2006/2/6

  2006年2月6日(月)
   アラビアンナイトの夢と現実。

(一)人類の夢を叶えた練金の壺。

(1)アラビアンナイトの「千夜一夜物語」はバグダッドのハーレムで語られた奇想天外な夢物語である。
(2)中でも黄金を生み出す錬金術は有史以来、人類が見果てぬ夢の中の夢であった。その夢を砂漠の底に眠り続けてきた油井が現実に変えた。
(3)中近東は酷暑と不毛の砂漠におおわれた貧困地域であるが、イラクのバグダッドだけはチグリス・ユーフラテス川がペルシャ湾に注ぐ河口に位置し、水と緑に恵まれた町である。千夜一夜物語はそのバグダッドではぐくまれた夢物語である。
(4)バグダッドを首都とするイラクで独裁権力を手にしたサダム・フセイン大統領は豊かな石油資源にあきたらず、隣国クエートを併呑して世界最大の産油国にのし上がる野望を抱いた。しかしアメリカとその同盟国にとがめられて一敗血にまみれ、今では虜囚の辱めを受けている。
(5)マスコミはアメリカがイスラム過激派を制圧できないと伝えているが、私は選挙によって成立した民主政権がすでにほぼ治安を回復したと思う。
(6)第1に、イラク政府は巨額の石油収入を投入して20万人の軍隊と警察からなる治安部隊を編成、育成した。
(7)第2に、巨額の石油収入の利権を得るためにスンニ派が政権にすり寄ってきた。中東の国家は皆第2次世界大戦後に独立した部族連合国家である。すべての部族長は暴騰した石油の利権を獲得して部族を養う責任がある。スンニ派の部族長が反政府武装勢力と決別して新政権に参加するのは時間の問題で、日本の自衛隊の名誉ある凱旋も近いだろう。
(8)今や練金の壺を手にした中東産油国はわき出してくる石油収入を、世界の株式や不動産や金に投資して次世代のための基金を構築している。イラクは政権が安定すれば石油を増産し、バグダッドは富と繁栄の拠点となる。
(9)日本の投資家は日本のエコノミストや政治家の意見よりも、練金の壺を手にした産油国が何を買うかに注目する必要がある。

(二)住友金属鉱山と中外鉱業。

(1)チャートをご覧願いたい。ニューヨーク金はシカゴ商品指数と連動し、住友金属鉱山株はニューヨーク金と連動している。


(2)国際商品の上昇スピードは世界の主要な株式や不動産の上昇スピードを上回っている。つまり商品相場が世界の資産インフレを牽引しているのである。
(3)株価の短期的な波乱は避けられないが、シカゴ商品指数が上昇基調を維持する限り、株式相場の上昇基調は崩れないだろう。
(4)商品相場を個別に見ると、貴金属のプラチナや非鉄の銅は先週史上最高値を更新したが、金はまだ史上最高値880ドルの35%下にある。
(5)私は金もまた早晩史上最高値に挑戦すると思うから、住友金属鉱山を指標株に上げている。
(6)質は落ちるが、中外鉱業も伊豆に金鉱山を保有している。日本の金相場は25年前に1グラム8000円台の史上最高値を記録した。当時中外鉱業は伊豆で金を採掘していたが、金相場が3000円まで下落したときに閉山した。その後金相場は1000円まで暴落し、現在は2200円台を回復したところである。
(7)中外鉱業は3000円を鉱山再開のめどとしているようであるが、現在は掘削技術、製錬技術が発達しているから、ぼつぼつ再開の可能性が話題に上るだろう。
(8)金相場の動向次第であるが、中外鉱業にも注目しておきたい。

(三)ライブドアに一発逆転の夢。

(1)ライブドアに関する私見に対して疑問や批判のメールが多いので、コメントを加えておきたい。
(2)私は1ヶ月前まで、ライブドアにもホリエモンにも全く関心がなかった。
(3)しかし、ホリエモンが逮捕されて、ライブドアが特設ポストに入り、株価が大暴落すると、大いに魅力を感じた。
(4)第1に、ホリエモンが失脚しても投資家を熱狂させたライブドアの人気要素は消滅しない。第2に、ライブドアは無借金だからつぶれない。第3に、1株当たり185円の純資産もある。第4に、これから自力再建、買収、会社分割などをめぐる思惑が浮上する。
(5)テレビの論評は間違いが多いと思う。ライブドアは不正に利益を計上したが、だからといって利益が消滅するわけではない。例えばフジテレビが300億円の損害を受けたとしても、ライブドアは賠償しないだろう。フジテレビだけに損失を補填すれば他のすべての投資家が黙っていない。フジテレビはライブドアを傘下に入れて再建する以外に「自力で」損金を回収する事はできないだろう。
(6)いずれにせよライブドアの上場廃止は必至だろう。
(7)しかし上場廃止前、或いは廃止後に、株価次第で買収、合併、分割等の経営上の変化が起こる可能性がある。
(8)私は六本木ヒルズに結集したITビジネスが幻だとも、IT業界の人材が腰抜けだとも思わない。

(四)ダイエーの株価はどうなるか。

(1)モルガンスタンレーの推奨レポートが出て、ダイエーが急騰した。私もレポートを見たが、詳細で、具体的で、説得力が高い。
(2)私は再三ダイエーを推奨銘柄に上げた。竹中大臣は不動産や株式をリスク資産と断定し、これを保有する企業とその企業に融資する銀行を目の敵にしたが、私は世界的な不動産と株式の高騰が日本に波及するのは時間の問題だと確信していたから、窮地に追い込まれていた熊谷組、長谷工、大京、ミサワ、ダイエーなどのオールドエコノミーを次々に推奨した。
(3)竹中大臣がライブドアのホリエモンに肩入れしたのは偶然ではない。竹中大臣は借金で土地や株式を保有するオールドエコノミーを敵視する一方で、無借金、自己資本経営のニューエコノミーを高く評価していたからである。
(4)しかし企業の価値は多様である。ニューエコノミーは無借金であるが、高い株価を維持するために当期利益を優先し、含み益をも持たない。これに対してオールドエコノミーの株価水準は低いが、借金で構築した土地や店舗や工場や設備の含み益が大きい。
(5)企業経営を評価する基準は景気の局面によって異なるが、外国資本と国内資本とを問わず、企業買収の目標は含み資産の厚い企業に集中している。
(6)ダイエーの今後の株価を予測する上で、需給関係も重要な要素である。第1に、企業規模から判断して復配すれば日経ダウ225銘柄に採用されるだろう。第2に、そうなれば機関投資家はいやでもポートフォリオに組み込まなくてはならない。第3に、株価の潜在上昇力を比較してヘッジファンドは「ヨーカ堂売り、ダイエー買い」の裁定取引を仕組むだろう。これらは皆需給関係を好転させる要因である。
(7)一連の再生銘柄は機関投資家の大量買いが進むにつれて浮動株が急減し、株価が急騰した。ダイエーも例外ではないだろう。
(8)需給関係は業績と並ぶ株価の重要な決定要因である。