2005/12/19

  2005年12月19日(月)
 2006年の相場を読む
  
(その二)逼迫するモノの需給関係。

(一)BRICsの台頭。

(1)一年前には、中国の高度成長も2008年の北京オリンピックまで、と言われていた。
(2)しかし今ではインドが中国を凌ぐ高度成長を果たしている。
(3)更にヨーロッパの超大国ロシアが高度成長期を迎えた。
(4)ロシアはOPEC(石油輸出国機構)に加盟していないが、大増産によってサウジアラビアと並ぶ世界最大の産油国となった。財政再建を果たし、経済成長に注力している。
(5)財政が枯渇していた数年前には備蓄金を売り払ったが、現在は買い戻しに動いている。日本の北方領土4島も、カネを払えば一括返還も可能という雰囲気があったが、財政が豊かな現在では2島以外の返還は話にならないと強硬である。
(6)人口超大国の台頭でモノの需給関係が逼迫し、石油、石油化学、鉄鋼、非鉄、貴金属、穀物、海運など大半の商品市況が次々に史上最高値を更新し、市況関連産業がにぎわっている。
(7)そのような環境から、資源大国ブラジルが台頭した。
(8)人口超大国の高度成長、モノの需給関係の逼迫、資源保有国の財政好転、という資産インフレ進行の構図は、短期的な波乱は避けられないとしても、簡単には終息しないだろう。

(二)世界的な資産インフレ。

(1)1990年に世界中で不動産相場が急落したが、アメリカは2〜3年で不動産不況を克服した。株価は史上最高値を大きく更新し、不動産相場もまた10年連続で史上最高値を更新している。
(2)資産インフレはヨーロッパに飛び火し、株価と不動産の長期高騰をもたらした。
(3)欧米の金融資本は資産インフレを受けて大膨張した。
(4)しかし先進国で唯一日本だけが資産デフレで沈滞していたにもかかわらず、竹中大臣はハードランディング政策を強行したから、資産の大暴落が起こり、企業倒産が続出した。
(5)欧米や中国、韓国への投資で大もうけした外国資本は大挙して暴落した日本の株式市場と不動産市場に殺到した。
(6)国内では一握りの投機的資金だけが外国資本に追随し、暴騰相場で大もうけした。
(7)金融市場と不動産市場で台頭したベンチャーキャピタルが急成長し、新興市場に続々と株式を上場した。

(三)日本の機関投資家。

(1)日本の年金は250兆円の巨大な資金を持ちながら、たった11%しか株を買っていない。
(2)ちなみに欧米の大手年金は一般に資産の50%を株式に投資し、不動産投信や商品投信にも積極的に投資している。運用に成功したファンドマネジャーは10億円単位の年俸を稼ぐが、失敗すれば更迭されるという競争が常識である。
(3)しかし日本の年金は11%を超えた値上がり益を片端から売り払っているから、日本の株式の時価総額が3年間で2倍以上に暴騰してもまともな含み益が蓄積できない。それでも関係者が誰も責任を取らないという奇怪な運用システムを捨てない。
(4)民間でも、例えば日本生命は日本株最大の大株主であったが、現在は保有株式を金融資産の15%まで売却し、更に7%まで売却すると公言している。資産デフレから資産インフレへという千載一遇の好機に逆行するくらいだから、営業面でも外資系生保に圧倒されるのは当然だろう。
(5)ピーク時に上場会社の株式の22%を支配していた銀行は行政指導を受けて3年前には7%までたたき売った。
(6)年金、生保、銀行は株式を売った資金で国債を買った。
(7)来年は売った株式が高騰し、買った国債が暴落するだろう。
(8)日本の機関投資家のあまりにもおそまつな運用実績は欧米の機関投資家と比較すれば歴然としている。
(9)欧米の機関投資家は日本の機関投資家がたたき売った株式と不動産を一手に買い向かったが、決してゼロ金利の国債を買わない。そして現在、彼らは日本国債を売り崩すタイミングを虎視眈々とうかがっている。

(四)機関投資家と個人投資家。

(1)日本の機関投資家は金融庁の金融行政に迎合しているだけで、リスクを取ろうとしないから、自力で巨大資金を運用する能力は皆無である。
(2)彼らの資金運用の視点には国際感覚が完全に欠落している。逼迫するモノの需給関係、商品市場が増幅する巨大なマネー、欧米の機関投資家に集中する巨大なオイルマネーの実態が見えていない。
(3)彼らは横並びの運用に終始しているから、弱気で間違っても責任を感じない。その結果、彼らは相場のド天井を買い、相場のドン底を売る傾向が強い。
(4)しかし来年は内外の運用実績のあまりの格差を見て、機関投資家の運用姿勢に批判が集まる可能性がある。
(5)ただし、日本の機関投資家がたまらなくなって強気に転じれば、個人投資家にとっては利食いのチャンスとなるかもしれない。
(6)今年は売り続けた機関投資家に対して、個人投資家が株式市場の主役に躍り出たが、売買シェア、売買金額ともインターネットによる短期取引が中心であった。
(7)来年には保守的な個人の預貯金が一段と株式市場に向かうだろう。外貨預金から株式投信に人気が移り、個人投資家の投資手法が中期投資に傾くかもしれない。

(五)来年の相場。

(1)基本的には強気であるが、懸念材料がないわけではない。
(2)国債相場が急落すれば、銀行株は下がる。
(3)鉄鋼は中国が電炉を大増設しており、短期的には輸入急増で市況が悪化する可能性がある。その場合は日本の電炉はもちろん、高炉も3社も影響を受けざるを得ない。
(4)過去3年間、日本の株価を終始一貫牽引してきた2大業種が調整期を迎えれば、相場全体に影響が及ぶ。
(5)それゆえ私は12月相場を銘柄の交代期と見て、仕手色の強い展開になるだろうと予測した。1月にはその傾向が一段と鮮明になるだろう。
(6)個別銘柄は次回に述べたい。

(六)富山化学の新型抗生物質T-3811の進捗状況について。

(1)欧米の販売権を取得したシェリング・ブラウ社(米)の進捗状況を直接取材したのでご紹介したい。
(2)FDAへの申請は終わっている。
(3)FDAの申請から認可までは45日〜60日。
(4)アメリカの市場規模はまだわからない。ヨーロッパは推定2.5億ドル(300億円)。
(5)バイエルと共同販売になるかもしれない。
(6)ちなみに抗生物質の全世界の市場規模は50億ドル(5,500億円)。バイエルが昨年まで20億ドル(2,400億円)を販売していたシプロキサンは特許切れで今年は数億ドルに激減した。その他の抗生物質も特許切れで現在では大型の抗生物質がなくなったから、内外の製薬大手がT-3811の販売権取得を狙っている。