2006/1/23

  2006年1月23日(月)
  ライブドア事件の余波を予測する。

(一)ライブドアはどこまで下がるか。

(1)ライブドアは元々無配で、堀江社長は配当を実施する気持ちがないから、株式分割によっていくら発行株式数が増えても配当負担が増える心配がない。
(2)だからこそ「分割は買い」という投資家の思いこみを利用して10分割、100分割、10分割を連発して、発行株式数を1万倍に激増させたのである。
(3)しかしいくらホリエモン人気をもってしても、収益の裏付けがなければ暴騰した株価を維持する事はできない。
(4)そこで 1. 企業買収の虚偽の情報を流し、2. 投資組合を割り込ませて、3. 自社株を操作し、4. 海外に利益を迂回させて足跡を消し、5. 期間利益に計上していたのである。
(5)これだけの事実が明らかになれば、ライブドアの上場廃止、堀江社長の逮捕は必至である。
(6)それならばライブドアの株価はどこまで下がるかを試算してみたい。
(7)株価操作の善悪の評価を別にして、これまでにライブドアが積み上げた利益は1株当たりで185円に達している。さらに今後関連会社を切り売りして取得する売却益を1株当たり100円と見れば、株価の下限は200円台、という一応の試算が成り立つ。
(8)しかしライブドアは上場廃止を控えている一方で、ライブドア自身が全面的、或いは部分的に買収される可能性がある。200円台という私の試算はあくまでも一つの試算に過ぎない。

(二)ソフトバンクは株式を分割したが、増配は0.5円。

(1)ライブドアとソフトバンクは共に発行株式数が10.5億株、株主数が20万人前後で、世評では共通の投資家が多いという。
(2)ソフトバンクも直近に3分割を実施した。
(3)ソフトバンクは7円配当を実施していたが、元々赤字決算で7円配当の維持には無理があったから、今期は2.5円へ減配を表明している。
(4)株価は分割を歓迎して大幅に上昇したが、実質的な増配はわずか0.5円に過ぎないから実質的な株主優遇はわずかである。
(5)ライブドア事件が起こった現在、株式分割に対する投資家の評価がどのように揺れ動くだろうか。ソフトバンクの株価が一つの試金石となる。

(三)リプラスは大幅分割に見合う大幅増益を達成。

(1)リプラスも無配であるが、昨年5月に3分割を行った。しかし前12月決算で利益は3倍に増えたから、逆算した株価が3倍以上に急騰したのは当然である。
(2)リプラスはさらに昨年12月に再度3分割を実施した。今期も利益は2倍増の予想だから、利益成長力と発行株式数がほぼ均衡している。
(3)株式分割はこのような利益成長企業が行ってこそ価値がある。利益成長のない企業が分割すれば1株当たりの資産が減り、配当負担が利益を圧迫する。
(4)しかし分割で株価に人気がつけば、株式の時価総額が増加するから、企業買収を仕掛けて活路を開く事ができる。ライブドアはこれを狙ったが、禁じ手の株価操作や利益操作に走り、墓穴を掘った。
(5)アメリカではマイクロソフトが長期にわたり無配を継続する一方で、利益を本業への再投資や自社株買いに投入して投資家の支持を集めた。
(6)リプラスはマイクロソフトに習って配当の代わりに高い成長力を実現し、利益の社外流出を抑える一方で、投資家には株式分割で報いたのだろう。
(7)そのリプラスが株主に宝くじを贈ると発表して評判になっている。
(8)昨年は株主優待を実施した企業の株が全面的に高騰した。株主優待の利回りが現金配当を上回るケースも少なくない。株主がこのような地道な株主優遇を高く評価している事実を、分割の人気取りに走る社長は参考にして欲しい。

(四)Eトレードは投資組合の情報開示を急げ。

(1)ライブドアは「投資組合」を株価操作と利益操作の隠れ蓑に用いていた事実が鮮明になった。
(2)四季報を見れば、Eトレードも自社で組成した投資組合が第2位と第3位の大株主を占めている。すなわち「投資組合SBI・TF2号」が15.5%を、「投資組合SBI・TF1号」が3.8%を保有している。投資家の目から見れば、2つの投資組合が保有する19.3%は時価総額を空洞化させているように見える。
(3)ただしEトレードは堂々と投資組合の存在を開示しているから、株価操作や利益操作から切り離すための社内規定等を完備しており、それゆえジャスダックが容認したと思われる。
(4)投資組合自体は欧米にも多数存在し、それぞれ明快なルールに則って資金を運用しているから、問題になっていない。
(5)しかしライブドアが投資組合を不正運用の隠れ蓑に利用したために株式市場を揺るがす大事件となった。Eトレードは早期に社内規定等を開示して投資家の疑念を払拭しておくべきだろう。

(五)政治家とマスコミとライブドア。

(1)ライブドアの堀江社長は利益を上げて株価を上げる努力を怠り、株価を上げて利益を上げようとしたと、マスコミが群がって批判している。しかしマスコミはつい昨日までライブドアの高株価政策をテコとした企業買収を新しい経営手法として支持していた。
(2)小泉首相、竹中大臣、武部幹事長に至っては、前回の衆議院選挙で政敵追い落としのために堀江社長を全面的に利用し、中でも竹中大臣は財界に新風をもたらしたとホリエモンを賞賛して英雄に祭り上げた。前金融庁長官、元慶応大学経済学部教授はプロ中のプロとして金融行政に辣腕を振るい、多くの企業を名指しで破綻に追い込んだのだから、ホリエモンの粉飾を見抜けず、投資家をミスリードした責任はきわめて重い。
(3)小泉首相は今になって「人間とはわからないものですなあ」と他人事のように語っているが、ホリエモンの株価操作と決算粉飾のために日本の株価は10兆円単位で暴落し、暴落は世界の株式市場に波及した。しかもなお小泉首相は投資家が受けた大損害に責任を感じている気配が見えない。
(4)経営の倫理観を持たないホリエモンと、政治の倫理観を持たない政治家と、報道の倫理観を持たないマスコミは50歩100歩、同じ穴のムジナではないか。
(5)マスコミはホリエモンを英雄から詐欺師に転落させたが、今度は返す刀で英雄に祭り上げていた小泉首相に斬りつける気配がある。

(六)相場観。

(1)大隠線を引いたのだから、即座に全面高とは行かないだろう。
(2)だめ押しを入れて底値を確認する動きが先行するだろう。
(3)基本的には上昇課程の短期的な調整だと思う。
(4)ライブドア株の大量売りがいつ、どんな株価で消化されるかに注目したい。
(5)第2,第3のライブドアが出現すれば、波乱が尾を引くおそれがある。
(6)反発をリードするのは個別の材料株だろう。
(7)クラブ9はこれまでのポートフォリオを変えるつもりはない。