2006/2/13

  2006年2月13日(月)
   株式相場を撹乱する商品相場

(一)不動産投信と商品投信のインパクト。

(1)私は5年前に「不動産が値上がりする」(主婦と生活社)を出版し、不動産相場は反騰前夜だと述べた。
(2)その翌年に日本で初めて売り出された不動産投信(リート)を私は強力に推奨した。
(3)同時に私は株式や不動産をリスク資産と断定した竹中大臣の金融政策に反対し、今こそ株式と不動産を買うべしと主張した。
(4)90〜91年に世界中の不動産が暴落したが、アメリカの金融市場は不動産投信を組成して猛然と買い向かい、わずか2年で不動産不況を克服したからである。
(5)アメリカの不動産投信はたちまち30兆円市場を形成し、「動かない」不動産は「流動性の高い」金融商品に変身したのである。その後、アメリカの不動産相場は10年連続して史上最高値を更新し、アメリカの景気と株価を牽引した。
(6)日本でも不動産相場は大反騰に転じた。過去4年間に不動産関連株は軒並みに5倍以上に暴騰し、新興市場ではアセットマネジャーやリプラスのような、超高度成長株が輩出した。
(7)私は今、不動産投信に匹敵する新しい金融商品が急成長し始めたと思う。それが商品投信である。
(8)不動産投信が不動産相場を高騰させたように、商品投信は石油、非鉄、貴金属、穀物等の国際商品に影響力を与える可能性が生じてきた。

(二)急騰した商品取引株。

(1)ジム・ロジャーズは2年前に商品相場の高騰は17〜8年続くと予想し、自らの資金を商品市場に投入した。
(2)ジョージ・ノーブルもこれからは株式相場よりも商品相場の投資効率の方が高いと述べている。
(3)ファンドマネジャーとしても投資家としても大成功を納めた実践家がそろって主張するとおり、少なくとも過去2年間、アメリカではニューヨーク株式よりもシカゴ商品の上昇力の方が圧倒的に強い。
(4)東京株式市場でも先週、商品市場の変化を予感させる兆候が現れた。豊商事、エース交易など、商品取引株が全般の調整局面に逆行して一斉に急騰した。
(5)今や日本でも銀行が証券、保険を糾合した巨大金融グループを形成する時代となった。さらに商品投信を組成、販売する可能性がある。
(6)先週シカゴ商品と金は急落した。当面の調整はやむを得ないとしても、中期的な反発力に注目したい。

(三)赤字決算のサイバード。

(1)大和証券が格下げのレポートを出して株価が下落していたところへ、赤字予想が出て週末にストップ安を演じた。
(2)業績予想を読み違えたのは私の不明である。
(3)携帯の情報機能の多様化に着目して、昨年リクルートが第3者割り当て増資によってサイバードの株式20%を取得した。先週末にはその時の株価まで下落した。
(4)リクルートとの提携をテコとした一連の投資効果は早晩表面化すると思うが、当面は忍耐が必要かもしれない。

(四)富山化学のT-3811について。

(1)アメリカの製薬大手シェリング・ブラウ社は富山化学から新型抗生物質T-3811を導入した。
(2)シェ社は昨年12月に臨床テストを完了してFDAに製造認可を申請した。間もなくファイリングされるだろう。ファイリングされた時点でシェ社は新薬を正式に公表し、その8〜10ヶ月後に製造承認を受ける。
(3)シェ社が富山化学に支払うパテント料は3億2,400万ドル(350億円)の巨額に上る。富山化学は契約時に8,000万ドルを取得しており、今後マイルストーン方式で段階的に2億4500万ドルを取得する。
(4)シェ社はバイエル社にサブライセンスを供与し、欧米市場で共同販売する予定である。バイエル社が支払うパテント料はシェ社が取得する。
(5)国内ではアステラス製薬が新たに販売権を取得した。そのパテント料は総額170億円であるが、内訳と支払時期の明細は3月決算の発表時に行う。
(6)以上がT-3811に関する富山化学のコメントである。
(7)シェ社とアステラスの2社が富山化学に支払うパテント料は520億円の巨額に上る。内外の製薬大手アステラスとバイエルの販売陣営入りはT-3811の大物ぶりを十二分に証明しており、富山化学の業績に革命をもたらすだろう。
(8)開発中の新薬にも超大型がある。2月9日付日経が「経営資源を集中する」と報じたアルツハイマー治療薬T-817MAは「神経細胞の傷害を止めるだけでなく、積極的な改善をはかる」薬剤で、現在アメリカでフェーズ1が進行している。もし開発に成功すれば人類待望の不老長寿に一歩近づく。