2006/1/30

  2006年1月30日(月)
   又しても粉砕された弱気論

(一)オイルマネーの実力を知らないエコノミスト。

(1)ライブドアの株価操作と粉飾決算が新春相場に冷水を浴びせた。しかし東京発世界同時暴落の恐怖を阻止したのは又してもオイルマネーであった。そこでオイルマネーの実力を再説しておきたい。
(2)第三次オイルショックで石油相場は70ドル台へ大暴騰し。現在も60ドル台を維持している。
(3)産油国の石油の原価はタダである。生産コストを10ドルと見れば、産油国の油井は1年365日24時間、昼夜を分かたず1バーレル当たり50ドル以上の利益を噴出し続けている。
(4)人口の少ない中東産油国にとって、油井はまさしくアラビアンナイトの練金(れんきん)術の壺である。彼らは噴出する巨額のオイルマネーを将来の石油資源の枯渇に備えて「未来の国民のための基金」に計上し、世界の株式や不動産や金に投資している。
(5)かくして石油相場が高値圏を維持する限り、巨大なオイルマネーが世界の株式、不動産、商品などの市場に流入し、世界第2位の東京株式市場の需給関係は好転一途をたどる。
(6)しかし日本のエコノミストは日本というコップの中の景気論争に明け暮れて、世界で進行している資産インフレの大波を見ないから、株価が少し下がると弱気に傾き、大海を知らない「井の中の蛙」の欠陥を露呈するのである。

(二)小泉改革の虚像と実像。

(1)クラブ9が今年の指標に掲げた3銘柄は年初の大波乱に逆らってほぼ最高値を維持している。
(2)私は次の3点を銘柄選定の前提条件とした。第1に、人口超大国の躍進が続く。第2に、それゆえ商品相場の高騰が続く。第3に、それゆえオイルマネーがますます肥大する。
(3)次いで私は次の3銘柄を今年の指標株に上げた。第1に世界の資産インフレの指標である金相場との連動性が高い住友金属鉱山。第2に、新興企業の台頭が著しい新興市場を代表するNIF SMBC。第3に、日本の技術革新の中でも変化率が圧倒的に大きい富山化学。
(4)これに対して、小泉首相や竹中大臣は構造改革を進めたから株価が上がったと主張しているが、事実ではない。
(5)竹中大臣は自らが推進した構造改革はみな縮小均衡をもたらすデフレ政策であると認識しているから、株価と地価の暴落を確信し、株式と不動産をリスク資産と断定したのである。その結果リスク資産を大量保有する企業と、その企業に融資する銀行を構造改革の見せしめとして倒産に追い込んだのである。
(6)しかし私は2001年に「不動産が値上がりする」(主婦と生活社)を出版し、地価はすでに東京都心から反騰に転じたと分析していたから、竹中大臣が木村剛を側近に抜擢してつぶせと命じた熊谷組、長谷工、大京、ミサワ、ダイエーなどを次々に推奨銘柄に上げた。果たしてそれらの銘柄は世界的な資産インフレの進行と共に反騰に転じ、暴騰した。
(7)繰り返すが、日本経済をデフレの危機から救ったのは人口超大国の台頭が引き金となった世界的な資産インフレであって、小泉内閣の構造改革ではない。この事実を直視しない人は株価急騰の原因が理解できず、ことあるごとに弱気に傾くのである。
(8)しかしそうはいうものの、5兆円台に積み上がった信用取引の残高は軽視できない悪材料である。今週は市場人気が総強気に傾くと思うので、利食いも一策だろう。
(9)株価が波乱を演じた後には人気銘柄に変化が起こりやすい。私はライブドアの強弱感が鋭く対立すると思うので、次項でくわしく述べたい。

(三)ライブドアに群がるマスコミ報道の虚実。

(1)前回にもふれたが、ライブドアには一株当たり185円の純資産があり、子会社の中には優良企業が多い。何よりもライブドアは無借金である。無借金の企業はつぶれようがない。
(2)昨日までは、竹中大臣ですらホリエモンをIT時代の旗手だと持ち上げていたが、今や一転してマスコミが集中砲火を浴びせている。
(3)中でもライブドアの時価総額経営に非難が集中しているが、私は銘柄選別に際して時価総額を最も重視する。今日では時価総額を軽視する企業は間違いなく投資家から見放されて、ハゲタカの餌食となる。時価総額経営は良いか悪いかではなく、世界の企業経営の現実であり、根幹である。
(4)クラブ9は「相場の世界では常に少数意見が勝つ」を投資の第一原則としている。今やライブドア株の強気論は極端な少数意見となったから、投資の好機である。
(5)フジテレビから取得した250億円や自社株操作で稼いだ利益は幻ではなく、現に存在する。ライブドアの事業素質と人材にも魅力がある。投資家は感情論の背後にある虚実をクールに見分ける必要がある。
(6)フジテレビの日枝会長は経営責任を果たすためにライブドアの支配に乗り出す可能性がある。外国資本がライブドアの買収ファンドを組成する可能性はもっと高い。逆転を逆転するシナリオは幾通りもあり得る。
(7)一昨年、東証が西武鉄道を上場廃止にしたとき、私は強く批判した。特設ポスト入りで西武鉄道の株価は700円台から200円台に暴落したが、実態価値からかい離した株価は投資家を保護するどころか投資家の財産を破壊していると主張したのである。果たして直後に村上ファンドが1株1000円で、ゴールドマンサックスが1,500円で買収を申し入れた。東証の判断が柔軟であれば、西武鉄道は経営者を更迭することによって上場を維持し、投資家の財産を保護する事ができた。
(8)ライブドアも700円台は異常人気であったが、100円は過小評価である。
(9)リスク覚悟の投資家には一発勝負の価値がある、と私は思う。

(四)富山化学の情報開示。

(1)富山化学が新型合成抗菌剤「T-3811」の販売権をアステラス製薬に供与した。これに伴う特許料170億円は、新薬の高い評価を裏付けるに十分な金額である。
(2)欧米市場ではシェリング・ブラウ社が販売権を取得しているが、シェ社はクラブ9の取材に対してバイエル社にサブライセンスを供与する見込みだと述べている。
(3)これが実現すれば国内では大正製薬とアステラス、欧米ではシェ社とバイエルという強力な販売体制が整う。
(4)これまで軽視されていた富山化学自身による情報開示が現実となった。
(5)富山化学のホームページを信頼すれば、「T-3811」の他にも複数の有望な新薬情報を開示している。中でもアメリカでフェーズ1が進行しているアルツハイマー「治療」薬は薬効が革命的で、発売となれば世界中の高齢者がもろ手をあげて大歓迎するだろう。

(五)NIF SMBCの第3四半期。

(1)28日付日経は、4〜12月の業績を税引き利益20倍、経常利益4倍と報じた。
(2)株価急騰を裏付ける数字である。

(六)住友金属鉱山の情報開示に変化。

(1)福島社長は日経「回転いす」で初めて「買収の危機、身近に」感じるというコメントを述べ、24日付では「海外鉱山投資などの効果で来期経常利益が100億円増」と強気の見通しを出した。
(2)これまで同社は歯がゆいくらい控えめな業績予想に終始していたから、私は情報開示に革命的な変化が起こったと感じた。
(3)「保有鉱山の含み益に対して株式の時価総額があまりにも過小だから、株式安定工作を急がなければ必ず外資の買収の標的になる」という私の指摘にようやく社長が同調された事を喜びたい。
(4)石油や製薬ではすでに世界的な寡占化が進んだ。次いで非鉄、貴金属でも国際的な買収合併による寡占化が進行している。
(5)東シナ海では石油の採掘権をめぐり、日中両政府が激突する構えである。
(6)住友金属鉱山は日本で数少ない、というよりも唯一の資源株である。日本を代表する住友財閥の総本家として、いま経営者の見識が試されている。