわく、「人の行く裏に道あり、花の山」。
(10)すなわちクラブ9の投資原則第1条にいわく。「株式投資の世界では常に少数意見が勝つ」。
(11)これらは私が体験から得た相場哲学で、株価を読む視点が特異であることを誤解を避けるために付言しておきたい。